- 「廊下は歩けるのに、曲がるとふらつく」を見逃していませんか?
- 結論!方向転換は4段階に分けて見ます
- なぜそう見えるのか:曲がる瞬間に歩行の条件が一度変わります
- よくある勘違い:TUGの合計時間だけでは旋回の問題は分かりません
- 評価で分けること:安全確認のあとに左右両方向を同じ条件で比べます
- 臨床で使うならこう考える:一つの条件を変えて仮説を確かめます
- リハビリで設計すること:原因に合わせて難易度を一段ずつ上げます
- 代償と回復をどう分けるか:安全に回れた理由を言葉にします
- 自宅や生活で気をつけること:狭い場所と急な呼びかけに注意します
- 変化を見るアウトカム:旋回だけでなく生活での移動まで追います
- 論文からどこまで言えるか
- ぱらゴリ的な見立て:曲がれない理由を「バランスが悪い」で終わらせません
- 最後にもう一度、要点を整理します
- 参考文献
「廊下は歩けるのに、曲がるとふらつく」を見逃していませんか?
直線の廊下では見守りで歩けるのに、病室へ入るときに足が止まる。トイレで向きを変えると壁へ手をつく。椅子へ近づいたあと、身体を回して座るまでに何歩も必要になる。脳卒中後には、このような「曲がる場面だけ不安定」という困りごとがあります。
若手PT・OTが見落としやすいのは、10m歩行の速度や歩容が整えば、方向転換も自然にできると考えることです。しかし方向転換には、直進を続ける能力だけでなく、速度を落とす、進行方向を見る、身体の向きを変える、左右の脚で支持と踏み替えを行う、新しい方向へ再び進むという複数の処理が必要です。
方向転換でふらつく方に「もっと足を上げて」「麻痺側に乗って」と声をかけても、崩れている段階が違えば課題は合いません。視線と頭部の向きが変わらない方、旋回前に減速できない方、内側の脚へ荷重できない方、回ったあとに一歩目が出ない方では、評価も介入も変わります。
方向転換は直線歩行の付属課題ではありません。減速、方向の準備、旋回、再加速へ分け、左右両方向で確認する独立した移動課題です。
この記事では、方向転換を合計時間だけで終わらせず、どこで崩れるかを見つけ、課題設計と再評価へつなげる考え方を整理します。
結論!方向転換は4段階に分けて見ます
最初に押さえたいのは、方向転換の歩数だけを数えないことです。臨床では次の4段階に分けます。
- 旋回点へ近づきながら速度と歩幅を調整する
- 視線、頭部、体幹を新しい進行方向へ向ける
- 左右の脚で支持、踏み替え、身体の回転を行う
- 旋回後の一歩を出し、新しい方向へ再加速する
「何秒かかったか」より先に、「減速、向きの準備、旋回、再加速のどこで止まったか」を記録します。
左右差を見ることも重要です。ただし、麻痺側へ回る方が常に難しい、非麻痺側へ回れば安全と決めません。内側になる脚、外側になる脚、感覚、視野、注意、補助具の位置、本人の選びやすさが変わるため、同じ条件で両方向を比べます。
もう一つの要点は、代償と能力変化を分けることです。大きな円を描けば安定して回れることは、生活を守る有用な代償になり得ます。しかし、狭い場所で身体を制御して回る能力が変わったこととは別です。

なぜそう見えるのか:曲がる瞬間に歩行の条件が一度変わります
直線歩行では、前方への進行を保ちながら左右の脚を交互に出します。方向転換では、進行方向そのものを変えるため、身体重心の進む向き、足を置く位置、身体各部の向きを組み替えなければなりません。
健康な成人の方向転換では、一般に視線が新しい進行方向を捉え、その後に頭部、胸郭、骨盤、足部が時間差をもって向きを変える協調がみられます。Lamontagneらの研究は、脳卒中者2人と対照者1人を詳細に比較した小規模なパイロット研究ですが、脳卒中者では視線と姿勢の向きを変える順序や協調が異なっていました。
この研究だけで全員の機序を決めることはできません。ただし、足部だけでなく、視線、頭部、胸郭、骨盤がいつ新しい方向を向くかを見る必要があることを示す基礎的な観察として参考になります。
旋回前の減速が必要です
歩行速度が速いまま急に向きを変えると、身体重心の進む向きを短時間で変える必要があります。脳卒中後に支持能力、感覚、反応時間が低下している場合、旋回点の手前から歩幅を小さくし、両脚支持時間を確保する戦略がみられることがあります。
歩幅を小さくすること自体を悪い歩容とは決めません。転倒を避ける安全戦略の場合があるからです。一方、必要以上に早く減速し、数秒間停止してからでなければ回れない場合は、旋回への予測、支持能力、恐怖心、視覚情報の処理などを分けて確認します。
内側の脚と外側の脚で役割が変わります
曲がる方向によって、旋回の内側になる脚と外側になる脚が入れ替わります。内側の脚では小さな踏み替えや身体の支持が必要になり、外側の脚では身体を回しながら次の位置へ運ぶ役割が大きくなる場合があります。
麻痺側へ回るときと非麻痺側へ回るときでは、麻痺側下肢が内側か外側かが変わります。随意性、足関節の制御、股関節周囲筋の支持、足底感覚、体幹との協調がどの役割で問題になるかを見ます。
回ったあとに歩行を再開する能力も必要です
方向転換を終えても、新しい方向へ一歩が出なければ移動は続きません。旋回中は保てていても、出口方向への視線が遅い、支持脚から次の脚へ荷重を移せない、補助具を置き直せないといった理由で再加速が止まることがあります。
旋回点を通過できたことと、方向転換後の歩行が成立したことは同じではありません。
よくある勘違い:TUGの合計時間だけでは旋回の問題は分かりません
Timed Up and Go Testは、椅子から立ち、3m歩き、方向転換し、戻って座る一連の基本的移動を測る検査です。脳卒中者を対象とした系統的レビューでは、歩行可能な方の基本的移動を測る尺度として良好な信頼性が報告されています。
ただし、合計時間が同じでも中身は異なります。
- 立ち上がりに時間がかかる
- 直線歩行が遅い
- 旋回前に長く停止する
- 旋回の歩数が多い
- 回ったあとに再開できない
- 椅子へ近づいたあとの位置調整に時間がかかる
Expanded Timed Up and Go Testを用いたFariaらの横断研究では、脳卒中者48人と年齢、性別、身体活動を合わせた対照者48人を比較し、脳卒中群は各区間に長い時間を要しました。この結果は、TUG全体を一つの数字で見るだけでなく、区間ごとに観察する意義を支えます。
TUGはスクリーニングとして有用ですが、合計時間から方向転換の原因を診断することはできません。
歩数が多いことをすぐに悪いと決めません
小刻みに多くの歩数で回る方がいます。これは旋回能力の低下を示す場合がありますが、転倒を避けるために支持基底面を保つ代償の場合もあります。歩数を減らすよう強く求めてふらつきが増えるなら、安全余裕を奪っている可能性があります。
歩数は、旋回時間、バランスの崩れ、介助量、足部の交差、壁や手すりへの接触、本人の不安と組み合わせて読みます。
「得意な方向だけ練習する」でも「苦手な方向だけ反復する」でもありません
得意な方向は生活上の安全な代償として使える可能性があります。一方、トイレ、寝室、台所などでは両方向への旋回が必要です。苦手方向の反復が必要でも、原因を分けずに失敗を繰り返せば、恐怖や過度な固定戦略を強める可能性があります。
得意方向は生活を成立させる手段、苦手方向は能力を分析する課題として、目的を分けます。
評価で分けること:安全確認のあとに左右両方向を同じ条件で比べます
方向転換の評価は、転倒を起こさない環境から始めます。必要な見守りや介助を置き、普段使用する杖、歩行器、装具、靴を記録します。新たな麻痺、言語障害、視野異常、強い頭痛、意識変化、急なめまいがある場合は、練習を続ける前に医療的評価へつなぎます。
まず180度方向転換を観察します
一定距離を歩いたあと、目印で180度回り、元の方向へ戻ります。左右それぞれで行い、次を記録します。
- 旋回点へ近づく速度と歩幅
- 旋回開始の位置
- 旋回時間
- 旋回に要した歩数
- 停止の有無と停止時間
- 視線、頭部、胸郭、骨盤の向き
- 麻痺側と非麻痺側の接地位置
- 足部の交差、引っかかり、内反、つま先のクリアランス
- 壁、手すり、杖、介助への依存
- ふらつき、バランスを失った回数
- 旋回後の一歩と再加速
- 本人が感じた怖さと難しさ
Fariaらは脳卒中者14人と対照者14人の180度方向転換を比較しました。脳卒中群では、旋回方向にかかわらず、所要時間、歩数、バランスの崩れで成績が低い結果でした。一方、この小規模研究では麻痺側方向と非麻痺側方向の間に一貫した差は示されませんでした。
この結果から「方向差はない」と一般化するのではなく、どちらが難しいかを先入観で決めず、本人ごとに両方向を測ると考えます。
速度をそろえて比べます
得意方向はゆっくり、苦手方向は急いで実施していれば、公平な比較になりません。普段速度と安全に行える一定速度の両方を試し、開始位置、目印、靴、補助具、指示をそろえます。
声かけも条件です。「右を見てから回ってください」と伝えた試行と、自然に回った試行を分けます。声かけで変わるなら、視覚探索や運動計画への外的な手がかりが影響した可能性があります。ただし、それだけで神経学的な原因が決まるわけではありません。
身体機能は旋回の役割に結びつけます
筋力や関節可動域を測って終わらず、方向転換のどの場面に関係するかを考えます。
| 確認する要素 | 方向転換で現れやすい所見 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 麻痺側下肢の支持 | 麻痺側が内側になると急いで踏み替える | 支持時間、骨盤の位置、膝と足関節の制御 |
| 麻痺側の振り出し | 麻痺側が外側になると足が遅れる | 股関節運動、足部クリアランス、選択的運動 |
| 感覚 | 足部位置を何度も見てから回る | 位置覚、足底感覚、視覚を減らした条件 |
| 視野・注意 | 一方向の目印や障害物を見落とす | 視野、半側空間無視、注意配分 |
| 前庭・眼球運動 | 頭を動かすと強いふらつきやめまい | 症状誘発、眼振、医師を含む連携 |
| 体幹・骨盤 | 胸郭と骨盤が一塊で回る | 座位回旋、立位での分節運動、疼痛 |
| 恐怖・自己効力感 | 能力以上に早く停止し手を伸ばす | 転倒歴、怖さ、環境条件 |
| 補助具操作 | 杖や歩行器が旋回経路を妨げる | 高さ、置く位置、狭い場所での操作 |
感覚障害と筋力低下、半側空間無視と視野障害、めまいと不安を混同しません。複数要因が重なる場合もあるため、一つの検査で原因を決めないことが重要です。

臨床で使うならこう考える:一つの条件を変えて仮説を確かめます
観察した所見から原因候補を並べ、影響が大きそうなものに順位をつけます。そのうえで、一時的な条件変更を使って反応を見ます。
旋回前に止まる場合
目印を旋回点より手前に置き、「ここから歩幅を小さくします」と予告します。これで停止せず回れるなら、減速開始のタイミングが一つの候補になります。
ただし、予告でできたことは、自然な環境でも方向転換能力が変わったことを意味しません。外的手がかりを使った代償として成立した可能性があります。手がかりを減らした条件でも再現するか確認します。
視線と身体の向きが遅れる場合
出口方向に明確な目標物を置き、視線を先に向ける条件と、自然に回る条件を比べます。視線の手がかりで胸郭や骨盤の向きが変わるなら、方向の準備が影響している可能性があります。
一方、視線を向けたときに強いめまいが出る、目標物を見落とす、指示理解が難しい場合は、頭部運動を増やす前に前庭、視野、半側空間無視、認知を確認します。
麻痺側支持で急ぐ場合
手すりや軽い上肢支持を一時的に使い、麻痺側が内側になる旋回を比べます。支持を加えたときに歩数やふらつきが変わるなら、麻痺側で身体を支える条件が影響している可能性があります。
これは手すりで回れたから筋力が変わったという意味ではありません。支持によって課題を再現しやすくした段階です。次に、必要な股関節、膝、足関節、体幹の能力へ分解します。
旋回後の一歩が出ない場合
旋回の出口に目標線を置き、「線を越える一歩まで」を一つの課題にします。旋回点で終わる練習ではなく、回ったあとに歩行へ戻るところまで測ります。
介入の効果は、条件変更直後の見た目ではなく、手がかりを減らした試行と生活場面への転移で判断します。
リハビリで設計すること:原因に合わせて難易度を一段ずつ上げます
方向転換の練習では、狭い場所や速い速度から始めません。安全に成功できる条件をつくり、どの能力を反復しているか明確にします。
段階1:予測できる90度方向転換
床に広い経路を示し、出口方向を見やすくします。速度を落とす位置、視線の向き、最初の一歩をそろえて練習します。必要なら手すりや介助を使います。
段階2:180度方向転換
十分な旋回半径から始め、左右両方向を行います。旋回時間、歩数、停止、バランスの崩れを記録します。歩数を減らすことだけを目標にせず、安全と連続性を優先します。
段階3:旋回半径と速度を変える
大きな円から小さな円へ、遅い速度から普段速度へ段階づけます。一度に両方を難しくしません。どの条件で崩れたか分かるよう、一つずつ変えます。
段階4:開始側と終了課題を変える
麻痺側が内側になる条件、外側になる条件、回ったあとに椅子へ座る条件、ドアを開ける条件などを加えます。OTではトイレ、台所、更衣場所など、実際の活動に合わせた配置も重要です。
段階5:予測できない方向と注意課題を加える
単一課題で安全が保たれてから、合図による方向変更、障害物回避、物を運ぶ、会話をするなどを加えます。注意課題を入れてふらつきが増えた場合、筋力だけの問題とは判断しません。
角度、速度、旋回半径、方向の予測、認知負荷のうち、一度に変える条件は原則一つにします。
Chenらは、地域で歩行している慢性期脳卒中者30人を、方向転換を取り入れたトレッドミル練習群と通常のトレッドミル練習群へ無作為に割り付けました。両群とも30分のトレッドミル練習と10分の一般運動を、4週間で12回行いました。方向転換練習群では、通常群より地上での旋回速度などに大きな変化が示され、1か月後にも維持されました。
このRCTは、方向転換を課題として直接練習する価値を示す一つの根拠です。ただし、対象は平均発症後2.6年で、平均歩行速度0.59m毎秒の慢性期歩行者でした。急性期、重度の介助歩行、強い認知障害やめまいを持つ方へ同じ内容を適用できるとは限りません。また、専用設備がない臨床で同じ方法を再現する必要もありません。

代償と回復をどう分けるか:安全に回れた理由を言葉にします
方向転換では、安全を守る代償が必要な場面があります。重要なのは、代償を否定することではなく、何が助けになったかを明確にし、能力変化と混ぜないことです。
| 観察された変化 | まず考える意味 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 大きな円で安定した | 旋回半径を使った代償 | 狭い生活空間でも安全か |
| 手すりで歩数が減った | 上肢支持による代償 | 支持を減らして再現するか |
| 目印で停止が減った | 視覚的手がかりによる代償 | 目印なし、別環境でも可能か |
| 得意方向へ統一して安全になった | 経路選択による代償 | 生活上必要な両方向をどう補うか |
| 同じ条件で左右とも旋回時間が短くなった | 方向転換能力の変化の可能性 | バランス、介助量、再加速も保たれたか |
| 異なる場所でも連続して回れた | 課題転移の可能性 | 混雑や注意課題でも再現するか |
手がかりや補助具で成功したことを「回復した」と表現せず、何を補った結果かを記録します。
一方、代償によって生活が安全になるなら、それ自体に価値があります。例えば狭いトイレで無理に苦手方向へ回るより、手すりの位置や動線を変え、得意方向を使う方が安全なことがあります。能力獲得の練習と、今日の生活を守る環境調整を並行して考えます。
自宅や生活で気をつけること:狭い場所と急な呼びかけに注意します
当事者やご家族には、直線歩行が安定していても、方向転換は別に確認することを伝えます。特に次の場面は難易度が上がります。
- トイレや洗面所など旋回半径が狭い場所
- 椅子やベッドへ近づいてから後ろ向きになる場面
- 玄関で靴や段差に注意しながら向きを変える場面
- 歩行器や杖を置き直す必要がある場面
- 後ろから呼ばれて急に振り向く場面
- 荷物を持ち、会話しながら曲がる場面
- 夜間や照明が暗い場所
急に振り向かせず、一度止まり、足元と周囲を確認し、複数歩で回る方法を選べるようにします。家具をつかむ方法は、家具が動いたり高さが合わなかったりするため、固定された手すりと同じ安全性ではありません。
自宅練習では、転倒歴がある方、介助が必要な方、強いめまいがある方が一人で反復しないようにします。回数を増やす前に、実施場所、見守り、補助具、疲労時の中止基準を専門職と確認します。
生活では最小歩数より、安全に止まり、周囲を確認し、連続して移動できることを優先します。
変化を見るアウトカム:旋回だけでなく生活での移動まで追います
方向転換の変化は、一つの尺度だけで判断しません。
方向転換そのもの
- 左右別の180度旋回時間
- 左右別の歩数
- 停止の有無と時間
- バランスを失った回数
- 足部交差や接触の有無
- 見守り、介助、上肢支持の量
- 旋回後の一歩までの時間
基本的移動
- TUGの合計時間と旋回区間
- 10m歩行速度
- Dynamic Gait IndexやFunctional Gait Assessmentの方向変更項目
- Mini-BESTestの動的歩行課題
多方向へのステップ
Modified Four Square Step Testは、杖の代わりに床のテープを用い、前後左右へ踏み替える検査です。脳卒中者55人を対象とした測定研究では、検者内、検者間、再検査の信頼性が検討され、最小検出可能変化は6.73秒と報告されました。
ただし、これは180度旋回そのものを測る検査ではありません。多方向へのステップ、障害物をまたぐ要素、順序理解を含むため、方向転換の所見を補う尺度として使います。
生活での意味
- トイレで手すりへ安全に近づける
- 台所で振り向いて物を運べる
- 椅子へ近づき、位置を調整して座れる
- 店内や人混みで進行方向を変えられる
- 家族の介助量が減った
- 方向転換への怖さが変わった
検査室で速く回れたことだけでなく、必要な生活場面で安全と連続性が保たれたかを確認します。
測定条件はそろえます。靴、装具、杖、歩行器、開始速度、旋回半径、方向、指示、見守り、時間帯が変われば、結果の意味も変わります。
論文からどこまで言えるか
言えること
- 小規模な比較研究では、脳卒中者は対照者より180度方向転換の所要時間、歩数、バランスで課題を示しました。
- パイロット研究では、脳卒中後に視線、頭部、体幹、骨盤、足部の向きを変える協調が異なる例が報告されています。
- TUGは歩行可能な脳卒中者の基本的移動を測る検査として信頼性を支持する研究があります。
- Expanded TUGの研究は、合計時間だけでなく各区間を見る考え方を支持します。
- 慢性期歩行者30人のRCTでは、方向転換を含むトレッドミル練習群が通常のトレッドミル練習群より旋回速度などに大きな変化を示しました。
- 臨床実践ガイドラインは、慢性期の歩行速度や歩行距離を高める目的では、課題特異的な歩行練習と十分な練習量、適切な強度を重視しています。
まだ言い切れないこと
- 麻痺側方向と非麻痺側方向のどちらが全員にとって難しいかは決められません。
- 旋回の歩数が減れば、必ず安全性や生活能力が高まったとは言えません。
- TUGの合計時間だけで、方向転換の原因や転倒を正確に予測できるとは言えません。
- 一つの方向転換練習が、病期や重症度を問わず全員に適するとは言えません。
- 直線歩行速度の変化が、そのまま狭い場所や二重課題での方向転換へ移るとは限りません。
- 小規模研究の群平均を、個人の旋回方向や介助方法へそのまま当てはめることはできません。
ぱらゴリ的な見立て:曲がれない理由を「バランスが悪い」で終わらせません
初学者が方向転換を見るとき、「ふらついた」「歩数が多い」「麻痺側に乗れていない」で評価を終えやすくなります。しかし、その言葉だけでは課題を設計できません。
例えば、麻痺側方向への180度旋回で6歩かかる方がいたとします。旋回前に十分減速できず勢いが残るのか、視線が直進方向のままなのか、麻痺側支持を短くするため急いで踏み替えるのか、麻痺側足部が床に引っかかるのか、回ったあとに一歩が出ないのかで必要な練習は異なります。
Activeの8ステップで考えると、方向転換の不安定さを見つけるのは最初の段階です。次に原因候補を並べ、順位をつけ、手すり、目印、旋回半径、速度など一つの条件を変えて反応を見ます。その結果から必要な能力へ分け、難易度を設定し、同じ条件で反復し、左右別の旋回時間、歩数、介助量、再加速、生活場面を再評価します。
方向転換の練習は「何回回ったか」ではなく、「どの段階を、どの条件で、何を変えるために反復したか」で設計します。
最後にもう一度、要点を整理します
- 方向転換は、減速、方向の準備、旋回、再加速へ分けます。
- 直線歩行が安定していても、方向転換の安全が保証されるわけではありません。
- 麻痺側方向と非麻痺側方向を同じ条件で測り、先入観で得意方向を決めません。
- TUGは合計時間だけでなく、旋回前の停止、歩数、バランス、旋回後の一歩を見ます。
- 歩数が多いことは、安全のための代償か、能力低下かを分けます。
- 視線、頭部、胸郭、骨盤、足部が向きを変える順序を観察します。
- 介入では角度、速度、旋回半径、方向予測、認知負荷を一つずつ変えます。
- 手がかりや補助具で成立した代償と、条件を外しても再現する能力変化を区別します。
- 検査室の数値だけでなく、トイレ、台所、椅子への接近など生活場面まで追います。
「曲がるとふらつく」を一つの問題にせず、どこで速度と身体の向きを制御できなくなるかまで分けてください。
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