さて今回は、皆さん非常に関心のある脳卒中の歩行についてです!
結局のところ、どっちの足を出せば脳卒中で運動麻痺や感覚障害を呈した方が歩きやすいんだろう?
ということを気になったことありませんか?
もちろん歩行周期を分析することも、CPGが〜という知識も非常に重要なことですが、
まず歩き初めの時にどっちからだしたらその後の歩行が安定するのか?そもそも自動歩行に移行する前に重要だったりする訳です。
今回はここをしっかりと押さえておきましょう!
今回の歩き始めにおけるバイオメカニクスの視点を持っておくことで、目の前の方がどちらから歩き出すのが最適なのか?を選択できるようになります。
神経系の要素を知っておくことも重要です!
こちらの動画をご覧ください!
まずは歩き始めにおける一般的なCOPの軌跡についてみていきましょう!
歩行開始時には遊脚側へ一度COPが移動する必要があります。
ざっくり考えると、
一度遊脚側を強く踏み込むことで、立脚側に大きくCOPを移動させることができると考えられます。また後方を踏み込むことで、前方への推進力を作り出すと考えられますよね。
次に歩き始めのCOPを変位させるための運動学的要素は一体なんなのか?
それを2つ解説していきます!
歩き始めにCOPを変位するための運動学的要素1つ目です。
先行的に立脚側の中殿筋を抑制させ、遊脚側の中臀筋を促通させ側方へCOPを偏移させます。
大沼 亮他.脳卒中者におけるステップ動作開始時の運動学的解析.理学療法科学 32(6):809–815,2017.
これが、COPを遊脚側へ一度偏移させるための条件となってくるようですね。
これをAPA’sと表現するわけなんですが、主に皮質網様体脊髄路と呼ばれる神経が行なっていると考えれます。
では、これを神経学的な要素からも考えてみましょう。
どうして麻痺側から脳卒中の方は出してしまうのでしょう?
1つは非麻痺側へCOPを偏移させる方が得意だから、かもしれません。
なぜなら、興奮性の皮質網様体脊髄路は同側性支配が主であると考えられており運動麻痺を呈する場合、非麻痺側へ下行するためAPA’sが行えない可能性があります。
すなわち、非麻痺側の中臀筋の筋緊張を一時的に促通するための下行性の出力が乏しいかもしれません。
一方、脳卒中後には脳幹を介した筋活動を引き起こす経路(橋網様体脊髄路や前庭脊髄路)が過活動を起こすため、先行的な筋緊張抑制も難しくなります。
すなわち麻痺側の中殿筋を抑制することも難しくなるということですね。
杖を使うことで、なんとか非麻痺側へ無理やり重心を移動させ振り出しているのかもしれません。
実際にそうなのか?を
次に解説していきたいと思います。
っとその前に
実際に先行的な筋活動を起こすAPA’sは皮質網様体脊髄路が行なっているのではないかという可能性を考察した報告がありましたので、
ここで共有させていただきます。
脳卒中後の歩き始めのCOPの偏移は健常者と比較して半分程度しか示さなかったいう報告です。
前額面上におけるCOP変位が半分になったということは、先ほどのAPA’sによる先行的な中臀筋の抑制障害であったり、中臀筋の促通障害を裏付けるものになるかもしれません。
または、感覚障害があると麻痺側の足底感覚の知覚が乏しく、十分に荷重をかけていくことは難しくなるかもしれませんし、
脳卒中後の弱化といった現象を呈し筋緊張の低下が起こっていれば荷重をかけていくに値しない下肢となってしまうかもしれません。
原因は一つではありませんが(報告している研究においても可動域であったり感覚障害の程度に関してはバラツキあり)COPの変位はほとんどの方で半分になるということは覚えておきたいですね!
そしてもう一つ、矢状面上においてもCOP変位が半分になります。
まずCOPを後方へ変位させるために正常動作で行うことは、
- 両側ヒラメ筋の活動抑制
- 前脛骨筋の活動促進
とされています。
しかしながら脳卒中後には、
下腿三頭筋は抗重力位で筋緊張が亢進するケースが多いかと思います。
おそらくこれは、前庭脊髄路系の過活動によるものではないかと考えられます。
それに対して、抑制性網様体脊髄路による筋緊張の抑制、つまりAPA’sが起こらないことによるものではないかと、引用文献では考察されています。
それでは、結局どちらから歩き出した方がいいの?という点についてです。
大きく2つに分ける必要があります。
非麻痺側で出す場合には…
前方への不安定性が生じるため、下腿三頭筋を含む後面筋群にある程度の筋活動を生じさせることができる場合には非麻痺側からを推奨します。
麻痺側から出す場合には…
十分な重心移動が起こせず、安定性限界が狭小化しているバランス能力低下者には麻痺側からを推奨します。
しかし、あくまでADL上の話です。
バランス能力が低い方に対しても、練習として非麻痺側から出すといった介入を行うことで得られるメリットもあります。
それが内反尖足に対する介入をする場合であったり、麻痺側の前脛骨筋の筋活動を促したい時などです。
能力や目的に応じて、麻痺側から出すか非麻痺側から出すかを考えていきたいところですね!
しかし、最も重要なのはやはり正常動作を知っておくこということです。
そうでなければ闇雲に対象者に非麻痺側から足を出してもらうことになり、転倒につながったり歩きにくさ、また必要な筋活動や予測的な制御を行えていないということにそもそも気づけないからです。
歩行周期に目が行きやすいですが、やはり歩き始め、とっても大事です。
しっかりと押さえておきましょう!
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