小脳と運動についてわかりやすく説明します
こんにちは。ぱらゴリです。
皆さんは、小脳と運動機能についてどれくらいご存知でしょうか?
- 小脳のなんらかの障害で出現する
- 企図振戦などで動こうとすると震えてしまう
- よくわからない
など結構ぼんやりしている人多いのではないでしょうか?
そこで今回は、
運動失調ってなに?
運動失調については未だ明確な定義はないと思われます。
筋力低下や、深部感覚の以上が認められない状態で身体の随意運動や歩行がうまくいかない運動協調障害(廣瀬,2017)
目的の運動に関係する様々な動きの協調性が悪くなるため、それを円滑にできなくなる病態(日本神経学会HP)
運動麻痺がないにもかかわらず、筋が協調的に働かないために円滑に姿勢保持や運動・動作が遂行できない状態をいう(千住,2012)
などがいわれています。
大事なポイントは、
- 麻痺や感覚障害は認めない
- 協調的な運動に障害が起こる
となります。
つまり、運動麻痺や感覚障害によって起こる、ぎこちない運動は運動失調とは分けて考える必要がありそうです。

しかし、損傷部位によっては運動麻痺を呈している場合にも小脳性の運動障害の要素も考えられるため注意が必要ですね。
運動失調のメカニズムについて
皆さんなんで運動失調が起こるのかについて、答えることができますか?
結構ここってぼんやりしている部分かな、と思いますので一度復習を兼ねて一緒に学んでいきましょう。
結論ですが、
小脳は大脳をコントロールすることで運動を制御している部位になります。
その小脳が傷害されることで…
- フィードフォワードに障害が出現している
ことに加えて
- フィードバックにも障害が出現している
ことです。
うんうん、なるほどそりゃ失調になるわ!とわかる方は良いのですが、自分はあまり頭がよくないため、ん?ん?となりました笑
結構複雑なんですよね、
- 運動プログラム
- 運動の協調性
- 姿勢制御
- 運動学習
などなど、もう訳のわからない言葉がいっぱい出てくるんです。
全部をいきなり理解しようとするとパニックになってしまうので…
簡単に運動失調が起こるメカニズムについて説明していきますね。
簡単:運動失調が起こる原因
鼻指鼻試験といったようなリーチ動作でイメージするのが分かりやすいかもしれません。
- 予測的な運動プログラムの生成が障害(フィードフォワードの障害)
- 運動の誤差をフィードバックで制御する
- 小脳の障害によってフィードバックの制御も困難
- 運動を正しく修正できない結果、修正しようとした運動にも誤差が出現しつつ、前回の誤差が残存する
- そして2に戻り、3へ繰り返される・・・
といったループになっているわけですね。
フィードフォワードとは、目標とする状態をあらかじめ予測して、これくらいの筋肉を働かせられば達成できるだろ、と指令を出すことです。
フィードフォワードで制御ができない結果、間違った運動が行われます。
しかし、生じた誤差を修正するも、その修正自体が正しくない状態であり、「振戦(揺れ)」が出現し運動失調として表現されるわけです。
大脳小脳連関(ループ)
これは小脳の働きによるものです。
小脳は、ほとんど全ての感覚系から求心性の情報を受け、運動プログラム生成と実行に関係する脳の他の部位から情報を連絡しているといわれています。
実際に手を伸ばすリーチ運動であれば小脳は、どのくらいの距離、方向、速度、力の強さなどを予測し、具体的なプログラムを作成し、一時運動野をはじめ運動関連領野にその情報を伝えるという重要な役割を担っています。
大脳小脳連関というループ構造を持っていて、
大脳からの出力は、感覚野、高次運動野、連合野を含む広範囲の領域から、内包前脚、中脳大脳脚にある前頭橋路を通り、橋核および下オリーブ核を経由して、小脳の広範囲に投射しています。
また、小脳からの出力は視床のVL核を介して運動関連領野、前頭連合野などに投射しているといわれています。
小脳は、運動の結果に基づいて運動を修正するのに加えて、同時に小脳皮質でプログラムを変更して、さらに運動の最終結果に到達する前(実際に脊髄に運動指令が到達する前)に運動の指令とは反する場合には、補正を行うという作業を同時に実施してい流ようです。
運動プログラムが変更されると、小脳皮質に保存され、時間経過とともに小脳核に保存されると言われています。その結果、さらに長期になると運動関連領野などにもプログラムが蓄えられるようになり頻繁に小脳との連絡を取る必要がなくなり、運動の熟練度が向上した状態になる、というわけなんですね。
この時に大事なのが、誤差を検出するということです。
フィードフォワードによって行われる運動プログラムと、
実際の運動によって得られるであろう感覚のフィードバックと実際に得られた感覚のフィードバックのすり合わせが内部モデルとして働いていくんです。
では内部モデルってなんのでしょうか?
内部モデルという考え方
小脳はフィードバックによって運動をコントロールしている、というのは聞いたことがあるでしょうか。
そこで大事なのが、
内部モデルについてです。
簡単にいうと、小脳の中に蓄えられている制御する運動や対象の性質をシミュレーションする能力のことです。
そして内部モデルには、
- 順モデル
- 逆モデル
の2つがあるといわれています。
順番に説明していきます。
順モデルと逆モデルとは
順モデルとは、
ある運動の指令がどのような動作(感覚の情報)をもたらすか
というものになります。
意味が分かりにくいのですが、
「こういった動作がしたい(感覚情報が欲しい)なら、こういう指令を出した方が良いかも?」
というものになります。
そして逆モデルとは、
「ある動作を行おうとするときに、どんな運動指令を出したら良いのか?」
というものです。
こういう指令を出したらこういう情報が返ってくるかもしれないよ、
と小脳にあるシミュレーターが予測を立てることで、出した指令に対して運動はどうだったの?という比較が可能となり、誤差を使って修正が学習が進んでいくわけです。
小脳が障害されてしまうと、運動の予測が立たないだけではなく、実際の運動とのすり合わせがうまく行われず運動学習が進んでいかなくなってしまうというわけですね。
実際には、逆モデルとして例えば、「あそこにあるコップが取りたい」となると、
目標とする運動の結果を予測して入力すると、「コップまで手を伸ばす」と考えただけで、その運動を実現するような「手を伸ばして、コップまで手が届いたら手指を屈曲させる」という指令が作られ大きくの筋に対して適切な指令が生成され、思い通りの軌跡で目標まで到達することができるのです。
そして、
順モデルでたくさん仮定して、連続的な予測を立てることで色々な状況に対応させるような構造を作り出すことで、様々なイレギュラーにも対応ができるようになる可能性があり、これを最適フィードバック制御理論といいます。
どちらのおいても、必ずフィードフォワード化した円滑な動作の学習であるということを忘れないようにしておきたいです
一つ一つの精確な動作を繰り返し行い学習していくことで、いくつもの円滑化された動作を習得することが求められます。
結論:運動失調って結局なんで起こるのか?
いろんな要因はあります。フィードバックとフィードフォワードの観点から考えていくと、
運動を予測して行われるフィードフォワードと、運動前や最中に適宜行われるフィードバックがうまく働かなければ、運動失調が出現すると考えられます。
そしてその運動失調は、
距離と方向、スピード、パワーの要素が小脳で目標とする動作に最適な形で運動プログラムとして生成され、運動が起こります。
しかし、小脳障害による運動の予測ができないことに加えて、それを修正する働きも小脳が担っているため、修正も間違えてしまう、というよりそもそも何が正解なのかがよくわからず、視覚や体性感覚が入力されていて「揺れないで!」と思っていても、動作に参加する筋肉たちへ、うまく運動指令が出ていないので修正が効かない、といった状態になってしまうんですね。
ましてやそれが、座って上肢だけの動きで出ている方が、立位で下肢ー体幹ー肩甲帯ー上肢を空間でコントロールしながら動作を行うなんて、とてもとても無理な話なわけです。
課題難易度を調整することが求められてきますね。
例えば、脇を閉める、手を机に乗せて机にそって手を伸ばしていく、など運動の自由度を制限するような介入も有効かもしれませんね。
しかし最終的には、フィードフォワードの部分を学習していく必要があるため、できるだけ最適な運動を本人が予測して、実際の感覚にフィードバックを与え、必要に応じて視覚情報や触覚情報などを用いて学習を進めていくことが大事なのではないでしょうか。
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