脳卒中後の階段昇降:昇りと降りで必要な能力を分けて評価する【若手PT・OT向け】

歩行
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  1. 平地は歩けるのに、階段だけ怖い理由を説明できますか?
  2. 結論!「昇れたか」より、どの条件で何が崩れたかを見ます
  3. なぜそう見えるのか:昇りは重心を上げ、降りは落下を制御します
    1. 足を上げる前から階段は始まっています
    2. 段へ置いた足の深さが次の支持を変えます
  4. よくある勘違い:決まった順序を守れば安全とは限りません
  5. もう一つの勘違い:手すりを使わないことが回復ではありません
  6. 評価ではここを分ける:昇り、降り、接近、踊り場を別に見ます
    1. まず環境条件をそろえます
    2. 昇りで見るポイント
    3. 降りで見るポイント
    4. 身体機能を課題と結びつけます
  7. 臨床で使うならこう考える:条件を一つずつ変えて原因候補を絞ります
    1. 段を低くすると変わるか
    2. 手すりの量を変えると変わるか
    3. 先導脚を変えると変わるか
    4. 一段だけならできるか
    5. 装具条件で変わるか
  8. リハビリで設計すること:一段の反復から生活の連続場面へ広げます
    1. 準備となる能力を扱います
    2. 二足一段を安全戦略として使います
    3. 一段目、連続、踊り場をつなげます
    4. 速さは安全と再現性のあとに加えます
  9. 論文から言えること:練習効果の可能性はあるが、確実性は低いです
  10. 代償と回復を分ける:見た目の対称性だけで判断しません
  11. 生活上の注意:自宅の階段は訓練室と同じではありません
  12. 変化を見るアウトカム:時間だけでなく安全性と生活範囲を追います
    1. 遂行結果
    2. 介助と代償
    3. 身体負荷と主観
    4. 生活への影響
  13. 論文からどこまで言えるか
    1. 言えること
    2. まだ言い切れないこと
  14. ぱらゴリ的な見立て:階段を「一段の成功」ではなく役割の連鎖で見ます
  15. 最後にもう一度、要点を整理します
  16. 参考文献

平地は歩けるのに、階段だけ怖い理由を説明できますか?

病棟の廊下は一人で歩けるのに、階段の前では足が止まる。昇りでは麻痺側の足を上段へ運べても、身体を引き上げられない。降りでは足を出せるものの、膝が急に曲がり、着地が強くなる。脳卒中後の階段昇降では、平地歩行とは異なる困りごとが現れます。

若手PT・OTが迷いやすいのは、階段を一つの能力として扱うことです。しかし、昇りと降りでは身体重心の動かし方、筋の働き方、必要な視覚情報、恐怖への対応が異なります。さらに、一段目へ入る場面、連続して進む場面、踊り場で向きを変える場面も別の課題です。

「非麻痺側から昇り、麻痺側から降りる」という順序を覚えるだけでは、なぜその方法が安全なのか、どの条件なら交互昇降を目指せるのか、手すりをどこまで使うべきかは分かりません。

階段昇降では、昇りと降り、先導する脚、手すりの有無、一段昇降と連続昇降を分けて評価します。

この記事では、階段で必要になる力学的条件を整理し、よくある代償、評価項目、課題の段階づけ、生活上の安全確認、アウトカムまでつなげます。

結論!「昇れたか」より、どの条件で何が崩れたかを見ます

階段昇降を評価するときは、所要時間だけで合否を決めません。少なくとも次の条件を記録します。

  1. 昇りか降りか
  2. 麻痺側と非麻痺側のどちらを先に出したか
  3. 一足一段か、二足一段か
  4. 手すり、杖、介助をどの程度使ったか
  5. 足部を段へ十分に置けたか
  6. 膝折れ、反張膝、骨盤挙上、体幹側屈が出たか
  7. 停止、踏み外し、足の引っかかりがあったか
  8. 疲労や恐怖がどの段階で増えたか

階段の成否は、筋力だけでなく、足部を置く準備、支持脚で身体を運ぶ能力、降りる速度を制御する能力の組み合わせで決まります。

平地歩行が可能でも、階段で必要になる可動域や支持モーメント、片脚支持時間を満たすとは限りません。反対に、二足一段と手すりで安全に昇降できる方へ、見た目の対称性だけを理由に交互昇降を急がせる必要もありません。

なぜそう見えるのか:昇りは重心を上げ、降りは落下を制御します

階段の昇りでは、足を段の高さまで持ち上げ、前方かつ上方へ身体重心を移動させます。先に置いた脚には、股関節と膝関節を伸ばし、足関節を介して身体を上段へ運ぶ働きが必要です。後ろの脚による蹴り出しも加わります。

降りでは、身体重心を前下方へ移しながら、支持脚が急に崩れないよう制御します。筋が短くなりながら力を出す働きだけでなく、張力を保ちながら長くなる遠心性収縮が重要です。次の段へ足を下ろす間、支持脚で身体を支え、着地位置と段差を視覚で捉える必要があります。

昇りの失敗は「身体を持ち上げられない」、降りの失敗は「身体が落ちる速度を抑えられない」と表れることがあります。

もちろん、この二分だけで決まるわけではありません。昇りでも着地直後に膝を制御し、降りでも足部を段から抜くための準備が必要です。大切なのは、同じ膝の不安定さに見えても、昇りと降りで必要な筋出力の方向とタイミングが異なる点です。

足を上げる前から階段は始まっています

一段目へ入るには、段差までの距離を調整し、どちらの脚から出すか決め、支持側へ重心を移す必要があります。段の直前で歩幅が合わなければ、最後の一歩が小さくなったり、足踏みして位置を直したりします。

この接近の問題を見ず、一段目だけ練習すると、実際の住宅や駅で同じ失敗が繰り返されます。評価では、平地から階段へ近づく場面も含めます。

段へ置いた足の深さが次の支持を変えます

前足部だけが段へ乗ると、踵が段外へ残り、支持基底面が小さくなります。足関節背屈の不足、股関節屈曲の不足、つま先の引っかかりを避ける焦り、段を見ないことなどが関与します。

一方、足を深く置こうとして骨盤を大きく引き上げたり、体幹を反対側へ傾けたりする場合もあります。足が乗った結果だけでなく、どう運んだかを観察します。

階段昇降は昇りと降りで身体の役割が異なる

よくある勘違い:決まった順序を守れば安全とは限りません

二足一段では、一般に昇りは非麻痺側を先に、降りは麻痺側を先に出す方法が使われます。昇りでより支持しやすい脚を上段へ置き、降りでより支持しやすい脚を上段に残す考え方です。

ただし、これは全員に固定する規則ではありません。非麻痺側にも変形性膝関節症や疼痛がある、麻痺側の支持は可能だが振り出しが難しい、手すり位置が片側だけ、失行や注意障害で手順が複雑になるなど、条件は人によって異なります。

先導脚の選択は暗記させる規則ではなく、どちらの脚をどの役割で使うと安全性と自立度を保てるかという臨床判断です。

介助下で両方向を試し、疼痛、膝の制御、足部クリアランス、手順の再現性を比較します。住宅の手すり位置と階段形状も確認し、訓練室だけで成立する順序にしません。

もう一つの勘違い:手すりを使わないことが回復ではありません

手すりは支持基底面を実質的に広げ、バランスを補い、下肢へ必要な負荷を調整する手段です。手すりを使って安全に生活範囲が広がるなら、その代償には明確な価値があります。

NovakとBrouwerは、慢性期脳卒中者10人と年齢・性別を合わせた対照者10人を対象に、手すりありとなしの階段昇降を三次元動作解析で比較しました。脳卒中者では麻痺側のピーク伸展モーメントが小さく、麻痺側股関節外転モーメントも小さい傾向でした。また手すり使用は、麻痺側のピークモーメントを下げ、左右差を大きくする傾向を示しました。

これは小規模なパイロット研究であり、手すりが悪いことを示す結果ではありません。手すりによって下肢負荷を減らし、課題を成立させた可能性があります。

手すりで昇降できたことは生活上の達成ですが、下肢支持能力が変化した証明とは分けて記録します。

評価ではここを分ける:昇り、降り、接近、踊り場を別に見ます

まず環境条件をそろえます

階段の評価値は、段の高さと奥行き、段数、手すりの高さと位置、靴、杖、照明によって変わります。再評価では同じ条件をそろえます。

  • 段の高さと奥行き
  • 段数と踊り場の有無
  • 手すりの左右、片側か両側か
  • 靴、装具、杖の種類
  • 見守り、軽介助、身体介助の程度
  • 一足一段か二足一段か
  • 本人が選んだ先導脚と指示した先導脚

時間を測る場合は、開始と終了の位置、昇りだけか往復か、方向転換を含むかを明記します。異なる階段で測った秒数をそのまま比較しません。

昇りで見るポイント

  • つま先が段鼻へ接触しないか
  • 足底のどこまで段へ置けたか
  • 先導脚へ重心を移せるか
  • 股関節と膝関節の伸展で身体を上げられるか
  • 体幹前傾や手すりの引き込みに頼りすぎていないか
  • 後ろの脚を次の段へ運べるか
  • 一段目と連続場面で動作が変わらないか

上段へ足を置けても、重心が後ろに残れば身体を持ち上げられません。反対に、体幹前傾と上肢の引き込みで昇れても、下肢へどの程度負荷したかは別に評価します。

降りで見るポイント

  • 支持脚の膝が急に屈曲しないか
  • 膝を伸ばし固めたまま骨盤を落としていないか
  • 下ろす足が段鼻へ引っかからないか
  • 足部を次の段へ静かに置けるか
  • 支持脚の股関節外転で側方安定性を保てるか
  • 視線が段だけに固定され、周囲を見失っていないか
  • 恐怖で身体が後方へ残っていないか

降りで膝を伸ばしたまま身体を横へ逃がす動きは、膝屈曲の遠心性制御を避ける代償かもしれません。膝だけを曲げる指示ではなく、痛み、可動域、筋出力、恐怖、支持面を確認します。

身体機能を課題と結びつけます

階段で困っているからといって、すべての下肢筋を均等に測る必要はありません。観察した失敗と関連しそうな機能から優先します。

階段での所見 原因候補 確認する評価
つま先が段鼻へ当たる 股関節・膝関節屈曲不足、足関節背屈不足、タイミング 関節可動域、選択的運動、装具条件
上段へ乗った後に止まる 膝伸展・股関節伸展不足、重心移動不足、恐怖 筋力、立ち上がり、ステップアップ、支持感覚
降りで膝が急に曲がる 膝伸展筋の遠心性制御不足、感覚低下、速度過大 低い段でのステップダウン、触覚・位置覚
骨盤を大きく引き上げる 足部クリアランス不足、屈曲共同運動の不足、装具制限 振り出し、段高変更、装具設定
体幹が強く横へ傾く 股関節外転筋の支持不足、重心移動戦略、疼痛 片脚支持、側方ステップ、痛み
手順が段ごとに変わる 注意、失行、記憶、疲労 短い指示、視覚表示、反復再現性

筋力値と階段動作を直接結びつけず、条件を一つ変えたときに問題所見がどう変わるかで仮説を確かめます。

階段昇降は接近・一段目・連続・踊り場の4場面で見る

臨床で使うならこう考える:条件を一つずつ変えて原因候補を絞ります

階段で不安定なとき、すぐに反復回数を増やすと、強い手すり依存や体幹代償も一緒に反復する可能性があります。まず安全を確保し、条件を一つずつ変えます。

段を低くすると変わるか

低い段で足部クリアランスや膝の制御が安定するなら、現状の能力に対して段高が大きすぎた可能性があります。低い段で運動の方向を学び、段高を徐々に上げます。

手すりの量を変えると変わるか

両手、片手、指先支持、手すりなしを安全範囲で比較します。手すりを握る力だけでなく、下肢支持、体幹位置、所要時間、恐怖がどう変わるかを記録します。

先導脚を変えると変わるか

麻痺側と非麻痺側のどちらを先にしてもよい条件で試し、足部設置、疼痛、膝制御、手順の再現性を比べます。本人の生活環境で使える側の手すりも加味します。

一段だけならできるか

一段目はできても、三段目から足部が引っかかるなら、筋持久力、心肺負荷、注意の持続が関与している可能性があります。単発成功と連続遂行を分けます。

装具条件で変わるか

足関節装具は、遊脚期のつま先クリアランスや立脚期の足関節・膝関節運動へ影響します。装具ありとなしで、つま先接触、足部設置、膝の動き、安全性を比較します。装具が合わない場合は自己判断で外さず、担当者と設定を確認します。

臨床推論の中心は、原因を言い当てることではなく、段高、手すり、先導脚、装具などを操作し、予測した変化が起こるか確認することです。

階段昇降は段高・手すり・先導脚・装具を一条件ずつ変える

リハビリで設計すること:一段の反復から生活の連続場面へ広げます

準備となる能力を扱います

階段で観察した問題に応じて、低い台への足部設置、ステップアップ、ステップダウン、側方支持、立ち上がり、踵上げなどを選びます。単独の筋力訓練だけで終わらず、その能力を階段のどの局面で使うか結びつけます。

例えば昇りで膝伸展が不足する方には、椅子からの立ち上がりや低い台へのステップアップを用い、上方へ重心を移す条件を練習します。降りで膝が急に曲がる方には、低い段からゆっくり足を下ろし、支持脚で速度を制御する課題を設定します。

二足一段を安全戦略として使います

二足一段は、交互昇降へ至らない未完成の動作とは限りません。住宅へ戻るための現実的な方法になり得ます。本人が手順を再現でき、手すりと補助具を安全に使えるかを優先します。

交互昇降を目標にする場合も、まず二足一段で連続性と安全性を確保し、低い段で麻痺側支持や振り出しを練習し、必要な局面だけ交互へ進めます。

一段目、連続、踊り場をつなげます

訓練は一段だけで終わりません。平地から接近する、一段目へ入る、複数段を続ける、踊り場で方向転換する、最後の段から平地へ戻る流れを練習します。

課題指向型練習では、階段という名称を反復するのではなく、本人が使う段高、手すり、段数、持ち物、疲労条件へ近づけます。

速さは安全と再現性のあとに加えます

所要時間は重要ですが、速くすることでつま先接触や膝折れが増えるなら難易度が高すぎます。まず足部設置、支持、手順が再現できる速度を探します。その後、段数や速度を一度に一つずつ増やします。

買い物袋を持つ、会話する、人が後ろにいるなどの二重課題は、単純条件の安全が確認されてから加えます。生活では有用ですが、初期から重ねると何が原因で崩れたか分かりにくくなります。

論文から言えること:練習効果の可能性はあるが、確実性は低いです

Nascimentoらの2025年の系統的レビューとメタ解析は、脳卒中者314人を含む9件のRCTをまとめました。対象介入は、筋力訓練、課題指向型訓練、筋力と有酸素運動または課題指向型訓練の組み合わせでした。

ランダム効果モデルでは、階段昇降能力について標準化平均差0.4、95パーセント信頼区間0から0.8が報告されました。昇降時間を報告した試験だけをまとめると、対照条件に比べ3.4秒、95パーセント信頼区間0.4から6.5秒の差でした。

ただし、著者らはエビデンスの確実性を非常に低いと評価しています。また、介入終了後に効果が維持されたかを調べた試験はありませんでした。論文の結論では、主に慢性期で中等度の障害を持つ対象者に、1回50分、週4回、6週間の構造化された運動という条件が示されています。急性期や重度者、異なる頻度へそのまま一般化できません。

van de Portらは、自宅退院後の脳卒中者250人を、12週間、週2回、1回90分の課題指向型サーキット訓練と通常理学療法へ無作為に割り付けました。主要評価のStroke Impact Scale移動領域には群間差がありませんでした。一方、副次評価の修正版階段テストでは、12週時点で介入群が通常理学療法群より1.6秒短い差を示しました。

この試験は、少なくとも10メートルを身体介助なしで歩ける自宅退院者が対象です。また階段だけの訓練ではなく、歩行関連の8つの課題を含むサーキットでした。したがって、階段反復だけの効果とは言えません。

Gandolfiらの慢性期脳卒中者32人を対象としたRCTでは、ロボット支援階段訓練と感覚統合バランス訓練を、1回50分、週2回、5週間比較しました。主要評価のBerg Balance Scaleを含む主要・副次評価に明確な群の主効果は示されませんでした。一部の6分間歩行や重心動揺指標では時間と群の交互作用が報告されました。

階段練習を含む運動は階段能力を変える可能性がありますが、どの方法が誰に最適か、変化が生活で維持するかは十分に分かっていません。

代償と回復を分ける:見た目の対称性だけで判断しません

観察された変化 まず考える意味 次に確かめること
手すりで昇降できた 上肢支持による代償 手すり量を減らしたときの下肢支持
二足一段で自立した 順序と支持を単純化した代償 生活で安全に再現できるか
段を低くすると膝が安定した 課題難易度の調整 段高を戻したときも制御できるか
同じ手すり量で膝制御が安定した 支持能力変化の可能性 未練習の階段でも再現するか
交互昇降の時間だけ短くなった 速度戦略の変化 つま先接触、介助量、疲労も変わったか

手すり、杖、二足一段は、生活を成立させるための代償です。それらを使うこと自体を否定しません。一方、同じ補助条件で下肢支持や足部設置が変わった場合は、能力変化の可能性を考えます。

安全な代償を確保した上で、条件をそろえた再評価により回復との違いを記録します。

生活上の注意:自宅の階段は訓練室と同じではありません

退院前や外出再開前には、実際に使う階段を確認します。写真や動画だけでも、段高、奥行き、手すり位置、踊り場、照明、床材を把握できます。

  • 手すりが途中で切れていないか
  • 最初と最後の段を見分けられるか
  • 階段に物が置かれていないか
  • 靴下だけで昇降していないか
  • 夜間の照明が十分か
  • 杖をどのように運ぶか決まっているか
  • 荷物を持つ必要があるか
  • 疲労時も同じ方法を再現できるか
  • 家族の立ち位置と介助方法が統一されているか

降りでは転落時の影響が大きいため、能力が不明な段階で一人練習をしません。家族が腕を引っ張る介助は、バランスを崩す可能性があります。担当PT・OTから、立ち位置、支持する部位、合図を具体的に共有します。

胸痛、強い息切れ、めまい、新しい麻痺や言語症状が出た場合は練習を中止し、医療的な判断を優先します。

変化を見るアウトカム:時間だけでなく安全性と生活範囲を追います

遂行結果

  • 一定段数の昇り時間と降り時間
  • 完了できた段数
  • 一足一段と二足一段の割合
  • 停止回数と足の運び直し回数
  • つま先接触、踏み外し、膝折れの回数

介助と代償

  • 見守り、軽介助、身体介助の程度
  • 手すりの本数と握り方
  • 杖や装具の使用条件
  • 先導脚と手順の再現性
  • 家族が必要とした介助量

身体負荷と主観

  • 心拍数、血圧、呼吸状態
  • 自覚的運動強度
  • 疼痛と疲労
  • 転倒への恐怖
  • 課題後の回復時間

生活への影響

  • 自宅内で使える階の範囲
  • 玄関や公共交通機関の利用
  • 外出頻度
  • 荷物や混雑条件での可否
  • 本人と家族が選ぶ安全戦略

同じ秒数でも、介助量が減った、足の引っかかりが減った、疲労後も手順を保てたという変化には別の意味があります。

論文からどこまで言えるか

言えること

  • 階段昇降では、慢性期脳卒中者と対照者の間に、関節モーメントやケイデンスの違いが報告されています。
  • 慢性期脳卒中者55人の横断研究では、通常歩行速度、麻痺側膝伸展筋力、6分間歩行距離が階段昇降のエネルギーコストと関連しました。
  • 9件のRCTをまとめたメタ解析では、運動後に階段昇降成績が変わる可能性が示されています。
  • 課題指向型サーキット訓練の大規模RCTでは、副次評価の階段時間に群間差が報告されました。
  • 階段能力は時間だけでなく、手すり、先導脚、昇降方法、介助量とともに評価する必要があります。

まだ言い切れないこと

  • 一つの筋力値だけで階段昇降の可否を決められません。
  • 手すりを使わない方法が、すべての人にとって望ましいとは言えません。
  • 一つの先導脚の順序が、疼痛や認知機能を含む全条件で最適とは限りません。
  • 階段訓練後の変化が介入終了後も維持するかは、十分に検証されていません。
  • 慢性期の軽度から中等度の対象者の結果を、急性期や重度者へそのまま当てはめられません。

ぱらゴリ的な見立て:階段を「一段の成功」ではなく役割の連鎖で見ます

階段が難しい方へ「膝の筋力をつけましょう」と説明するだけでは、臨床推論が途中で止まります。足部を段へ運べないのか、置けても重心を移せないのか、支持脚で身体を上げられないのか、降りる速度を制御できないのかを分ける必要があります。

Activeの8ステップで考えるなら、まず昇り、降り、接近、連続、踊り場のどこに問題があるか見つけます。次に筋力、可動域、感覚、恐怖、注意、装具、環境から原因候補を並べ、段高や手すりなど一つの条件を変えて仮説を検証します。

その結果に応じ、低い段への足部設置、支持脚での重心移動、ステップダウンの速度制御など必要な能力へ分解します。難易度を合わせて反復し、同じ条件と生活に近い条件の両方で再評価します。

階段練習の目的は形をそろえることではなく、本人の生活で安全に再現できる方法をつくり、どの能力に変化の余地があるか見極めることです。

最後にもう一度、要点を整理します

  • 階段は昇りと降りで必要な筋出力と制御が異なります。
  • 接近、一段目、連続昇降、踊り場、終了まで分けて観察します。
  • 所要時間だけでなく、先導脚、昇降方法、手すり、介助量、エラーを記録します。
  • 先導脚の順序は固定規則にせず、疼痛、支持、振り出し、手すり位置から選びます。
  • 手すりや二足一段は有用な代償であり、回復と区別して記録します。
  • 段高、手すり、先導脚、装具の条件を一つずつ変え、仮説を検証します。
  • 練習は一段から始め、連続、方向転換、荷物など生活課題へ段階づけます。
  • 研究は運動による変化の可能性を示しますが、エビデンスの確実性は非常に低いと評価されています。

「昇れたか」で終わらず、どの脚が何を担い、どの条件で安全性と自立度が変わったかを追ってください。

参考文献

  1. Novak AC, Brouwer B. Kinematic and kinetic evaluation of the stance phase of stair ambulation in persons with stroke and healthy adults: a pilot study. Journal of Applied Biomechanics. 2013;29(4):443-452. PMID: 22927500. https://doi.org/10.1123/jab.29.4.443

  2. Polese JC, Scianni AA, Teixeira-Salmela LF. Predictors of energy cost during stair ascent and descent in individuals with chronic stroke. Journal of Physical Therapy Science. 2015;27(12):3739-3743. PMID: 26834342. https://doi.org/10.1589/jpts.27.3739

  3. Nascimento LR, de Souza Oliveira AM, de Moraes GMSP, et al. Exercise improves stair climbing performance after stroke: A systematic review of randomized trials with meta-analysis. PM&R. 2025;17(10):1215-1224. PMID: 40359389. https://doi.org/10.1002/pmrj.13373

  4. van de Port IG, Wevers LE, Lindeman E, Kwakkel G. Effects of circuit training as alternative to usual physiotherapy after stroke: randomised controlled trial. BMJ. 2012;344:e2672. PMID: 22577186. https://doi.org/10.1136/bmj.e2672

  5. Gandolfi M, Valè N, Dimitrova E, et al. Robot-Assisted Stair Climbing Training on Postural Control and Sensory Integration Processes in Chronic Post-stroke Patients: A Randomized Controlled Clinical Trial. Frontiers in Neuroscience. 2019;13:1143. PMID: 31708735. https://doi.org/10.3389/fnins.2019.01143

  6. Lee J, Seo K. The effects of stair walking training on the balance ability of chronic stroke patients. Journal of Physical Therapy Science. 2014;26(4):517-520. PMID: 24764624. https://doi.org/10.1589/jpts.26.517

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