中枢性感作のメカニズムとセラピストの皆さんが気をつけること

痛みについて
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皆さん、こんにちは。きんたろーです。

さて、今回は慢性疼痛の病態の一つでもある『中枢性感作』について解説していきます。

中枢性感作というあまり聞き慣れない言葉感だけでいうと、「慢性疼痛で生じるなんか珍しい病態の一つなんだろ〜な」と思っちゃう人も一定数いるかもしれないんですが結論…

全くそんなことありません

実は、中枢性感作自体は皆さんの臨床においてもすごく重要な現象の一つであり、かつ必ず抑えておかなければ患者様に対して害を及ぼす可能性もあるんです。

なので、初めてこの言葉を聞く方も必ず最後までご覧頂いて明日の臨床に活かして頂けると嬉しいです。

中枢性感作のメカニズムとセラピストの皆さんが気をつけること

中枢性感作とは

Woolfの定義における、中枢性感作とは…

中枢神経系において痛覚過敏を誘発する神経信号の拡大

と定義されています。

つまり、ざっくりいうと中枢性神経系が過興奮した結果痛みの閾値が低下した状態ということが出来ます。

中枢性感作の病態

中枢性感作の病態は大きく2つあります。

『ワインドアップ現象』と『長期増強』の2つですね。

ワインドアップ現象とは

ワインドアップ現象とは、末梢神経へ侵害刺激が繰り返し加わることによって脊髄後角にある広作動域(WDR)ニューロンの放電時間が延長することで結果痛みが増強してしまう現象です。

加えて、ワイドアップ現象のもう一つの特徴は最初こそ侵害刺激で反応していたものが、最終的には非侵害刺激でもそれを侵害刺激として脳に情報を送ってしまうことです。

長期増強とは

長期増強とは、高頻度に侵害刺激が繰り返しニューロンに加わることによって伝達効率が増加し、刺激がなくなったあともシナプスの興奮が持続してしまう状態です。

中枢性感作の病態は大きくこの2つの神経学的問題が生じ、その結果として「痛みを感じやすくなる」もしくは「痛み刺激でないにも関わらず痛みと感じてしまう」という症状が生じてしまいます。

こういう症状を呈する患者さん、見たことありませんか?

「じゃあ、中枢性感作ってどんな評価を行えばいいんですか?」ということなんですが、これは大きく2種類あります。

中枢性感作の評価方法

中枢性感作の評価は『Quantitative Sensory Testing:QST』というのがあって、これが2種類あるわけです。

一つが『スタティックQST』、もう一つが『ダイナミックQST』です。

スタティックQST

スタティックQSTは主に圧痛閾値を用いて評価するんですが、要はこの圧痛閾値が低下しているということは「痛みを感じやすくなっている」ということですね。

ダイナミックQST

ダイナミックQSTの評価には、時間的荷重(Temporal summation of pain:TS)条件刺激性疼痛調節(Conditioned pain modulation:CPM)という2種類があるんですが、結論この2つは臨床だと実施はそこそこ困難です。(圧痛閾値を測るという点ではスタティックQSTも機器がなきゃそもそもできない)

理由は、特にTSなんかは繰り返し刺激を入れ続けないといけないので、患者様への負荷がそこそこ強いということが挙げられます。

CPMに関しては、適切な方法を用いるとすると圧痛閾値を計測しないといけないので難所はあります。

ただし。簡易的にスクリーニングとしてやれることならあります。

それは、患部以外に侵害刺激を与えその時に患部の圧痛が消えるもしくは減弱するかどうかを評価すれば良いのです。

これ、名称としてはDNICというもので日本語では広汎性疼痛抑制機構といいます。

CPMも作用機序としてはDNICと同じなので、CPMを実行するのは難しいですがDNICでスクリーニングをかけると言うことは可能かと思います。

臨床における中枢性感作のリスク

それでは最後に中枢性感作の発症メカニズムを考慮した上でのリスクについてお伝えしておきたいと思います。

ワインドアップ現象長期増強

両者に共通する点としては『繰り返される(痛み)刺激』があります。

これらの知見から言えること。

それは、リハビリテーションの中や日常生活の中で患者様自身の『痛み』が長期間・今頻度に繰り返し引き起こされると、最初は末梢組織のみに存在した痛みの原因が中枢性感作によって、脳-脊髄を含む中枢神経系に拡がるということです。

要するに、痛み刺激が繰り返し入ってくることによって「痛みを感じやすくなってしまう」わけです。

そのように考えると臨床の中で…

セラピスト
セラピスト

・硬いですねえ…ちょっと痛いですよー。(筋肉をグリグリグリ)
・関節が固くならないように動かしますね。(グイッ)

この時、対象者は悲痛の顔を浮かべながら痛みを我慢していると。

痛みを含んだ臨床が全て悪いとはいませんが、『痛み刺激が高頻度に生じることは中枢性感作を生じさせる可能性がある』という事実があることは間違いないので、このことを頭の片隅において臨床を行っていく必要があるかもしれません。

もしかしたら理学療法士や作業療法士、もしくは柔道整復師や鍼灸師、整体師といったセラピスト側が知らず知らずのうちに、「痛みを感じやすい身体」に対象者の方を追いやっている可能性もゼロではないかと思います。

中枢性感作の代表的な疾患は線維筋痛症であるが、腰痛患者や変形性関節症においても中枢性感作の影響が報告されている。中枢性感作の影響が強いと、痛み以外にも様々な刺激に過敏性を示し、治療側が中枢性感作の概念を知らなければ「不定愁訴」として扱われてしまう危険性がある。

中枢性感作の評価.西上智彦,2019

覚えておいて欲しいことは、『中枢性感作』という知識を知らないだけで患者様を不幸にすることがあるということです。

だから、この仕事をする以上僕らは勉強し続けなきゃダメなんです。

これを機に、ぜひこういった病態があることを頭に入れておいて頂けると嬉しいです。

それでは、明日もいい仕事しましょう!

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