- 「言ったのに動かない」を、理解力の一言で終わらせていませんか?
- 結論!言語入力・反応手段・動作実行を分けて見ます
- なぜそう見えるのか:一つの指示にも複数の処理が必要です
- よくある勘違い1:話せないことと、分からないことは同じではありません
- よくある勘違い2:大きな声と繰り返しだけでは情報は整理されません
- よくある勘違い3:「はい」が返れば理解できたとは限りません
- 評価ではここを分ける:六つの方向から仮説を立てます
- 臨床で使うならこう考える:伝達条件そのものを評価変数にします
- リハビリで設計すること:話す練習と動作練習を切り離しすぎません
- 家族・スタッフとの関わり:会話相手の技術も環境の一部です
- 自宅や生活で気をつけること:急な変化と普段の障害を分けます
- 変化を見るアウトカム:正答数だけで終わらせません
- 論文からどこまで言えるか:量だけでなく、時期とアウトカムを見ます
- ぱらゴリ的な見立て:反応の良し悪しではなく、伝わった条件を残します
- 最後にもう一度、要点を整理します
- 参考文献
「言ったのに動かない」を、理解力の一言で終わらせていませんか?
「右手で手すりを持ってください」と伝えても動き始めない。「立ちますか」と聞くとうなずくのに、立ち上がろうとしない。痛みを尋ねても、いつも「はい」と答える。脳卒中後のリハビリでは、このような場面があります。
ここで「指示が通らないから理解力が低い」と決めると、評価を誤る可能性があります。聞こえにくかったのか、言葉の意味を処理しにくかったのか、注意を向けられなかったのか、動作を組み立てにくかったのか、麻痺や感覚障害で実行できなかったのかは、外から見える反応だけでは区別できません。
失語症は、脳損傷後に生じる後天性の言語障害です。話すことだけでなく、聞いて理解する、読む、書くといった複数の言語様式に影響し得ます。ただし、失語症があることと、考える力が一律に失われていることは同じではありません。
PT・OTが最初に行うことは、反応の有無を採点することではなく、どの伝え方なら本人の理解と選択が表れやすいかを探すことです。
この記事では、脳卒中後の失語症を、麻痺、失行、構音障害、注意障害、聴覚の問題などと分けながら、運動・ADL練習へつなげる評価と課題設計を整理します。
結論!言語入力・反応手段・動作実行を分けて見ます
結論は明確です。一回の口頭指示に反応しなかったことだけでは、言葉を理解していないとは言えません。
臨床では、次の3段階を分けます。
- 指示が本人へ届いたか
- 届いた言葉の意味を処理できたか
- 理解した内容を、発話・指差し・動作などで表せたか
たとえば「コップを持ってください」という口頭指示では動かなくても、実物のコップを見せてセラピストが持つ動作を示すと実行できる場合があります。この変化は、少なくとも運動能力が全くないという説明だけでは不十分であることを示します。反対に、口頭でも実演でも選択は正確なのに、麻痺側上肢だけ動作を完了できないなら、言語理解より運動出力の制約を優先して調べます。
「できない」という結果ではなく、入力方法と反応方法を変えたときの差を記録することが鑑別の入口です。

なぜそう見えるのか:一つの指示にも複数の処理が必要です
口頭指示から動作が始まるまでには、いくつもの段階があります。まず声へ注意を向け、音を聞き分け、単語と文の意味を処理します。次に、求められた動作を選び、身体の状態と周囲の環境に合わせて運動を組み立てます。最後に、筋出力、感覚フィードバック、姿勢制御を使って実行します。
失語症が影響する中心は言語処理です。しかし実際の反応は、覚醒、注意、聴力、視覚、記憶、失行、麻痺、感覚障害、疼痛、不安、疲労にも左右されます。複数の障害が併存することもあります。
聞いた言葉を理解しにくい場合
短い単語は分かっても、助詞や語順を含む文で誤ることがあります。「右手で左膝に触れる」のように、身体部位、左右、道具、動作が一文に重なると負荷が上がります。長い説明へ反応できないことを、単語の意味も全く分からないと解釈してはいけません。
理解していても言葉で答えにくい場合
呼称や文の生成が難しい方は、内容を理解していても適切な単語を口にできないことがあります。言いよどみや誤った語があるだけで、理解そのものが失われているとは限りません。指差し、絵、ジェスチャー、実物選択など、発話以外の反応を用意します。
動作へ変換する段階で止まる場合
失行では、十分な筋力があるように見えても、学習された目的動作の組み立てが崩れることがあります。言語理解の問題と失行は併存し得るため、口頭指示だけで判定しません。模倣、実物使用、自然な生活場面でも同じ誤りが出るかを比較します。
実行する身体条件が足りない場合
言葉と動作目標を理解していても、麻痺、感覚障害、疼痛、可動域制限、姿勢不安定性によって動作を完了できない場合があります。このとき、失敗した動作だけを見て理解力の問題へ戻すと、必要な運動評価が抜けます。
よくある勘違い1:話せないことと、分からないことは同じではありません
失語症は言語障害であり、発話の少なさだけで重症度や理解力を決められません。流暢に話していても内容が伝わりにくい方がいる一方、発話は少なくても、状況理解や非言語的な選択が保たれている方もいます。
発話量は観察項目の一つですが、認知能力全体の代理指標ではありません。
同じ理由で、失語症があるという診断だけから意思決定能力がないと決めることもできません。選択肢を実物や写真で示す、質問を短くする、反応時間を確保する、本人の選択を別の方法で再確認するなど、表出経路を整えてから判断します。
よくある勘違い2:大きな声と繰り返しだけでは情報は整理されません
聴力低下が主因なら、声量や補聴環境の調整が役立つ場合があります。しかし失語症による言語理解の難しさへ、同じ長い文を大きな声で何度も繰り返しても、文の構造は簡単になりません。
必要なのは、成人として敬意を保った自然な声量で、一文一情報へ整理することです。「今から立ちます。両足を床に置きます」のように区切り、実物やジェスチャーを添えます。幼児語に変えるのではなく、情報量と反応方法を調整します。
また、すぐに同じ指示を重ねると、最初の言葉を処理している途中へ次の情報が入ることがあります。反応までの時間を取り、表情、視線、手の動きも観察します。
よくある勘違い3:「はい」が返れば理解できたとは限りません
はい・いいえ質問は便利ですが、常に信頼できるとは限りません。質問内容を変えても同じ返答が続く、首振りと発話が一致しない、相手の表情へ合わせてうなずく場合があります。
「痛いですか」と一度だけ尋ねて終えず、部位を指してもらう、痛みの有無を絵から選ぶ、動作前後の表情や防御反応を見るなど、別経路で確認します。二択も、選択肢そのものを理解できているか、位置の偏りがないかを確かめます。
返事が得られたことと、本人の意思を確認できたことは同じではありません。
評価ではここを分ける:六つの方向から仮説を立てます
PT・OTの場面では、失語症の型を独力で確定することより、運動課題を妨げている条件を分け、STを含むチームへ再現可能な情報を渡すことが重要です。
| 評価する方向 | 観察すること | 条件変更の例 |
|---|---|---|
| 聞こえ方 | 呼名への反応、環境音、左右差、補聴器 | 背景音を減らす、正面から話す |
| 言葉の理解 | 単語、短文、複数段階指示の差 | 一文一動作、キーワードを示す |
| 表出手段 | 発話、指差し、書字、ジェスチャーの差 | 実物選択、絵、身振りを使う |
| 注意・覚醒 | 視線、持続時間、時間帯、疲労 | 短時間化、刺激量を減らす |
| 運動企画 | 口頭、模倣、実物、自然場面の差 | 実演、道具使用、環境設定 |
| 身体機能 | 麻痺、感覚、痛み、姿勢、可動域 | 支持面、介助、使用肢を調整 |
1.まず自然なやり取りを観察します
検査的な指示を連続する前に、本人が関心を持つ話題、あいさつ、飲み物の選択などで、どの経路を自発的に使うかを見ます。声、視線、表情、指差し、描画、書字、道具の使用は、いずれも伝達手段です。
ここでは正誤だけでなく、相手の発言を待てるか、話題を保てるか、誤りに気づくか、別の方法へ切り替えるかを記録します。
2.理解する単位を一段ずつ変えます
身近な物の単語、短い一文、一段階の指示、二段階の指示というように、負荷を一段ずつ変えます。ただし正答率だけで診断せず、同じ課題を実物、写真、書字、ジェスチャーでも比べます。
「タオルを取る」ができても「タオルを取って机に置く」で止まるなら、言語情報量、作業記憶、注意、動作系列のどこが上限かをさらに分けます。一度に複数条件を変えず、何を変えたときに反応が変わったかを残します。
3.反応手段を変えます
口頭で答えられない場合に、指差し、写真選択、ジェスチャー、描画、書字、実物操作へ切り替えます。書字を使えばよいと一律には決めません。失語症は読み書きにも影響し得るため、本人が使いやすい経路を実際に確かめます。
4.同じ運動を、口頭と実演で比べます
立ち上がり、移乗、更衣、道具操作など、同じ目標動作を口頭指示のみ、実演付き、環境手がかり付きで比較します。実演で急にできたから言語理解障害と確定するわけではありませんが、少なくとも指示形式が遂行へ影響していることは分かります。
反対に、どの入力形式でも麻痺側下肢の支持で崩れるなら、膝制御、足関節、感覚、疼痛、恐怖など運動・身体条件を詳しく見ます。
5.場所、時間、相手を変えて再現性を見ます
静かな個室では通じても、訓練室では難しい場合があります。午前と午後、PTと家族、座位と歩行中でも反応が変わります。これは本人の努力の差と決めず、背景音、疲労、二重課題、話者の話し方、姿勢要求を確認します。

臨床で使うならこう考える:伝達条件そのものを評価変数にします
臨床記録に「指示理解不良」とだけ書いても、次の担当者は同じ失敗を繰り返します。次のように条件と反応を具体化します。
- 長い口頭指示では開始なし
- 「立ちます」と短く伝え、前方へ体幹を傾ける実演を付けると開始
- 絵カード二択では希望する移動先を選択
- はい・いいえは質問内容を変えても「はい」が続き、単独では信頼しにくい
- 疲労が強い午後は、午前より反応開始が遅い
この記録なら、次回は同じ条件から始め、ジェスチャーを減らせるか、別の環境でも再現するかを検証できます。
伝達方法は親切の付け足しではなく、課題遂行に影響する臨床変数です。
リハビリで設計すること:話す練習と動作練習を切り離しすぎません
失語症への専門的な言語評価・訓練はSTと連携します。一方、PT・OTの運動・ADL練習にも、伝達と参加の機会があります。言葉が完全に出るまで動作練習を待つ必要はありませんが、本人が目標を理解し、拒否や痛みを伝えられる条件を用意します。
段階1:本人にとって意味のある目標を共有します
「歩行練習をします」だけでなく、自宅のトイレまで行く、家族と買い物へ行く、片手で飲み物を準備するなど、生活上の目的を写真や実物で共有します。選択肢を示したら、本人が選んだことを別の方法でも確かめます。
段階2:一つの課題へ絞ります
一度に姿勢、手の位置、足の位置、速度を全て直そうとすると、言語負荷と運動負荷が重なります。最優先の一要素へ絞り、短いキーワード、実演、床の目印などを組み合わせます。
たとえば立ち上がりで足部位置を変えるなら、最初は実演と視覚マーカーを使い、動作が成立した条件を確認します。その後、手がかりを減らしても同じ選択ができるかを見ます。
段階3:反応時間を確保します
指示後すぐに手を出すと、本人が処理し始めた反応を介助で上書きする場合があります。安全を確保したうえで待ち、視線、手の準備、体幹の前傾など、動作開始の兆候を観察します。
待つことは放置ではありません。転倒や疼痛のリスクが高い課題では、環境と介助位置を先に整えます。
段階4:本人からの伝達を課題へ入れます
「開始」「止める」「痛い」「休む」「もう一度」といった、訓練中に必要なメッセージを、発話、カード、指差し、ジェスチャーのどれで表すか決めます。これは安全確保だけでなく、本人が課題を調整する参加手段になります。
段階5:生活場面へ広げます
訓練室でコップの写真を選べても、食堂で飲み物を頼めるとは限りません。逆に、検査場面では言葉が出にくくても、なじみの店や家族との会話では伝えられる場合があります。
課題を食事、更衣、買い物、電話、交通機関などへ広げ、相手や背景音が変わっても伝達できるかを見ます。訓練した単語の正答と、生活で用件を伝えられることを同じアウトカムにしません。

家族・スタッフとの関わり:会話相手の技術も環境の一部です
コミュニケーションパートナー訓練は、家族、スタッフ、ボランティアなど、会話相手の関わり方を整える方法です。相手が話し続ける、本人の代わりにすぐ答える、誤りを全て訂正する状況では、本人が持つ伝達手段が表れにくくなります。
日常では次を共有します。
- 話しかける前に注意を向けてもらう
- 一度に一つの話題へ絞る
- 重要語を紙へ書く、絵や実物を使う
- 本人が答える時間を確保する
- 分かったふりをせず、伝わった内容を確認する
- 本人の前で、本人を除外して話を進めない
2016年の系統的レビューは、コミュニケーションパートナー訓練の25研究を検討し、全研究が何らかの肯定的変化を報告したとまとめました。ただし、慢性期で会話相手の技術を支える根拠はある一方、急性期や複雑な医療環境での質の高い試験は不足しているとしています。
したがって「この話し方なら全員に伝わる」という定型文を作るのではなく、本人ごとに伝わった条件をチームで共有し、生活場面で再評価します。
自宅や生活で気をつけること:急な変化と普段の障害を分けます
以前からある失語症への関わりと、急に生じた言葉の変化は分けます。新しく言葉が出ない、急に理解しにくくなった、顔や手足の麻痺が新たに出た、意識状態が変わった場合は、練習方法を調整して様子を見る場面ではありません。脳卒中再発などの可能性を考え、救急要請を含む医学的評価を優先します。
自宅では、家族だけで会話を成立させようと抱え込まないことも大切です。STへ、本人が使いやすい写真、文字、ジェスチャー、会話カードを相談します。視力、聴力、利き手、麻痺、読み書きの状態によって使いやすい道具は変わります。
本人の発話を先回りして全て代弁すると、短時間では会話が進んでも、本人の選択を確認できないことがあります。急ぐ場面と、本人が伝える時間を確保する場面を分けます。
変化を見るアウトカム:正答数だけで終わらせません
失語症では、言語機能、コミュニケーション活動、生活参加を分けて追います。
| 水準 | 見る内容 | 例 |
|---|---|---|
| 言語機能 | 理解、呼称、復唱、読み、書き | STによる標準化検査、訓練語と非訓練語 |
| 課題遂行 | 指示理解、選択、動作開始 | 正確さ、反応時間、手がかり量 |
| 機能的伝達 | 用件や気持ちを伝える | 痛み、休憩、希望、拒否の表出 |
| 生活参加 | 家庭・地域での会話と役割 | 食事、買い物、電話、趣味、家族交流 |
| 会話相手 | 支援方法の再現性 | 待つ、確認する、道具を使う |
言語検査の点数が変わっても、生活会話へ転移したかは別に確認します。反対に、写真カードやジェスチャーを使って用件を伝えられるようになっても、それを言語機能そのものの回復と表現しません。補助手段を使った機能的な代償と、言語処理の変化を分けます。
本人にとって価値のあるメッセージが、どの相手・場所でも伝わるかまで追うことが重要です。
論文からどこまで言えるか:量だけでなく、時期とアウトカムを見ます
言語療法全体の効果をどう読むか
Bradyらの2016年Cochraneレビューは、57件のRCT、3002人を含みました。そのうち、言語療法と無治療を比べた27のランダム化比較、1620人では、機能的コミュニケーションに小さいながら統計学的に有意な群間差が示されました。標準化平均差は0.28、95%信頼区間は0.06から0.49でした。
ただし、研究ごとに発症時期、重症度、介入内容、評価時点が異なります。高強度・高用量の介入には利点の可能性が示された一方、脱落も多かったため、量を増やせばよいと単純化できません。
慢性期でも訓練対象になり得るか
Breitensteinらの2017年多施設RCTは、発症6か月以上、70歳以下の失語症者を対象に、19施設で実施されました。修正ITT解析は156人で、3週間、週10時間以上の集中的言語療法と、同期間の開始延期を比較しました。日常場面の言語コミュニケーションは介入群で変化し、群間効果量Cohenのdは0.58でした。
これは慢性期でも訓練の対象になり得ることを示す重要な結果です。ただし、70歳以下で集中的訓練へ参加できた対象の結果であり、全ての失語症者へ同じ量を適用する根拠ではありません。
COMPARE試験では、慢性期失語症201人を、CIAT-Plus、複数様式を使うM-MAT、通常ケアへ割り付けました。二つの介入群は2週間で30時間でした。主要評価であるWAB-R失語指数の群間差は明確ではありませんでしたが、語検索、機能的コミュニケーション、コミュニケーション関連QOLには介入後の有意な変化が報告されました。
ここから、主要評価で差がないことと、全てのコミュニケーション成果に変化がないことは同じではないと分かります。同時に、二つの方法の一方が一律に優れるとも言えません。
急性期は多いほどよいのか
Nouwensらの2017年多施設RCTは、初回脳卒中後2週間以内の失語症者152人を対象に、4週間の早期認知言語訓練と、その期間は言語訓練を行わない群を比較しました。介入群の訓練量中央値は24.5時間でした。4週時点の日常言語コミュニケーションの調整済み群間差は0.39点、95%信頼区間はマイナス2.70から3.47で、統計学的に明確な差はありませんでした。
この結果は、急性期の訓練を否定するものではありません。自然経過、介入時期、内容、負担、アウトカムを考えず、高用量だけを目標にできないことを示します。
単語が出ることと会話で伝わることは同じか
Big CACTUS試験は、発症4か月以上の失語症者278人を、通常ケア、個別化したコンピューター言語訓練と通常ケア、注意対照と通常ケアへ割り付けました。6か月の自己管理型訓練は、本人に関連する単語の呼称には臨床的に意味のある変化を示しましたが、会話の機能的コミュニケーションには群間差を示しませんでした。
訓練した機能の変化を、そのまま会話や生活参加へ一般化しないことが必要です。
ぱらゴリ的な見立て:反応の良し悪しではなく、伝わった条件を残します
臨床で見落としやすい分岐は、「口頭指示でできない」を患者側の理解不足だけで説明することです。実際には、セラピストの文が長い、複数の修正を同時に求める、返答を待たない、発話だけを反応として扱うなど、課題側の条件が遂行を難しくしている場合があります。
ぱらゴリ的には、次の順で整理します。
- どの場面で伝達が止まったかを見つける
- 聴覚、言語、注意、運動企画、身体機能の仮説を挙げる
- 影響が大きそうな仮説へ順位を付ける
- 実物、実演、写真、短文などで伝達条件を一時的に変える
- 成立した動作に必要な能力を分ける
- 本人の生活目標に沿って一つの課題を設定する
- 伝わる難易度で反復する
- 正確さ、手がかり量、再現性、生活での使用を再評価する
これは「分かっているはず」と楽観することでも、「分からない」と決めることでもありません。仮説を条件変更で確かめ、本人の能力が最も表れやすい入口を探すことです。
最後にもう一度、要点を整理します
- 指示に反応しないことだけで、言語理解の低下とは決めません
- 失語症は話すだけでなく、理解、読む、書くにも影響し得ます
- 失語症、聴力、注意、失行、麻痺、感覚、疼痛、疲労を分けます
- 口頭、実演、実物、写真、書字、指差しで条件を一つずつ変えます
- 話せないことと、考えられないことを同一視しません
- 言語機能の変化、機能的な代償、生活参加を別のアウトカムで追います
- 伝わった条件をST、家族、スタッフで共有します
- 急な言葉の変化は医学的評価を優先します
良いコミュニケーション支援は、本人の代わりに決めることではなく、本人の理解と選択が表れる条件を整えることです。
参考文献
- Brady MC, Kelly H, Godwin J, Enderby P, Campbell P. Speech and language therapy for aphasia following stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2016;2016(6):CD000425. PMID: 27245310. DOI: 10.1002/14651858.CD000425.pub4
- Breitenstein C, Grewe T, Flöel A, et al. Intensive speech and language therapy in patients with chronic aphasia after stroke: a randomised, open-label, blinded-endpoint, controlled trial in a health-care setting. Lancet. 2017;389(10078):1528-1538. PMID: 28256356. DOI: 10.1016/S0140-6736(17)30067-3
- Rose ML, Nickels L, Copland D, et al. Results of the COMPARE trial of Constraint-induced or Multimodality Aphasia Therapy compared with usual care in chronic post-stroke aphasia. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2022;93(6):573-581. PMID: 35396340. DOI: 10.1136/jnnp-2021-328422
- Simmons-Mackie N, Raymer A, Cherney LR. Communication Partner Training in Aphasia: An Updated Systematic Review. Arch Phys Med Rehabil. 2016;97(12):2202-2221.e8. PMID: 27117383. DOI: 10.1016/j.apmr.2016.03.023
- Nouwens F, de Lau LML, Visch-Brink EG, et al. Efficacy of early cognitive-linguistic treatment for aphasia due to stroke: A randomised controlled trial. Eur Stroke J. 2017;2(2):126-136. PMID: 29900407. DOI: 10.1177/2396987317698327
- Palmer R, Dimairo M, Cooper C, et al. Self-managed, computerised speech and language therapy for patients with chronic aphasia post-stroke compared with usual care or attention control: a multicentre, single-blinded, randomised controlled trial. Lancet Neurol. 2019;18(9):821-833. PMID: 31397288. DOI: 10.1016/S1474-4422(19)30192-9


コメント