- 「一人で立てます」と言うのに、立つと崩れる場面で何を見ますか?
- 結論!「分かっていますか?」ではなく四つの場面をそろえます
- なぜ「動けたつもり」が残るのか:意図と結果の照合がずれる可能性があります
- よくある勘違い1:本人が認めないのは「頑固だから」ではありません
- よくある勘違い2:半側空間無視と病態失認は同じではありません
- よくある勘違い3:麻痺を自発的に話さないだけでは診断できません
- 評価ではここを分ける:六つの層で記録します
- 臨床で使うならこう考える:安全と学習を対立させません
- リハビリで設計すること:予測、試行、フィードバック、選択、再試行
- 代償と回復を分ける:安全行動は大切ですが、運動回復とは別です
- 自宅や生活で気をつけること:家族の説得だけに頼りません
- 変化を見るアウトカム:認識の点数だけで終わりません
- 論文からどこまで言えるか:自然経過はありますが、待つだけでは安全を守れません
- Active・ぱらゴリ的な見立て:本人の言葉を責めず、情報の入口を探します
- 最後にもう一度、要点を整理します
- 参考文献
「一人で立てます」と言うのに、立つと崩れる場面で何を見ますか?
脳卒中後、明らかな片麻痺があるのに「手は動く」「一人で歩ける」と話す人がいます。移乗のたびに介助が必要でも、ナースコールを使わず立とうとすることがあります。若手PT・OTは、本人が危険を分かっていないように見えると、「説明が入らない」「頑固」「やる気が先走っている」と受け取りやすくなります。
しかし、脳卒中後には、自分の運動障害を認識しにくい、または実際より軽く見積もる病態失認が起こることがあります。とくに運動麻痺に対する病態失認は、anosognosia for hemiplegiaと呼ばれます。これは本人が意図的に嘘をついている状態とも、単なる心理的な否認とも同じではありません。
結論は、本人の発言を訂正する前に、何を予測し、実際に何ができ、結果をどう受け止め、次の場面で安全行動へつなげられるかを分けて評価することです。
病態失認は、運動、感覚、視覚、注意、ADLなど領域ごとに現れ方が異なります。座位では気づけても、立位では気づけないことがあります。課題直後は理解できても、次の移乗では元の判断へ戻ることもあります。したがって、一回の質問や一つの尺度だけで「自覚あり」「自覚なし」と決めると、必要な支援を外します。
この記事では、病態失認を半側空間無視、失語症、記憶障害、せん妄、心理的な否認と区別しながら、PT・OTが安全を守って行える観察、課題設定、再評価を整理します。

結論!「分かっていますか?」ではなく四つの場面をそろえます
病態失認を疑ったときは、次の四つを同じ課題でそろえます。
- 実行前に、本人がどこまでできると予測したかを確認します。
- 十分に安全を確保したうえで、実際の動作を観察します。
- 実行直後に、成功した点、介助が必要だった点を本人がどう説明するかを確認します。
- 次の試行で、介助を求める、手すりを使う、速度を落とすなどの安全行動へつながるかを確認します。
例えば、立ち上がり前に「手すりなしで立てると思いますか」「介助は必要ですか」と尋ねます。実際には骨盤を持ち上げられず、介助を受けたとします。その直後に「一人でできましたか」「どこで手伝いが必要でしたか」と振り返ります。さらに次の試行で、本人が手すりを選ぶか、介助を求めるかを見ます。
言葉で障害を認めることと、生活場面で安全な選択をできることは同じではありません。
評価の目的は、本人に「できない」と言わせることではありません。転倒や衝突を防ぎながら、本人が利用できる情報経路を探し、現実的な目標と課題を一緒に設計することです。
なぜ「動けたつもり」が残るのか:意図と結果の照合がずれる可能性があります
運動は、命令を出して終わりではありません
動作を行うとき、脳は目標に向けて運動を準備し、どのような結果になるかを予測します。その後、視覚、固有感覚、触覚、前庭感覚などから入る情報と、予測した結果を照合します。固有感覚とは、関節の位置や動きを知る感覚です。
運動麻痺に対する病態失認では、運動を行う意図や予測が残る一方、実際には動かなかったという情報が十分に更新されない可能性が論じられています。ただし、病態失認を一つの回路だけで説明することはできません。
右半球脳卒中で明らかな左半身の運動障害がある58人を追った前向き研究では、病態失認は発症3日で32%、1週で18%、6か月で5%でした。急性期では固有感覚低下、亜急性期では半側空間無視や見当識障害などとの関連が示され、関連する要素は時期によって異なりました。文献3
この数字は、右半球病変で明らかな運動障害がある一集団の自然経過です。すべての脳卒中者に同じ割合で生じるとも、時間が経てば全員で消えるとも言えません。
病態失認は、感覚、注意、身体表象、運動予測、結果の監視、記憶などが異なる組み合わせで関わる多面的な状態と考えられています。
脳画像の部位だけで、個人の自己認識は決められません
病態失認は右半球の島皮質、前頭葉、頭頂側頭領域、視床などとの関連が多く報告されてきました。しかし、病変部位だけを見て「この人は病態失認がある」とは判断できません。病変は複数領域に広がることがあり、同じような画像所見でも臨床像が異なります。
さらに、2025年の系統的レビューは、左半球病変後の運動障害に対する病態失認も報告されていると整理しました。採用された25研究では、左半球病変例の頻度が3.6%から50%と大きく異なりました。文献7
この幅は、評価法、診断基準、対象、失語症例の除外などが研究ごとに違う影響を受けています。右半球病変で多いという知識を、左半球病変なら確認不要という結論へ変えないでください。
よくある勘違い1:本人が認めないのは「頑固だから」ではありません
「手が動かないですよ」と説明しても、本人が「動いている」と答えることがあります。ここで言い争いになると、本人の尊厳を傷つけ、課題への参加を妨げます。スタッフ側も、正しい説明を繰り返せば理解が定着するはずだと考え、同じやり取りを続けてしまいます。
病態失認では、本人が利用している内部情報と、観察者が見ている結果が一致していない可能性があります。そのため、口頭説明の量を増やすだけでは足りないことがあります。
一方、障害を言葉にしない理由は病態失認だけではありません。診断への衝撃、恥ずかしさ、希望を守りたい気持ち、質問の理解困難、失語症、記憶障害、文化的背景、医療者との関係も影響します。
病態失認と心理的な否認は、外から同じように見えることがあっても、同義ではありません。判断に迷うときは、医師、神経心理職、言語聴覚士、看護師を含めて情報を統合します。
よくある勘違い2:半側空間無視と病態失認は同じではありません
半側空間無視は、脳損傷の反対側の空間にある刺激へ注意を向けたり、反応したりすることが難しくなる状態です。運動麻痺に対する病態失認は、自分の運動障害を認識しにくい状態です。両者は併存しやすい一方、片方だけがみられることもあります。
例えば、左側の皿を見落とし、車椅子の左側をぶつける人が、左上肢が動かないことは理解している場合があります。反対に、探索課題では左側へ注意を向けられても、「左手は動く」と判断する場合があります。
Vocatらの研究でも、半側空間無視と運動麻痺への病態失認は関連しましたが、運動以外の課題に対する予測や、無視への自己認識とは同じではないことが示されました。文献3
無視があるか、運動障害への気づきがあるか、ADL上の危険へ気づけるかを別々に確認します。
よくある勘違い3:麻痺を自発的に話さないだけでは診断できません
「困っていることはありますか」と聞いたとき、本人が肩の痛みや話しにくさだけを述べ、麻痺に触れないことがあります。これだけで病態失認と決めることはできません。本人にとって別の症状の負担が大きい可能性があるからです。
急性期脳卒中で片麻痺または片不全麻痺を呈した128人の研究では、一般的な質問で麻痺を自発的に述べなくても、手足の力を直接尋ねると認める人が多くいました。より保守的な診断基準を用いると、非選択の急性期片麻痺集団での頻度は10%から18%と推定されました。文献2
自由回答、直接質問、予測、実際の遂行、遂行後の評価を一つずつ確認してください。
評価ではここを分ける:六つの層で記録します
病態失認は、正式には医師や神経心理領域を含む多職種で評価します。PT・OTは診断名を独断でつけるのではなく、動作と生活場面で観察した事実を再現可能な形で共有します。
| 層 | 確認すること | 臨床での問い |
|---|---|---|
| 1 全身状態 | 急な変化、覚醒、せん妄、感染、薬剤、再発症状 | 昨日までと同じ判断ですか |
| 2 理解と表出 | 失語症、構音障害、発語失行、質問理解 | 質問方法を変えても同じ答えですか |
| 3 障害の領域 | 運動、感覚、視野、注意、記憶、ADL | 何に気づき、何に気づきませんか |
| 4 実行前予測 | 成否、必要な介助、危険の見積もり | 一人でどこまでできると予測しますか |
| 5 実際の遂行 | 麻痺、感覚、姿勢制御、道具、環境 | どこで介助や合図が必要でしたか |
| 6 結果と次の行動 | 振り返り、保持、別場面への一般化 | 次は何を変えますか |

まず急な変化を除外します
以前は介助を求めていた人が、急に危険行動を繰り返すようになった場合、慢性期の性格変化や病態失認で済ませません。新しい麻痺、しびれ、顔面の左右差、言語障害、視野症状、強い頭痛、意識変化があれば、再発脳卒中などを含む緊急評価が必要です。
発熱、脱水、低血糖、低酸素、薬剤変更、睡眠不足、せん妄も、注意や判断を変える可能性があります。病態失認の評価は、状態が安定しているかを確認してから行います。
質問が伝わっているかを確認します
失語症があると、本人が質問を理解できない、適切な言葉を選べない、複雑な選択肢を扱えないことがあります。返答が現実と違うだけで、病態失認と決めません。
短い文、二択、実物、写真、ジェスチャー、指さしを使い、言語聴覚士と方法をそろえます。「できますか」という抽象的な質問だけでなく、「この椅子から手すりなしで立てますか」「左手でこのコップを持てますか」のように課題を具体化します。
自己評価と他者評価の差は入口です
VATA-mは、運動課題に関する本人評価と支援者評価を比較する方法です。文献5 VATA-ADLは、日常生活課題に対する本人と支援者の評価を比較します。亜急性期脳卒中80人を含む尺度研究では、39人が能力を過大評価し、9人が過小評価しました。文献6
この結果は、自己評価のずれが「できると思いすぎる」方向だけではないことを示します。支援者の評価にも、過介助、期待、観察場面の違いが影響します。
本人と支援者の点差を診断の答えにせず、実際の課題遂行、介助量、危険行動と照合します。
ベッド上の返答を、歩行の判断へ一般化しません
病態失認は課題や場面に依存します。臥位で上肢を見ながらなら麻痺を認めても、歩行前には一人で行けると判断することがあります。食事では支援を求められても、トイレではナースコールを使わないことがあります。
評価課題は、肩屈曲や握りだけで終わらせず、本人の生活で危険と参加に関係する場面へ広げます。
- 起き上がりと端座位保持
- 立ち上がりと着座
- ベッド、車椅子、便座間の移乗
- 杖、歩行器、装具を使う歩行
- 麻痺側上肢を巻き込む更衣や整容
- 車椅子のブレーキ、フットサポート、周囲の確認
- 調理、服薬、入浴、屋外移動など退院後の課題
各課題で、予測、実行、直後の評価、次の行動を同じ書式で記録します。
臨床で使うならこう考える:安全と学習を対立させません
病態失認が疑われる人に、危険な失敗を経験させて気づかせようとしてはいけません。転倒、肩の損傷、衝突、皮膚損傷につながる課題は、十分な介助、環境調整、ハーネスなど施設基準に沿った安全対策のもとで行います。
一方、すべてを先回りして介助すると、本人が予測と結果を比べる機会を失います。重要なのは、失敗させることではなく、安全な範囲で本人の予測と実際の結果を比較できる情報をつくることです。
例えば立ち上がりなら、膝折れや転倒が起きないよう介助者を配置し、必要なら手すりを準備します。そのうえで「何回で立てそうですか」「手すりは必要ですか」と予測を確認します。動作後は「立ち上がりのどこで支えが必要でしたか」と、観察可能な事実へ戻します。
評価者は「ほら、できなかったでしょう」と結論を押しつけません。「殿部が椅子から離れるところで私の支えが入りました。次は手すりを使う方法と、座面を高くする方法のどちらを試しますか」と、次の選択へつなげます。
気づきを測るだけで終わらず、介助を求める、道具を選ぶ、合図を待つという安全行動まで評価します。
リハビリで設計すること:予測、試行、フィードバック、選択、再試行
課題は次の五段階で設計すると、どこで情報が止まっているかを見やすくなります。
- 予測する:できる範囲、必要な支援、危険を本人が言葉や指さしで選びます。
- 安全に試す:難易度を下げ、介助と環境を整えて実行します。
- 事実を振り返る:成功、介助、エラーを短く具体的に確認します。
- 次の方法を選ぶ:手すり、姿勢、速度、道具、合図から一つを選びます。
- 再試行する:選んだ方法が安全性と遂行をどう変えたかを同じ条件で確かめます。

課題は小さくし、結果を曖昧にしません
「歩けるか」という大きな問いではなく、「平行棒内を3メートル、装具と介助ありで歩けるか」のように条件を固定します。成功基準も、「転倒しなかった」だけでは不十分です。必要な介助量、膝折れ、足部の引っかかり、方向修正、停止合図への反応を決めます。
長い課題では、注意、疲労、記憶の影響が混ざります。短い一課題で予測と結果を比べ、記録を残します。別の日、別の介助者、別の環境でも再現するかを確認します。
動画フィードバックは候補ですが、標準介入ではありません
本人の同意を得て、安全な動作を録画し、少し時間を置いて第三者視点で見る方法が考えられます。2009年には、重度の運動麻痺への病態失認を持つ一人が、自分の動作映像を見た後に認識の変化を示した症例報告があります。文献10
ただし、これは一症例です。動画を見せれば同じ変化が起こるとは言えません。映像は本人に衝撃や羞恥を与える可能性があります。撮影と閲覧の同意、保存方法、見るタイミング、説明者、途中で中止する権利を確認します。
エラー分析も、小規模研究から慎重に考えます
慢性期の脳卒中4人を対象に、動作を試み、方法とエラーを一緒に分析する訓練を行った研究では、4人全員で運動障害への気づきの指標が変化しました。文献9
対照群のない4人の研究であり、効果を確定できません。臨床で応用するなら、本人を失敗へ追い込むのではなく、安全な課題、短い振り返り、一つの変更、再試行を守ります。
2025年の介入研究レビューは、自己観察、エラーに基づく学習、感覚運動再調整、神経調整など9研究を整理しましたが、多くは症例報告や小規模研究で、評価尺度も不均一でした。文献8
有望という表現と、標準的な効果が確立しているという表現を混同しないでください。
代償と回復を分ける:安全行動は大切ですが、運動回復とは別です
手すりを使う、介助を求める、車椅子を選ぶ、麻痺側上肢を保護することは、危険を減らし生活を成立させる代償戦略です。これらが使えるようになっても、麻痺した手足の随意運動そのものが回復したとは限りません。
一方、運動課題を反復し、関節運動や支持能力が変化しても、本人が危険を見積もれず単独で動こうとすれば、生活上の安全は確保できません。
運動機能、障害への気づき、代償戦略、安全な行動を別々のアウトカムとして記録します。
この区別がないと、車椅子を安全に使えたことを歩行回復と呼んだり、筋力が変化したことを自己認識の変化と呼んだりします。評価と介入のつながりが曖昧になります。
自宅や生活で気をつけること:家族の説得だけに頼りません
退院前には、病名の説明だけでなく、どの場面で何が危険かを家族と共有します。
- 一人で立つ、歩く、階段を使う場面
- トイレや入浴で急いで動く場面
- 車椅子のブレーキやフットサポートを忘れる場面
- 麻痺側上肢を身体の下へ巻き込む場面
- 調理器具、熱源、刃物を扱う場面
- 服薬、金銭、外出判断など認知面が関わる場面
環境側では、手すり、動線、ベッド高、椅子、照明、ナースコールや呼び鈴、歩行補助具の位置を整えます。本人の判断にばらつきがある時間帯、疲労、騒音、急ぎやすい状況も記録します。
家族は「危ないからやめて」と何度も説得する役割だけを担う必要はありません。「今は一人ではなく一緒に行う」「立つ前に呼び鈴を押す」「装具をつけてから歩く」のように、短く同じ合図へそろえます。
本人を監視する仕組みではなく、本人が成功しやすい安全手順を環境へ埋め込みます。
急に判断が変わった、新しい麻痺や言語障害が出た、意識が悪い、転倒して頭を打った場合は、病態失認の揺れと考えず医療機関へ相談します。
変化を見るアウトカム:認識の点数だけで終わりません
再評価では、次の六領域を追います。
- 自己評価と実際の遂行の差
- 実行後に介助やエラーを説明できるか
- 次の試行で安全な方法を選べるか
- 手順を時間を置いて保持できるか
- 別の課題、環境、介助者でも使えるか
- 転倒未遂、衝突、無断離席、危険な上肢の巻き込みがどう推移したか
あわせて、麻痺の程度、感覚、半側空間無視、注意、見当識、記憶、失語症、ADL、必要介助量を測ります。病態失認の点数が変わっても、実際の安全行動が変わらなければ支援を急に減らしません。
発症約1か月後の片麻痺を伴う脳卒中46人を調べた観察研究では、病態失認がある群で、退院時に安全手順を保持しにくいことや、追跡時にADL支援を必要とすることが報告されました。文献4
これは小規模な観察研究です。病態失認が転帰を直接生じさせたとは言えません。しかし、自己認識と安全行動を退院判断の一部として記録する理由になります。
支援を減らす基準は「分かりましたと言えたか」ではなく、必要な場面で安全手順を再現できたかです。
論文からどこまで言えるか:自然経過はありますが、待つだけでは安全を守れません
2007年の系統的レビューでは、脳卒中後の運動麻痺に対する病態失認の頻度は7%から77%と大きくばらつきました。文献1 研究ごとの診断基準、対象、評価時期が異なるため、この範囲をそのまま臨床の発生率として扱えません。
2010年の前向き研究では、発症3日から6か月にかけて病態失認を示す人の割合が小さくなりました。文献3 ただし、割合が減ることと、目の前の人がいつ安全判断を獲得するかは別です。慢性期にも残る人がいます。
介入については、2025年の系統的レビューに採用されたのは9研究で、症例報告や小規模研究が多く含まれました。文献8 自己観察やエラー分析は候補ですが、誰に、どの時期に、どの頻度で行えば生活上の安全へつながるかは確定していません。
研究の不確実性は、何もしない理由ではなく、安全、評価、仮説、短い試行、再評価を丁寧に分ける理由です。
Active・ぱらゴリ的な見立て:本人の言葉を責めず、情報の入口を探します
臨床で見落としやすいのは、「できると言った」という発言だけを問題にすることです。必要なのは、どの課題で予測と結果がずれ、どのフィードバックなら利用でき、次の安全行動へどこまで移せるかを見つけることです。
Activeの8ステップへ当てはめると、次の順で考えます。
- 移乗、歩行、更衣など、予測と実際がずれる課題を特定します。
- 病態失認だけでなく、麻痺、感覚、無視、失語症、注意、記憶、全身状態を原因候補にします。
- 転倒や損傷の危険、生活頻度、本人の目標から優先順位をつけます。
- 手すり、介助、道具、課題の短縮で安全な条件を一時的に再現します。
- 予測、結果確認、手順保持、支援要請のどの能力が必要かを分析します。
- 予測、試行、振り返り、方法選択、再試行を一つの課題にします。
- 尊厳と疲労を守り、難易度が適切な範囲で反復します。
- 自己評価の差、介助量、安全行動、別場面への一般化を再評価します。
目的は本人に障害を認めさせることではなく、必要な支援を選び、安全に意味のある活動へ参加できる条件を増やすことです。
PT・OTだけで完結させず、医師、看護師、言語聴覚士、神経心理職、家族と、同じ課題、同じ合図、同じ安全基準を共有します。本人の返答、実際の遂行、介助量、振り返り、次の行動を分けて記録すれば、単なる印象ではなく臨床推論として引き継げます。
最後にもう一度、要点を整理します
- 明らかな運動障害を認識しにくい状態を、性格や非協力だけで説明しません。
- 病態失認、半側空間無視、失語症、記憶障害、せん妄、心理的否認を分けます。
- 自由回答だけでなく、直接質問、実行前予測、実際の遂行、実行後評価をそろえます。
- 運動、感覚、視覚、注意、ADLの自己認識を領域ごとに確認します。
- 安全な範囲で予測と結果を比べ、次の方法を本人と選びます。
- 動画やエラー分析は候補ですが、効果が確立した万能な方法とは説明しません。
- 手すりや支援要請という代償戦略と、麻痺した手足の運動回復を分けます。
- 支援を減らす前に、別の場面でも安全手順を再現できるかを確認します。
「本人は分かっていない」で止まらず、「どの情報なら使え、次の安全行動へどうつながるか」まで評価してください。


参考文献
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