こんにちは!ぱらゴリです!
みなさん臨床の中で杖などの歩行補助具を選定することってありますよね?
その中で、杖を使うことでどんな意味があるのか?を
- 歩行補助具別の免荷率
- 杖を使うことで得られる効果
- 杖を使う人はどんな人?
といった3つのテーマで解説していきたいと思います!
歩行補助具別の免荷率について!
まずは最初のテーマである、歩行補助具別の下肢の免荷率についてみていきましょう!
これは歩行補助具の選定に必要な知識の1つになってくるかと思います。
案外これって知られていないし、感覚的に行っている場合の方が多いと思うんです!
この人は体重の○○%くらいの筋力しかないかもしれない、といった予測につながっていき展開していける可能性があります。
ここでしっかりと覚えていきましょう!
4つの歩行補助具による免荷率をみていこう!
今回エントリーしたのは、
- シルバーカー
- ロフストランドステッキ
- 松葉杖
- T字杖
の4つです。
それぞれの免荷率はこのようになっています。
車輪付き歩行器
車輪付き歩行器(シルバーカー)は体重の約36%を免荷するとされています。
これにより、腰にかかる負担の軽減やBOS(Base of support:支持基底面)が広くなるので安定性が向上することが考えられます。
松葉杖
松葉杖は体重の約50%を免荷するとされています。
しかし松葉杖を使う場合には、片足で支えて両手で支持することが多く身体機能が比較的高い方は使いやすいですが、取り回しが難しいという難点もあります。
また座るときや階段では、脇から抜いたり、昇段と後段で足の運びが変わるため使い方が難しいというデメリットもあります。
そして、もう一つ
ロフストランドステッキ
ロフストランドステッキは体重の約56%を免荷するとされています。
これが杖の中でトップクラスです。
肘ー前腕・手で支えるので体重がかけやすいといった傾向があります。ただ、取り回しが少しむずかしいという点もありますので、免荷が必要!といった場合にはこういった選択肢もありかもしれません。
T字杖
最後がT字杖です。
これは体重の約24%を免荷するとされています。
例えばT字杖を選択する場合には、こういった考え方が重要です。
※あくまで免荷率に関しての話ですので、バランスなどの安定性に関してはまた別の考え方となります。
杖を使うことで得られるメリットとは?
次のテーマは杖を使うことで得られるメリットについてです。
ここでみておく必要があるのが、杖をどちらにつくか?ということです。
なんとなく右利きの人は右手、左利きの人は左手となっていませんか?
案外知らない方も多いので、ここでしっかりと理解し説明できるようになっておきましょう!
私たち医療従事者あるあるなのですが、
医療系のドラマとかでよく見かけるギブスを巻いた側(患側)に杖をついている、という光景。
モヤモヤするって人も多いのですが、なぜ患側につくのがあまり良くないとされるのか?ということが大事になってきます。
杖はどちらにつくのが良い?の前に…
私たちは2足直立位であるが故に歩けるわけなのですが、
そこに常に付き纏ってくるのが、「転倒リスク」です。
しかし私たちは、よっぽどのことがないと転倒しないわけです。
しかし臨床場面では転倒が頻回に起こるのですが、それはなぜなのでしょうか?
それは「姿勢制御能力が低下しているから」なんです。
姿勢制御能力って何よ・・・それを教えてくれよ・・・。
という声が聞こえてきますので、ざっくり解説していきます。
転倒しないためには、
「空間での身体位置を制御する能力が必要」とされています。
そのためには平衡と定位という能力が必要なのですが、
ざっくり説明すると、「重心をいかにして、支持基底面内に保持するか?」という能力です。
平衡は、支持基底面内に質量中心(COM)を維持するための反応とされ、定位は身体各部の位置を他の部位や環境に対して保つ反応
とされています。
例えば傘を手に乗せて直立を保つ遊びをしたことありませんか?
- 手を動かしてバランスをとる行為は、平衡に関連しています。これは、傘が傾き始めたときに手を動かしてその傾きを補正し、傘を直立させ続ける行為です。このプロセスは、外部からの変化(この場合は傘の傾き)に対して、身体(手)を動かして対応し、物体(傘)を均衡状態に保つことを目的としています。
- 手は動かさず傘を動かしてバランスを取る行為は、定位に近い概念です。ここでは、傘自体を微調整してバランスを取ることが考えられますが、一般的に定位は物体の特定の位置や姿勢を調整・保持する行為を指します。ただし、この例のように手を使わずに傘を「動かして」バランスを取ることは、実際には姿勢制御の文脈ではあまり一般的ではないかもしれません。通常、定位は手や身体の位置を調整することであり、傘のような物体を直接動かすことは含まれません。
このため、傘を手で動かすことなくバランスを取る(例えば、手を動かさずに傘の重心を微調整するなど)行為は、厳密に言えば定位とは異なりますが、姿勢制御の文脈では一般的に平衡を保つための手法と捉えることができます。結局のところ、平衡は外部の変化に対して適応するプロセスであり、定位は特定の目標姿勢や位置を維持するためのプロセスだと考えられます。
では杖を使うとでどんなメリットがあるのでしょうか?
杖の役割は?
杖の主な目的は、
- 歩行時のバランス保持
- 下肢荷重の軽減
の2つだと考えられており、
高齢者や脳血管障害患者では前者、変形性膝関節症や人工膝関節・股関節全置換術後のような運動器疾患患者では後者が主な目的
加茂野有徳. “杖を用いた歩行の特性.” バイオメカニズム学会誌 44.3 (2020): 141-146.
とされています。
杖を使うと安定する理由
杖を使う安定が向上する理由ですが、
通常足の裏の範囲内しか支持基底面がないため、重心を制御する範囲が狭いですよね。
そこで杖を使うことで杖の分、支持基底面が広がることで安定する、と考えれます。
また、杖を使うことにより重心(厳密にはCOP)が、杖をついた側の足付近に位置するようになります。
例えば左側の支持性が低下している場合に、両足の中心付近に重心があるよりも、右側に重心があった方が安定します。しかし杖がない場合には、左足は出せても右足を出すことができません。
理由として、右側を出そうとすると左側に一度乗せないといけないわけです。
しかし杖があれば杖に荷重を乗せつつ、左足の低下した支持性を補うこともできるといったわけなんですね。
杖をどちらにもったほうがいいのか?
杖をどちらにもったほうがいいのか?についてですが、
どちらについてもある程度垂直力に関しては軽減できるとされています。しかし先ほどのバランスのことや免荷率のことを考えると、やはり非麻痺側や健側に持つ方が好ましいと考えれます。
またバランスを補うといった目的では、利き手でもち、支持基底面を広げるといった使い方の方が好ましいのではないかと考えれます。
杖を使うと歩行が改善する?
杖を使うことで、歩行が改善するといった見解もあります。
- 脳卒中片麻痺の方…歩数が減少し、歩幅が拡大。左右の非対称性が改善する
- 運動器疾患の方…歩数が減少し歩幅が拡大。立脚初期と立脚後期の膝内転モーメントが減少し、歩行中の疼痛と膝内反が改善する
とされています。
しかし全員に同じ効果があるとは限りません。目的と杖がマッチすると杖を使わないときにはない、メリットが得られる可能性が十分にあると考えています。
杖を使うのはどんな人?
杖を使うことのメリットから、杖を使うのはどんな人というテーマについて最後解説していきます。
杖の役割7選
先ほどの内容と重複しますが、杖を使うことで得られるメリットですね。これを7つあげていきます。
- 姿勢制御の改善
- バランスの維持
- 力学的サポートの提供
- 安定性の向上
- 運動量の制御
- 力の適用による調整
- バリエーションによる地形への対応
があげられます。
杖を使うことで得られるメリットについてしっかり理解しておきましょう。
姿勢制御とバランスの維持
私たちは、杖に立っているだけで揺れています。
そこで杖を使用することで支持基底面が広がること安定し、重心の大幅な移動を防ぐことができます。また3点で支えることで、支持基底面が広がったことで不安定性な表面上でのバランスが維持しやすくなります。
狭い道でバランスをとる際に、杖を使った場合とそうでない場合では、重心動揺に優位な差があった
Marta Russo, Jongwoo Lee, Neville Hogan et al. Mechanical Effects of Canes on Postural Control: Beyond Perceptual Information, 15 November 2021, PREPRINT (Version 1) available at Research SquareMechanical Effects of Canes on Postural Control: Beyond Perceptual InformationBackgroundNumerous studies showed that postural balance improves through light touch on a stable surface highlighting th...
といった報告もあります。
バランスを取るために大事なことについて解説します。
通常自分が立っているときにバランスを取るときには感覚が重要だとされています。特に足の裏や手からの感覚の重要性は他よりも高いとされています。
しかし脳卒中後などにはこの割合が変化して感覚がうまく使えない状態になっているとされています。
また杖を使うと、「安定する」のですが、なぜこれ安定するのでしょうか?
杖を使うと安定するそれは「魔法の杖現象」
杖の先には、手と違い感覚センサーはありません。
なのになぜか床の硬さや滑りやすさなどが杖を通しわかるんですが、なぜでしょう?
これを魔法の杖現象といいます。
豆腐を触っても、豆を触っても力の加減ができますよね。それは箸を通して手の感覚(遠位感覚)で意味づけができ、そこに対して筋肉の出力などを調整できるから、ですね。
杖を使うとバランスを保つために必要な感覚の情報量が増えるため、姿勢が安定するだけではなく、地面などからの情報を杖を使わない時と比較して、たくさん得られるから不安定じゃなくなる、と考えています。
そしてしっかりと硬い杖、グリップしやすい杖、滑りにくいゴム先などであればさらに正確な情報が得やすくなるはずです!
杖による力学的なサポート
- 杖に6kg荷重することで膝への合力が34%減少した
- 杖を強くつくように指示した場合には膝内側荷重量の免荷率が約3倍になった
- 杖の荷重量の増加に伴い、外部膝関節内反モーメントの減少率も高くなる
といった報告から、膝にかかる力学的な負担を軽減させてくれる可能性があります。
つまり杖を使う方がいい人とは、
- 支持基底面を広げることでバランスが向上し、安定性が得られ活動範囲が広がる可能性がある方
- 膝への負担を減らしたい方
- 免荷をすることで、非支持側の支持性をカバーすることで、活動範囲が広がる可能性がある方、ADLが向上する方
であると考えます。
まとめ
各歩行補助具の免荷率や杖を使うことのメリットから杖を使うと良い効果が得られる方はどんな方?ということを説明してきました。
使い所が大事であり、その使い所をしっかり見極めるのは、こういった知識が必要不可欠です。
ぜひ今回の内容を何度も振り返っていただき、臨床意思決定に役立ててください🎵
最後までありがとうございました!
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