前頭前野について知ってたほうがいい!!

神経系リハビリに必要な知識
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みなさん脳のどこが最終的なGoを出しているか知っていますか?

例えば、随意運動であれば4野から身体部位局在に則って巧緻運動が行われます。

姿勢制御であれば、主に6野からの先行的な四肢近位、体幹の安定性を作り出すように筋緊張の調整や、先行的に筋収縮を起こしたりしますよね。

それって、いきなりプログラムが発動するのでしょうか?

そんなことないですよね。

どこがGoを出しているか知ることで、今目の前で起こっている運動についてより深く知れると思いませんか?

今回は、脳の中でGoサインを出す部位である「前頭前野」について簡単に説明していきたいと思います!!

もちろん、この知識だけで、脳内ネットワーク処理の結果である運動や姿勢について完全に理解はできません。
しかし、前頭前野の知識はきっとあなたの臨床での考え方を深めてくれると思いますよ!

前頭前野ってどこ?

ブロードマンのエリアでは、24、25、32、9、10、11、46、47野の領域です!

ブロードマンのエリアって何?って人はこちら

結構広範囲ですよね。イメージ的には、脳の大きな溝である中心溝の前にある中心前回、そしてその前にある高次運動野以外の前頭葉の領域のほとんどが前頭連合野と考えられています。

そして前頭前野は、

  1. 内側前頭前野
  2. 前頭眼窩野
  3. 背外側前頭前野

3領域に分かれると考えられているんですね。

しかし解剖学上明確にこの3領域を区分することは難しいようです。

そのため、

  • この辺りは内側前頭前野か・・・
  • 内側前頭前野の働きってこれだから、今出てる症状とマッチするな・・・

のように考えていただくことがベターかな?と考えています。

ひとこと言えるのは、脳画像自体は補助ツールだと考えたほうが良いと思います。

そのため脳画像でここが損傷しているから、こう!とはならないようにするためにも、
脳内の部位機能、ネットワークシステムを理解し、評価を理解することが求められるというわけです。

こんな課題では、「前頭前野の活性化が認められた」という報告も多々あります。

前頭前野の機能が落ちているから、この課題やろう!!ではなく前頭前野の機能が低下した理由は

  • 梗塞や出血による損傷?
  • Diaschisis、ペナンプラなど一時的なもの?
  • それってどれくらいの期間で回復するもの?回復しないもの?

これを考えることがとっても重要なんですね。

ネットワーク構造を持つ領域の問題によってだったり、覚醒が悪いのに前頭前野への負荷をかけても仕方ないですよね。

しっかりと目的を明確にして課題の設定はするべきですよねー!

前頭前野の種類について

ここからは、前頭前野を

  • 内側前頭前野
  • 前頭眼窩野
  • 外側前頭前野

を分けて、それぞれの役割について説明していきますね。

内側前頭前野

まずは内側前頭前野からです。

こちらのスライドが総まとめになります。

内側前頭前野は、実は前頭葉と前部帯状回が合わさった領域のことを表現するようです。

よく帯状回と聞くと、感情!とか記憶!とか辺縁系の一部としての認識が強いかもしれませんね。

前部帯状回を辺縁系として捉える場合には、島回とセットで考えるようにしたほうが良いようです。

前頭葉と前部帯状回のセットとなると前頭前野としての働きになる、と考えても良さそうです。

失語や半側空間無視と同じように辺縁系とそれが関わる情動も、運動と感覚系に分けてみていきましょう。

例えば「泣きたい」と「悲しい」を分けて考えた時、

泣きたいは「悲しい」が起点となり「泣きたい」などの動機や動因を引き起こしていますよね。

「泣きたい」という「悲しい」が引き起こした体験がFeeling、主観的感情体験として感覚を引き起こしているんです。

情動には必ず自律神経反応(涙を流す、興奮して息が荒くなるなど)が伴うが、自律神経を運動させる中枢である前部帯状回がそのまま自律神経以外の運動、すなわち「行動を促す衝動」も発生させるという仕組みです。

前部帯状回が発する情動は、あくまで、喉が渇いた、ではなく水が飲みたい、息が苦しいではなく空気を吸いたいとなるわけです。

例えば首を絞められたら、苦しい!と思うよりもこの手や紐を振り解きたい!となるはずですよね。

命を守るための行動Homeostatic behaviorというホメオタシスを保つための行動の衝動を生じさせる中枢としての働きがまず、前部帯状回を含めた内側前頭前野によるものというわけなんですねー。

内側前頭前野自体の働きとしては、

  1. 意欲と発動性と注意(ここは前部帯状回との繋がりによる影響が強そうですね)
  2. 外的情報の統制(脳に入る一部の情報の制御を行う)
  3. 内的情報の統制(直感的な意思決定、熱いとか、寒い!とか身体への内的情報を判断・決定を行う)
  4. (遂行機能)(ここは前頭前野全体としての働きとなるため、最終的なGo!として行動に出せるようにしているのは内側前頭前野と考えられています)

です。

二番目の外的情報の統制について簡単に説明します。

このカラーストループ課題が、外的情報の統制ができていない場合、Questionに答えることができません。

何色?と聞かれると、赤と答えてしまうケースだったりするわけですね。

赤の文字ですが、色は青です。この2つ以上ある情報のうち、一つを統制して課題に対してコントロールを行うのが内側前頭前野の役割というわけです。

よく脳トレに出てきますよね!実際に言葉として発する、回答を書くためにペンを走らせる、これら二つとも行動に直結していますよね。この前に、内側前頭前野が情報を統制してくれて私たちはこう言った課題を達成できるわけです。

内側前頭前野の損傷を疑う方に対しては、ある程度の情報量の調整は必要なんですよね!
具体的には、外的な情報だけでなく、内的情報自体も統制できないため手すりとかがあると、明らかに無理な距離でも掴みに行こうとする方いません?
前頭前野ループの損傷でも、よく見かける方ですが、基底核によるブレーキ機能が低下、内側前頭前野による内的・外的情報の統制ができていないなんてことが考えられるのかもしれないですね!

環境の設定や明確な課題設定が必要です!

前頭眼窩野

次は、前頭眼窩野についてです。

前頭眼窩野って知ってますか?(バカにしてるわけではありません

自分は恥ずかしながら3年目まで聴いたこともないし知りもしませんでした笑

前頭前野って聞くと高次脳機能障害、ムズカシソウなイメージがありまして、積極的に勉強する気が起きませんでした…。

あるときくも膜下出血の方が前日まで元気だったのにSpasmを起こして前交通動脈の脳梗塞が起こってしまい、結果的に前頭葉底面に高吸収域が認められました…。

そしたら人格が180度と言っても良いくらいに変わってしまったんですね…。ご家族さんとかなり悩みました。なんでこうなったんだろう・・・どうしたらいいんだろう・・・と。

その時に知ったのがこの前頭眼窩野でした。

この前頭眼窩野という場所の働きは、

  1. 脳の他所を抑制する
  2. 逆転消去学習

この2つが代表的なものです。

もしもこの前頭眼窩野が損傷したら、
「Going my way behavior」本能の赴くままに行動するようになる

と言われて、なぜ?と思ったら、脳の他の領域が脱抑制状態になるからだと。

前頭葉は最終的なGoを出す部分でもあり、他の脳の領域からの情報がたくさん集約する部分でもあります。

この前頭葉の働きに問題が出てしまったら・・・、入ってきた情報に対して処理をこなえずGoを出してしまうため、私の担当患者さんはそこらじゅうで排尿してしまったり、急に怒り出したり、箸を一度使うとカレーライスも箸で食べようとしてスプーンには目が向きませんでした。(逆転消去学習)

この前頭眼窩野の働きを知り、なるほど・・・。ではどうしたら良いのだろうか・・・と悩みました。

ある時、お孫さんと一緒に信号を渡らなければいけないような外出を行いました。
すると、前頭野以外の部分の働きからか、今までであれば車がきていてもお構いなしだった方が、お孫さんを統制しながら青信号に変わるまで待って渡っていたり、自分が道側を歩いたりするんですね…。

ご家族さんがこれなら、家に帰っていろいろやってみたいということで、外出訓練をして家では料理もできたようです。不思議ですよね。Yakovlev回路の一部である側頭葉を抑制する前頭眼窩野がはたらかなくても、他の前頭前野や大脳基底核など予測にすぎませんが他のところがバックアップ機能を果たすというのを、この時改めて知った出来事でした。

背外側前頭前野

最後に背外側前頭前野についてです。

ここはよくいわれるワーキングメモリーに関与する部分ですね。

ワーキングメモリーとは言い換えると、今現在注意が向けられている記憶なんです。

遂行機能を考えると、注意のコントロールを内側前頭前野、認知能力の管理を背外側前頭前野が行うことで行われる最高次機能だといえます。

認知能力という部分で考えていくと、注意の焦点となっている記憶が聴覚情報であれば音韻ループ、視覚情報であれば視空間スケッチパッチにあたる。別の言い方をすると、今、作動しているWorking記憶だから作動記憶と捉えても良いかもしれませんんえ。

ワーキングメモリーを十分使えて初めて複雑な思考をする準備が整うと言われています。

複雑な思考を必要とする遂行機能は単独で評価することはできないんです。

遂行機能課題をかけると、注意のコントロールやワーキングメモリーの場合と同様に両側の背外側前頭前野と下頭頂小葉のネットワークが賦活されてくるが、どこまでいわゆる遂行機能だけに関連した脳活動かを区別するのは難しいです。

注意やワーキングメモリーに問題がないのに計画的な行動ができないケースであれば、遂行機能障害と言えるがそんな症例はまずあり得ない。まずやるべきことは、計画的な行動の練習ではなく、注意コントロールが最優先でその次にワーキングメモリーといった順番だと思うんですねー。

特に注意コントロールに関してはマインドフルネスや太極拳も良いとも思いますが、なかなか難しいところですね…。

また、

病的に疲れやすい方もいるかと思うが、その場合は注意資源の枯渇が疑わしいですね、注意資源を増やすやめには有酸素運動をして体力の底上げをPTが行なっていくことも注意への関わりとしては重要です。

今回は前頭前野について事例も交えながら説明していきました。

もちろんもっと詳しいことはたくさんありますが、ここでは概要として大きな役割を理解するきっかけになれば嬉しいです!

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