さてこちらの問題。
臨床場面でよく出会うことがあります。
この時に所見として
脳画像から例えば中大脳動脈の還流域の梗塞なら
・脳画像で皮質網様体路の通過部分に損傷があるな
・脳画像で皮質脊髄路の通過部分に損傷があるな
などの情報が得られるかもしれません。
ここから
・非麻痺側の姿勢制御が難しいかも!?
・麻痺側の支持性が麻痺で低下しているかも!?
こういった推測ができるかもしれません。
実際の動作を観察すると非麻痺側なのにもかかわらず非麻痺側へのリーチができない…。
これってなんで?となったときに、
皮質網様体脊髄路が損傷しているから、非麻痺側の四肢近位部の姿勢制御が破綻しているんだ!!
となります。間違いではありませんが、実はこれがかなり”ヤバい”んです(私自身これでドハマりしました)
すると考えることが、
「皮質網様体路を活性化して、四肢近位部ー体幹の姿勢制御能力を高めるための介入方法とはなんぞ?」
となり、
「皮質網様体路を活性化させるには○○!!」みたい方法を探す旅に出ることになってしまうわけなんですね…。
さて、ここでの問題は何なのでしょう?
それは、
・介入する対象が「評価できないもの」であり、介入対象が構成する要素の一つに過ぎないから
という点かと思います。
みなさん、動作分析とか歩行分析って学生の実習の時に嫌になる程やらされ…、経験してきたのではないでしょうか!?
(なぜこんなことさせられるんだろう…っていつも思ってました。)
この意味がわかっていないから、臨床で嫌になる程苦労した(今でもですが)んですね。
歩行動作や基本動作って割とシーンごとに分析すると思うんです。
この時に正常動作を比較して逸脱したポイントであったり、目の前の対象者の方の特徴を掴むと思うんですね。
ひっっっじょうに大事なのが、「正常を知っている」ということです。
いや今更wwww
当たり前だし、実習でやったし調べたから知ってるわwwww
これはお経のように起立の1相では骨盤が前傾して、COMが前方に移動して…という話ではありません!
「動作を達成するために、その動きが必要な理由は何か?またそれを引き起こす(関節運動や生体力学)ために必要な力(神経活動から筋活動まで、そして力学的要因)は何なのか?」
を理解すること、が非常に重要なんですね。
この時に最初の問題である
皮質網様体路は同側性に下行して、四肢・体幹の近位部をコントロールします。
だから、非麻痺側はコントロールするための姿勢制御が働かないから、リーチできない!
つまり、これは神経系の問題だから姿勢制御を高めるためにKAFOをつけて、立位・歩行訓練を行えば、皮質網様体路が活性化してリーチができるようになる!
と最もらしい理論が出来上がるんですねー。
結局ここで問題なのが、皮質網様体路が損傷した結果、四肢近位部から体幹に起こるリーチの時のどんな要素が失われた結果、リーチが困難になっているのか?を言及していない点にあります。
もちろん脳血管障害によってリーチができなくなっているので、もっぱら全部が間違いではないと思いますが、
脳卒中後には
こういった問題だったり…
こういった問題も同時に合わさっていることで、
筋発揮力の問題だったり、痙縮だったり、代償動作だったりと様々な要因が合わさって一つの目に見える問題を引き起こしているわけなんです。
もちろん歩行練習を繰り返していたら、リーチができるようになる可能性もあります。
でもそれって、本当に再現性はあるのでしょうか?
また、何を根拠にどれくらい、何時間くらいそれを対象者の方に行ってもらうのでしょうか?
セラピストが考えるのをやめた結果であったり、得意分野、守備範囲で対象者の方の未来が決まるわけです。
いつもキンタロー先生が言っていますが、
自分がやりたいリハビリをやるんじゃないよ!!
ということです。
さて話はだいぶそれましたが、
今回のテーマである、側方リーチにおける骨盤周囲の活動について簡単に解説していきます!
側方リーチを行う際に、
イベントとして
・非麻痺側の上肢が挙上した結果、重さ分非麻痺側にCOMが偏位する力がかかる
これに対して私たちは、「立ち直り」を行います。この立ち直りのメインが今回のテーマの骨盤周囲になるわけです。
ここでは右への側方移動として考えていきますが、まず右側方に体幹が側屈します。そして骨盤は右に重力と上部体幹の質量で下制することが考えられます(もちろん多裂筋や大腰筋といった深層筋が活動することで骨盤が右後方に回旋しないといった前提でです)。
これに対して立ち直りを起こすために筋活動が必要になります。
非麻痺側においては内腹斜筋による骨盤の水平維持とL3レベルでの側屈による立ち直り
麻痺側においては中殿筋と大殿筋上部線維による反対側骨盤下制の力を操作する活動
が必要になります。
おそらくですが、麻痺側の骨盤下制の相殺による骨盤の水平維持が非麻痺側の坐骨を指示としたL3レベルの体幹側屈を起こすための条件となってくるかと思います。
しかしながら脳卒中後には麻痺側の股関節は筋緊張低下や同一姿勢の長時間化による筋短縮等が起ることや、下肢の支持性が低下していたり上肢の重さによる体幹筋の短縮なども合併しているかもしれません。
それにより麻痺側のよくいう「姿勢制御」としての骨盤下制を相殺するという働きは難しくなることや、非麻痺側は神経科学的な問題から体幹機能に問題を抱えてい可能性があり非麻痺側へのリーチが難しくなっている、といった可能性が考えられます。
(あくまでも一般的に考えられる状況からの推測ですので全員に同一の問題が起こっているわけではありませんので悪しからず)
では、この時にリーチ動作を行えることでADLに問題が出ているなら、一刻も早く獲得したいですよね。
そのためにどんな練習や工夫をしたら良いのでしょうか?
それはどのタイミングで正常から逸脱し、逸脱した状態に対応できていない部分を見つけることや構成要素のどの部分に問題が起こっているのか、を分析することが重要です。
そして筋活動やアライメントの問題であれば、それを徒手や電気、振動などを使ってサポートしたら少しでも改善するのか?を見ていくことが重要かと思います。
一アイデアとして、骨盤が後方回旋してしまったり麻痺側の筋活動が起こってこないケースを経験します。
その時には、高い座位をセッティングとして用いる、かつポールなどを用いてリーチをOKCの運動からCKCの運動に変化させて練習することがあります。
これは上の画像の通りの目的で行います。
加えて神経学的な側面から見ても、抗重力要素が強い、かつ足底をはじめとする下肢への荷重感覚は、同側性の網様体脊髄路であったり前庭脊髄路の活動を高める可能性があったりします。(立位では前庭脊髄路の活動性が向上することが明らかとなっている。)
こういった時に神経系の知識は難易度を調整するのに非常に活躍します。
また、徒手的な介入として筋活動をサポートするような刺激を入力することで運動難易度が下がるといったことを経験したりします。
ただ、前提としてやはり「正常動作の構成要素の目的を知っておく」ことが皆さんの臨床を支えてくれることは間違いありません!
これからも一緒に頑張って学びを進め、知識を現場で適切に活かす勉強をしましょう!
3月「実際の運動場面から考える臨床推論」
ぜひこちらを見ていない方は今回の内容を説明していますのでご活用ください!
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