歩行時に脊髄内で起こっている可能性のある脊髄内システムについて
こんにちは、ぱらゴリです。
みなさん歩行を考えていく際に、
- 歩行周期
- セントラルパターンジェネレーター(CPG)
- Half center
- Passenger Unit、Locomotor Unit
が学ぶ中で代表的なところかと思います。
そこにもう一つ加えると、「歩行時の脊髄内システム」について知識があると、なぜ荷重が大事なのか、立脚後期で下腿三頭筋が伸張されることが大事なのか、のヒントになるかもしれません。
そこで今回は、
説明していきます。
脊髄システムの概要
今回の内容の概略図です。
皮質脊髄路や皮質網様体脊髄路はα運動神経細胞、一部介在ニューロンに対してシナプスを形成し、γ運動神経細胞にシナプスを形成し、錐外筋、錐内筋をコントロールします。
今回は、それらの細胞に対して末梢から感覚が入力された結果、脊髄反射が起こるメカニズムについてお話ししていきます。
- Ia反射
- Ib抑制
- Ib促通
- 相反抑制
- 反回抑制
についてです。知っていることも多いと思いますが、今一度復習をしておいて損はないと思います。
骨格筋と脊髄の神経支配
まずは骨格筋と脊髄の神経支配についてざっくりとお話ししてきます。
骨格筋は筋紡錘と腱紡錘という感覚受容器が存在します。
筋紡錘から入力される感覚にはIa線維とII線維があり、腱紡錘から入力される感覚にはIbと言われます。
そして、筋紡錘には核袋線維という速さの受容器と核鎖線維という長さの受容器の2種類があり、
Ib感覚はゴルジ腱器官という筋収縮に反応する受容器が存在すると言われ、
Ia感覚とIb感覚は非常に反応速度が速く、伸張反射のスイッチになったり、筋収縮時に反応します。
II線維は反応速度が比較的遅く、何もしていない時の筋緊張、つまり安静時の筋緊張を維持する働きがあるといわれています。いつでも運動ができる状態、または伸張反射の感度を調節する働きがあるんです。
そして、
γ運動ニューロンは、筋紡錘の錐内筋を支配し、興奮により、筋紡錘の両端を収縮されることで、筋紡錘の張り、つまり「感度」を高める役割があります。
γ運動ニューロンは動的と静的な物の2つに分けられます。
先ほどお話しした核袋線維は両方を含んでおり、運動時に働くものと安静時に働く物の2つに大別されます。
αーγ連関について
腱反射によって筋収縮時には錐外筋線維は緩みます。すると、本来であれば筋紡錘の張力は低下し入力が乏しくなるはず、ですよね。
しかし随意運動時に膝を伸ばして!と相手に指示を出すとそのまま伸ばしっぱなしにしてくれますよね。
これは、あらかじめ運動プログラムを作る際に、膝を伸ばした時には錐外筋はこれくらい縮まるから、前もって錐内筋の張力を、収縮後に合わせて調整しておこう!と皮質網様体脊髄路系が筋紡錘の張力を調整するγ運動神経細胞に対して指令を出しておいてくれるんです。
だから随意運動時には錐外筋線維が収縮しても中にある錐内筋は張力を保って筋収縮を維持してくれる!というわけですね。これをα-γループ、またはα-γ運動連関といいます。
Ia反射について
まずはIa反射からです。単シナプス反射と言われるものになります。
腱を叩くと急激に錐内筋が引き延ばされIa線維とII線維が後根、脊髄傍節、後角に入りそこから前角にあるアルファ運動神経細胞に興奮性を伝えます。
そうすることで筋肉が縮み中にある筋紡錘も縮む、という反応です。
これが最も原始的な脊髄反射で伸びたら縮むというシンプルなものとなります。
しかしながら、私たちは主動作筋と拮抗筋という対になるものが存在します。
すなわち膝蓋腱反射であれば、大腿四頭筋が収縮すると反対側にあるハムストリングスは伸張されるわけです。
するとどうでしょう、伸びたら縮んでしまってはハムストリングスも伸張反射を起こしてしまいます。そんなわけないですよね。
ハムストリングスへは相反抑制というものがかかり、実際には筋緊張を抑制する作用が働いています。あとで相反抑制の話もしていきます。
Ib抑制について
次はIb抑制についてです。
この原理をうまく使った介入がストレッチですね。
筋腱移行部に豊富に存在するという腱紡錘のゴルジ腱器官に対して張力が生じるとIb線維を通して、ちょっと筋肉伸びすぎじゃない?という感覚が入ります。
すると、脊髄内にあるIb抑制性介在ニューロンにシナプスを形成して、伸張されている同名筋のα運動神経細胞に抑制性に作用し、
筋を緩めるよう働きかける、というものです。これは、安静時に持続的な伸張をかけると生じる現象になります。
これをうまく利用したのがホールドリラックスという、最大伸張位で収縮を入れることで同名筋にさらに緩め!と働きかける手技になります。
以前は、ホールドリラックスを用いた手技には最大収縮を要するといわれいましたが、ゴルジ腱器官は非常に反応速度が早いと先ほど述べましたが、わずか数gから5gくらいの刺激に対しても反応するといわれているため、軽い持続収縮でも効果がある可能性が考えられますね。
すこし脱線しました。ストレッチをするにしても筋を伸張しリラクゼーションを図るにしても、この知識は絶対必要ですよね。
Ib促通について
歩行であれば、立脚後期に近い姿勢になっていますよね。
立脚後期には下腿三頭筋って強く収縮すると言われています。もしもこのIb抑制の理論が歩行中に起こっていると・・・大事な下腿三頭筋が弛緩してしまいます。
そこで次は歩行中はこのIb抑制がIb促通に変化する可能性がある、という話になります。
歩行の立脚後期の姿勢です。立脚後期には下腿三頭筋って強く収縮すると言われています。もしもこのIb抑制の理論が歩行中に起こっていると・・・大事な下腿三頭筋が弛緩してしまいます。
立位や歩行中、特に荷重位ではゴルジ腱器官から入力されるIb線維による筋が伸びすぎているぞ!という感覚は、抑制性介在ニューロンではなく、促通性介在ニューロンに対してシナプスを形成し同名筋の収縮を強化する働きがあるといわれています。
ここで大事なのは、筋の収縮を強化する!ということです。
すなわち歩行中に立脚後期に強く働くと言われる下腿三頭筋は、しっかりとした背屈と下腿三頭筋腱、正確には下腿三頭筋腱移行部の身長が必要である!ということです。
歩行において立脚後期を作ることが大事と言われますが、こういった神経的な面においても重要性が考えられるわけですね。
立脚後期の下腿三頭筋の活動
筋活動で見てみると先ほど述べましたが、立脚後期に下腿三頭筋の収縮がピークを迎えています。
ここでは足関節は最大背屈を迎えていますし、内的モーメントは最大になっています。つまり足関節最大背屈位で下腿三頭筋が最大収縮をしていることになります。おそらくこれがIb促通ですね。
しかしもう一つこの時にポイントがあります。
それは、立脚後期にみなさん下腿三頭筋によるPush Offが地面を蹴って、前方への推進力を作り出している、足を大きく降り出すという話を聞いたことはないでしょうか。
筋電図を見てみると、Pre swingの段階、前遊脚期と言われるまだ足部が地面から離れていない段階ですでに下腿三頭筋に筋収縮は低下、内的モーメントも低下していきます。
つまり地面を蹴り出し足を振り出しているなんていうことは、ないということです。
地面を蹴る練習をするのは意味合いとして歩行につながりにくい、ということですね。
下腿三頭筋が最大収縮して重心を前上方へ持ち上げクリアランスを確保したり、反対側の遊脚時に支持側を下腿の後ろから遠心性収縮で支えてしっかり歩幅を確保するために重要な役割を持っているというわけです。
この図を見ていただくと、イメージしやすいかもしれません。
相反抑制について
次は、相反抑制です。
先ほどのIa反射の時にも出てきましたが、簡単に役割を説明すると主動作筋が活動すると、拮抗筋の活動性が減弱しますよ、という脊髄反射です。
立脚後期には、下腿三頭筋は伸張されます。そして伸張されることでIb促通が起こり強い収縮を生み出していると説明してきました。
下腿三頭筋が伸張されるとIa感覚が入力されます。つまり筋が早く伸びてるぞ!という感覚ですね。
これが脊髄に入力され、同名筋である下腿三頭筋は収縮するわけです。すると同時に拮抗筋の神経髄節レベルまで下行または上行し、拮抗筋の髄節レベルに存在する、抑制性介在ニューロンにシナプス形成をしα運動神経細胞に対して抑制性に働きかける結果、緩め!という指令が錐外筋線維に対して出るよ!という反応です。
これは、随意運動の時にも行われていて、皮質脊髄路からの指令で肘を曲げる際に、上腕二頭筋が収縮すると肘が屈曲します。
すると上腕三頭筋は伸張されますが肘を屈曲したいのに、伸張された上腕三頭筋が収縮してもらっては困るわけです。それを抑制するために肘屈曲筋の拮抗筋である上腕三頭筋に対して皮質脊髄路は抑制性の介在ニューロンを用いて緩め!と指令を出すんです。
それに加えて筋紡錘の張力はαーγループによって肘屈曲位の上腕二頭筋つまり緩んだ状態でも筋紡錘の張力は保たれIa感覚が入力された結果、さらに拮抗筋であれ上腕三頭筋は緩むように働きかけられる、というメカニズムが随意運動時に行われていると考えられます。
反回抑制について
次は反回抑制です。
筋肉は強く収縮しすぎと強力な抑制性介在ニューロンであるレンショウ細胞が同名筋に対して頑張りすぎだから一旦休め!という指令を出す仕組みです。
つまり歩行であれば立脚後期に、
主動作筋の下腿三頭筋がちゃんと活動すればするほど、最大収縮後には主動作筋の下腿三頭筋自身の活動が減弱するというわけです。
Ib促通であったりIa反射という2つの強力な脊髄反射により強く収縮した下腿三頭筋は、ピーク後に抑制されるというわけですね。
余談ですが、この反回抑制の機能がうまくいっていないのがクローヌスです。
ですので、下腿三頭筋にクローヌスが出た際は、足部を浮かして止めるのではなく、下腿三頭筋の活動を増やすことで、自身でその活動をコントロールできるように働きかける必要があります。
まとめ
今回は、脊髄内で起こるシステムについて説明してきました。
歩行だけでなく、ストレッチやその他の動作を考える上で非常に大事な考え方となります。
理解していただき、臨床の中で起こる現象の考察や介入につなげていただけると嬉しいです。
最後までありがとうございました。
コメント