- 「左側へぶつかるから半側空間無視」と決めていませんか?
- 結論!「見えない」と「注意が向かない」を別々に確かめます
- なぜそう見えるのか:目が開いていても、視覚情報の届き方は同じではありません
- よくある勘違い1:抹消課題が正常なら視野も正常、ではありません
- よくある勘違い2:左へ声をかけ続ければ十分、ではありません
- よくある勘違い3:ぶつからなくなれば視野が回復した、ではありません
- 評価ではここを分ける:視野、注意、探索、生活の四段階です
- 臨床で使うならこう考える:失敗する場面を一つずつ再現します
- リハビリで設計すること:探索の型を生活課題へ移します
- 自宅や生活で気をつけること:安全確保と探索練習を同じにしません
- 変化を見るアウトカム:身体機能と生活行動を並べます
- 論文からどこまで言えるか:探索訓練は期待だけで選びません
- ぱらゴリ的な見立て:見落とした側より、見落とした条件を見ます
- 最後にもう一度、要点を整理します
- 参考文献
「左側へぶつかるから半側空間無視」と決めていませんか?
脳卒中後、廊下の左側にある手すりへ肩をぶつける、食事の左半分を残す、文章の左端を読み飛ばす。このような場面を見ると、半側空間無視を疑うのは自然です。
しかし、同じような「左の見落とし」は、同名半盲という視野障害でも起こります。さらに、同名半盲と半側空間無視が併存することもあります。視力低下、眼球運動障害、複視、注意機能の低下が重なれば、行動だけを見て原因を一つに決めることはできません。
ここで重要なのは、名前当てではありません。見落としが、見える範囲の欠損で起きているのか、空間へ注意を向けにくいことで起きているのか、両方なのかを分けることです。
この記事では、脳卒中後の同名半盲を半側空間無視と混同せず、視野、注意、眼球運動、実生活行動をつないで評価する流れを整理します。訓練では、視野が広がったことと、眼や頭を動かして見落としを補えるようになったことを区別します。
結論!「見えない」と「注意が向かない」を別々に確かめます
同名半盲は、左右どちらか同じ側の視野が、両眼で欠ける状態です。たとえば左同名半盲では、左眼だけが見えないのではなく、両眼の左側視野に欠損が生じます。多くは視交叉より後方の視覚経路が脳卒中で損傷することで起こります。
半側空間無視は、視力や視野だけでは説明できない空間性注意の障害です。反対側の刺激に気づきにくい、探索を開始しにくい、身体や物の片側を扱いにくいといった形で現れます。
臨床では、次の四層を順に確認します。
- 視覚入力:視力、視野、複視、眼球運動に問題がないか
- 空間性注意:抹消課題、線分二等分、日常行動で左右差がないか
- 探索行動:眼球運動と頭部運動で欠損側を補えているか
- 生活課題:読字、食事、更衣、歩行、屋外移動で何が起きるか
同名半盲の確認には視野評価が必要であり、半側空間無視の机上検査だけでは代用できません。
また、机上で左側の印を見つけられても、歩行中や会話中に同じ探索が使えるとは限りません。注意資源が別の課題へ割かれると、代償的な探索が崩れることがあります。反対に、探索が上手になって衝突が減っても、視野欠損そのものが小さくなったとは限りません。
視野の変化は視野検査で、代償の変化は課題中の探索と生活行動で確かめます。

なぜそう見えるのか:目が開いていても、視覚情報の届き方は同じではありません
同名半盲は「片目の半分が見えない」状態ではありません
左右の眼から入った視覚情報は、視交叉で一部が交叉し、その後は左右の視野ごとに整理されて後方の視覚経路へ伝わります。右視索、右視放線、右後頭葉などが損傷すると、両眼の左側視野が欠ける可能性があります。
この仕組みのため、片眼ずつ隠しても同じ側の見落としが残ります。眼球そのものに問題がないように見えても、脳内の視覚経路の損傷によって視野欠損は起こります。
ただし、ベッドサイドで大まかに確認しただけでは、半盲、四分盲、暗点、周辺視野の狭窄を正確に分けられない場合があります。対座法は入口であり、欠損の範囲と程度を定量するには眼科・視能訓練士による専門評価や視野検査が必要です。
半側空間無視は、空間への注意の配分が問題になります
半側空間無視では、刺激が視覚系へ入っていても、反対側の空間へ注意を向け、探索し、行動へ結びつける過程が障害されます。身体の片側、身体近くの空間、遠くの空間、イメージ上の空間など、問題が現れる範囲も一定ではありません。
そのため、視野が同じ程度でも行動は異なります。同名半盲だけの人は、欠損を自覚して眼や頭を欠損側へ動かすことがあります。一方、半側空間無視が強い人では、見落としへの自覚が乏しく、探索そのものが偏る場合があります。ただし、この違いは典型像であり、観察だけで確定する基準ではありません。
二つは併存し、生活上の困難を大きくすることがあります
Cassidyらの前向き研究は、発症7日未満の右半球脳卒中44人を評価しました。半側空間無視と視野欠損の両方が20人、半側空間無視のみが7人、視野欠損のみが1人でした。両方がある群は、初期の行動性無視検査の成績が低い傾向でした。
対象が右半球脳卒中に限られた小規模研究であり、割合をすべての脳卒中者へ一般化することはできません。それでも、視野欠損と半側空間無視は排他的な二択ではないことを臨床で忘れないための資料になります。
よくある勘違い1:抹消課題が正常なら視野も正常、ではありません
星印抹消や線分抹消などは、半側空間無視を捉えるために使われます。しかし、紙面上の標的を探索できたことは、視野の各位置で刺激を検出できることと同じではありません。
課題中には眼球や頭部を自由に動かせます。欠損側へ十分に探索できれば、視野欠損があっても標的を見つけられる場合があります。反対に、視野が保たれていても、注意、理解、失語症、疲労、課題ルールの保持などの影響で抹消課題の成績が下がることがあります。
視野検査は中心を見続けた条件で刺激検出を確かめ、抹消課題は探索を含む空間性注意を確かめます。目的の違う検査を一つの結果にまとめないことが大切です。
よくある勘違い2:左へ声をかけ続ければ十分、ではありません
「左を見てください」という声かけで、その場の見落としが減ることがあります。ただし、外部から声をかけられたときだけ探索できる状態は、自立した代償とは区別します。
声かけを使うなら、どのタイミングで必要か、合図を減らしても開始できるか、座位から歩行へ変えても使えるかを確認します。最初は明確な合図を使い、視覚的な目印、自分で唱える手順、自然な探索へ段階的に移します。
一方向を闇雲に探させるのではなく、中央を基準に端まで探し、重要な対象を確認し、中央へ戻るなど、再現できる探索順序を作ります。読字と歩行では必要な探索範囲と速度が違うため、同じ練習を流用しません。
よくある勘違い3:ぶつからなくなれば視野が回復した、ではありません
視野欠損が残っていても、眼球運動、頭部運動、歩行速度の調整、環境配置によって衝突は減る可能性があります。これは生活上の重要な変化ですが、主に代償として説明されます。
一方、視野検査で欠損範囲が小さくなる場合は、視覚入力の回復を考える材料になります。Roweらの前向き多施設コホートでは、視覚的な問題が疑われて紹介された脳卒中者915人のうち479人に視野欠損がありました。追跡できた199人では、15人、7.5%が完全回復、78人、39%が部分回復、104人、52%は変化なしでした。
紹介を受けた集団であるため、52%という頻度を全脳卒中者の有病率として扱うことはできません。追跡脱落もあります。それでも、自然経過による視野の回復には個人差があり、探索行動の獲得と同じ指標で語れないことが分かります。
評価ではここを分ける:視野、注意、探索、生活の四段階です
評価は、机上検査を増やすことが目的ではありません。どの段階で情報が欠け、どの条件で行動が崩れるかを確かめるために行います。
| 評価する段階 | 確認すること | 解釈で注意すること |
|---|---|---|
| 視覚入力 | 視力、対座法、正式な視野検査、複視、眼位、眼球運動 | 対座法だけで欠損範囲を確定しない |
| 空間性注意 | 抹消課題、線分二等分、模写、日常行動 | 一つの机上課題が正常でも除外しない |
| 探索行動 | 最初の視線方向、欠損側への眼球・頭部運動、探索幅、見落とし後の修正 | 声かけありと自発的探索を分ける |
| 生活課題 | 読字、食事、更衣、車椅子操作、歩行、段差、屋外移動 | 静かな環境と二重課題を比較する |
1.まず、視力と眼球運動を置き去りにしません
見落としがあるとき、視野と注意だけに絞らないことが重要です。眼鏡が合っていない、白内障などの眼疾患がある、複視がある、眼球運動が制限されている、視線を保てないといった問題でも探索は崩れます。
本人が「ぼやける」「二重に見える」「目が疲れる」と話す場合は、視野欠損とは別の視覚問題を疑います。失語症があって言葉で表現しにくい場合は、顔をしかめる、片眼を閉じる、頭位を変える、近くへ寄るといった行動も記録します。
2.対座法では、注視が保てているかを確認します
検者と向き合い、中心を見てもらいながら周辺の刺激検出を左右で比べます。このとき、刺激へ眼を動かして追いかけていないか、理解や反応速度に左右差がないか、片眼ずつと両眼で所見が一致するかを見ます。
対座法は簡便ですが、検者の提示方法、刺激の大きさ、患者の注視、反応方法に影響されます。見落としが疑われる、生活上の危険がある、範囲を正確に知る必要がある場合は、専門的な視野評価へつなぎます。
3.半側空間無視は複数の課題とADLで確認します
抹消課題、線分二等分、模写は、それぞれ必要な注意と探索が異なります。一つだけで結論を出さず、可能ならCatherine Bergego Scaleのように生活行動を扱う尺度や、OTによる食事、更衣、移動の観察を組み合わせます。
左側の物を見落とすだけでなく、左上肢を更衣へ使わない、車椅子の左側を壁へ寄せすぎる、左から話しかけられたときの反応が遅いなど、身体と空間の関係を見ます。
4.静止課題から移動課題へ難易度を上げます
机上では、視線を動かす時間を十分に取れます。歩行では、身体を前へ進めながら障害物、床面、他者、目的地を同時に確認します。会話や物品運搬が加わると、探索に使える注意が減ります。
安全を確保したうえで、座位、立位、歩行、二重課題の順に同じ側の見落としが増えるかを確認します。

臨床で使うならこう考える:失敗する場面を一つずつ再現します
「左が見えにくい」という情報だけでは、課題を設計できません。どの課題で、どの刺激を、どの速度で見落とすかまで具体化します。
読字で行頭を飛ばす場合
まず、文字の大きさ、行間、明るさ、視力、複視を確認します。次に、行頭の位置を見つけられるか、読み進める途中で位置を失うか、縦書きと横書きで違うかを見ます。
行頭に色付きの目印を置く、指や定規で行を追う、短い文から始めるなどの代償手段を試します。ここで読む速度だけを追うと、飛ばし読みが増えることがあります。誤読数、行頭の見落とし、疲労も一緒に記録します。
歩行中に欠損側へぶつかる場合
障害物への衝突が、歩行開始直後か、速度が上がったときか、会話中か、方向転換時かを分けます。欠損側へ眼を動かしているか、頭部まで回しているか、探索後に進路を修正できるかを動画で確認すると仮説が明確になります。
歩行速度を一時的に下げ、探索の合図を入れて衝突が減るなら、探索へ使える時間が影響している可能性があります。ただし、麻痺側の支持性、感覚障害、バランス、半側空間無視も同時に評価します。
食事の片側を残す場合
視野欠損だけでなく、半側空間無視、食器の配置、皿と食物のコントラスト、上肢操作、食欲、嚥下、介助者の位置を確認します。皿を回すことは摂取を助ける代償ですが、それだけで自発的な探索が変わったとは言えません。
条件を一つ変え、見落とし数と自発的探索がどう変わるかを再評価します。複数の支援を同時に入れると、どの条件が有効だったか分からなくなります。
リハビリで設計すること:探索の型を生活課題へ移します
同名半盲への対応は、大きく三つに分けられます。
- 代償:眼球運動や頭部運動、課題手順を変えて欠損を補う
- 代替:プリズムなどで視覚情報の位置を変える
- 回復を狙う介入:欠損境界などへの反復刺激で視野機能の変化を狙う
臨床で行いやすいのは代償的な探索練習ですが、全員へ同じ方法を当てはめないことが大切です。
探索練習は、広さより順序を先に作ります
最初から広い空間を速く探させると、視線が散らばり、重要な対象を見落とすことがあります。中央、欠損側の端、重要な対象、中央というように、再現できる順序を短い課題で作ります。
次に、標的数を増やす、提示時間を短くする、背景を複雑にする、立位へ変える、歩行へ移す、会話を加えるという順で難易度を調整します。正確に探索できる条件を見つけてから、速度と環境の複雑さを上げます。
読字練習と移動練習を分けます
読字では小さな範囲を連続的に探索し、行を見失わずに次へ移る必要があります。移動では広い空間を見ながら、周辺刺激を早く検出し、進路を変えます。
de HaanらのRCTでは、同名性視野欠損がある49人を探索訓練群26人と待機群23人で比較しました。訓練後、周辺刺激の検出や障害物回避を含む移動関連課題には有利な変化が報告されましたが、読字、数え上げ、一般的な視覚探索課題には同様の変化がありませんでした。
この結果は、探索練習の効果が課題特異的である可能性を示します。歩行のための探索を練習したから、読字も同じように変わるとは限りません。
声かけは減らせるかまで確認します
初期には、欠損側を見る合図や視覚的な目印が役立つことがあります。しかし、常に介助者が「左」と言う条件だけでは、生活へ移りにくくなります。
外的な声かけから、本人が使う短いセルフトーク、視覚的アンカー、自発的な探索へ移します。合図なしで開始できる割合、見落とした後に自分で修正できる割合を記録すると、支援を減らす判断がしやすくなります。
プリズムは装着だけで終わらせません
プリズムは、欠損側の視覚情報を見える側へ移す代替手段です。視野欠損そのものを消す道具ではありません。適応には視力、眼位、複視、理解、生活目標などの確認が必要で、眼科・視能訓練士と連携して選びます。
Roweらの87人を対象とした三群パイロットRCTでは、プリズム、視覚探索訓練、情報提供を比較しました。26週までの視野面積に明確な群間差はなく、プリズム群では69.2%に主として頭痛などの関連有害事象が報告されました。パイロット研究であり、プリズム全般を否定する結果ではありませんが、装着しただけで生活上の安全が確保されるとは考えず、利益と負担を実課題で確かめる必要があります。

自宅や生活で気をつけること:安全確保と探索練習を同じにしません
自宅では、欠損側へ大切な物を置いて探す練習を行いたくなるかもしれません。しかし、薬、火、刃物、段差、車両など、安全に直結する対象を練習用に見つけにくくするべきではありません。
安全確保では、通路の障害物を減らす、照明を整える、床と段差のコントラストをつける、必要物品の位置を固定する、家族が欠損側から急に近づかないなど、環境側を調整します。探索練習は、転倒や衝突の危険を管理できる場面で別に行います。
生活では次の変化を記録すると、再評価へつなげやすくなります。
- どちら側で衝突や見落としが起きたか
- 明るさ、混雑、会話、疲労で増減したか
- 読み飛ばしや食べ残しが何回あったか
- 声かけなしで探索を開始できたか
- 頭痛、眼精疲労、ぼやけ、複視が出たか
- 本人が視野欠損と安全上の注意を説明できるか
運転の可否は、リハビリ室で障害物を避けられたことだけでは判断できません。正式な視野評価、認知・注意、運動機能、法的基準などを含むため、主治医と眼科を含む専門職へ相談します。
急に視野が欠けた、以前より欠損が広がった、激しい頭痛や新たな麻痺・言語症状を伴う場合は、通常の訓練を続けず緊急の医学的評価が必要です。
変化を見るアウトカム:身体機能と生活行動を並べます
同名半盲のアウトカムは、視野検査だけでも、衝突回数だけでも足りません。
| 目的 | アウトカム例 | 解釈で注意すること |
|---|---|---|
| 視野 | 自動視野計、動的視野検査、欠損範囲 | 眼球運動による代償と分ける |
| 探索 | 欠損側への最初の視線、探索幅、見落とし数、修正率 | 声かけの有無をそろえる |
| 読字 | 読む速度、誤読、行頭・行末の見落とし、疲労 | 速度だけで評価しない |
| 移動 | 障害物検出、衝突、歩行時間、二重課題での変化 | バランスや麻痺の影響も分ける |
| ADL | 食事、更衣、整容、物品探索、介助量 | 環境設定の違いを記録する |
| 参加・QOL | 外出範囲、趣味、NEI VFQ-25、BIVI-IQ | 本人の生活目標と結びつける |
たとえば、正式な視野欠損範囲は変わらなくても、欠損側への自発的な探索が増え、歩行中の障害物検出が安定し、家族の声かけが減ることがあります。これは代償による活動上の変化として価値があります。
反対に、視野検査の一部が変化しても、混雑した場所で衝突が続けば、生活課題への転移は十分ではありません。視野、探索、活動、参加を並べて、どの水準が変わったかを言葉にします。
論文からどこまで言えるか:探索訓練は期待だけで選びません
1.視覚障害のスクリーニングは全脳卒中者で検討されます
2025年のEuropean Stroke Organisationガイドラインは、脳卒中後の視覚問題を見つけるため、すべての脳卒中者に視覚スクリーニングを行うことを提案しています。視力、視野、眼球運動、半側空間無視、視知覚は別の領域として整理され、必要に応じて眼科系専門職と脳卒中チームが連携することを示しています。
このガイドラインはGRADE手法で作成されていますが、視覚リハビリの各介入には質の高い研究が少なく、専門家合意に基づく記述も含まれます。したがって、推奨の存在を個々の訓練方法の強い効果証明と同一視しません。
2.2019年Cochraneレビューでは根拠の確実性が課題でした
Pollockらの系統的レビューは20試験、無作為化された732人を含み、そのうち脳卒中者547人のデータを扱いました。代償的な探索訓練を対照または偽介入と比べた研究は4試験、193人でした。
視覚関連QOLには有利な可能性が示されましたが、視野、拡大ADL、読字、探索能力などでは明確な効果が確認されず、根拠の確実性は低い、または非常に低いと評価されました。プリズムについてもADLやQOLへの結論は不確かで、軽い有害事象が増える可能性が示されました。
探索訓練は候補になりますが、視野を広げる方法として一律に説明できる根拠ではありません。
3.2025年SEARCH試験では偽訓練との差が確認されませんでした
SEARCH試験は英国34施設で行われた二重盲検の多施設RCTです。発症4週超から26週未満で、安定した同名半盲が確認された成人を、視覚探索訓練と偽訓練へ割り付けました。解析対象は158人で、いずれも1日30分以上、週7日、6週間の紙面課題を行う設定でした。
26週時点の主要アウトカムであるNEI VFQ-25は、ベースラインと半盲の種類を調整した群間平均差がマイナス4.04点、95%信頼区間マイナス9.45から1.36、p値0.141でした。主要・副次アウトカムのいずれにも明確な群間差はありませんでした。眼精疲労、頭痛、ぼやけなどの有害事象も報告されています。
両群で複数のアウトカムが変化しており、研究者は情報提供や臨床家との接触、偽訓練自体の作用が影響した可能性を挙げています。紙面の探索訓練を追加すれば必ず生活上の差が出る、とは言えない結果です。
4.課題特異性を前提にアウトカムを選びます
de HaanらのRCTでは移動関連課題に有利な結果が報告されましたが、SEARCH試験では偽訓練を上回る差が確認されませんでした。対象、発症時期、訓練内容、対照条件、アウトカムが異なるため、単純に矛盾と片付けることはできません。
現時点では、視覚探索訓練を行うなら、本人が困っている読字、移動、食事などの課題へ合わせ、同じ課題の見落とし、速度、安全性、介助量を追うことが妥当です。効果が乏しい場合は、訓練量だけを増やさず、視野診断、半側空間無視、複視、視力、課題難易度を見直します。
ぱらゴリ的な見立て:見落とした側より、見落とした条件を見ます
臨床で見落としやすいのは、「いつも左へぶつかる」という結果だけを記録し、なぜその場面で探索が崩れたかを分けないことです。
ぱらゴリ的には、次の順で整理します。
- 見落としが起きた課題、刺激、位置、速度を特定する
- 視力、視野、眼球運動、空間性注意の仮説を分ける
- 静止、移動、二重課題で見落としがどう変わるか順位づけする
- 視野評価や環境調整で仮説を一時的に確かめる
- 読字、食事、歩行に必要な探索能力を分解する
- 正確性を保てる難易度で探索課題を設定する
- 外的な声かけを減らし、自発的な探索へ移す
- 視野、見落とし、衝突、介助量、生活範囲を再評価する
「左を見る練習」から始めず、視野、注意、課題条件を分けてから、必要な探索を設計します。
PTは歩行、方向転換、段差、二重課題で探索が崩れる条件を評価できます。OTは読字、食事、更衣、物品操作、環境設定と空間性注意を詳しく見られます。医師、眼科医、視能訓練士、看護師、神経心理職と情報をつなぎ、視野欠損と半側空間無視を一つの言葉でまとめないことが重要です。
最後にもう一度、要点を整理します
- 同名半盲は、両眼の同じ側の視野が欠ける状態です。
- 半側空間無視は、空間へ注意を向けて行動する過程の障害です。
- 同名半盲と半側空間無視は併存することがあります。
- 対座法は入口であり、欠損範囲の確認には専門的な視野評価が必要です。
- 視野、注意、探索、生活課題の四段階で評価します。
- 探索が上手になったことと、視野欠損が回復したことを区別します。
- 読字と移動では必要な探索が違うため、課題別に練習します。
- 視覚探索訓練の研究結果は一貫しておらず、本人の課題とアウトカムに合わせて再評価します。
同じ側を見落とすという一つの行動にも、複数の原因があります。視野障害と注意障害を分け、どの条件で探索が崩れるかを確かめることで、練習と安全対策の役割が明確になります。
参考文献
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