はじめに
前脛骨筋は主要な皮質脊髄神経支配を持つことが知られていますが、
確かに臨床的にも運動麻痺によって前脛骨筋の運動障害が出やすかったり、装具が必要な所以の一つとして皮質脊髄路の損傷による前脛骨筋の運動麻痺による問題が大きい、と考えられてきました。
しかし、
皆さんも経験があるかもしれませんが、
歩けるようになったり、ADLが拡大したら
「運動麻痺によってできなかったはずなのに足関節背屈できるやん・・・」
という現象。
もしかしたら、皮質脊髄路による支配だけではないのでは?
という疑問を持ったので今回調べて見ました。
下肢の筋肉って全てが皮質脊髄路から均等な興奮性の投射を受けているんか?
この研究では人間の下肢筋肉における皮質脊髄路の興奮性について調査しています。研究の目的は、さまざまな筋肉群にわたる神経系の活動パターンを理解することです。これは、運動機能の理解と神経筋疾患の治療法の開発に対する洞察を提供することを目的としています。
結論ですが、
母趾外転筋と前脛骨筋は高い皮質興奮性を示した。
というものです。
つまり「皮質脊髄路支配の要素が大きい」ということですね・・・。
とりあえずこの皮質脊髄路支配の要素が大きい、と言われる所以について
内容を見ていきましょう。
対象と方法
対象者
16人の健康な個人で、平均年齢は35.5歳(標準偏差14.6歳)、そのうち11人が女性でした。
これらの被験者は、
下肢筋肉における皮質脊髄路の興奮性を調査するために選ばれ、彼らは実験手続きについての同意を与えていました。
研究の方法
- 運動課題と測定: 被験者には複数の運動課題が与えられ、筋肉の活動を電気的に測定しました。これには、脳波(EEG)と筋電図(EMG)が使用され、皮質脊髄路の興奮性を評価します。
- 被験者の姿勢: 被験者は快適なアームチェアに座り、股関節と膝が90度の角度になるように位置づけられました。
- 筋電図の測定: 股直筋(rectus femoris)、大腿二頭筋(biceps femoris)、前脛骨筋(tibialis anterior)、ヒラメ筋(soleus)、母趾外転筋(abductor hallucis)の筋肉から、安静時のEMG活動が測定されました。
- 測定方法: 二極表面電極(Ag-AgCl、直径10mm)が筋肉の腹部に配置され、EMG信号は増幅(増幅器のゲインは100、アイソレータのゲインは1)およびフィルタリング(30–2000 Hz)されました。
この研究方法により、下肢の各筋肉における皮質脊髄路の興奮性の測定が可能となり、人間の運動機能に関する重要な情報が得られました。
結果
結果の概要
研究では、下肢筋肉の中で最大運動誘発電位(MEP-max)に顕著な違いが見られました。
具体的には、
母趾外転筋(abductor hallucis)のMEP-max(2.4 ± 1.3 mV)、前脛骨筋(tibialis anterior:1.36 ± 0.85 mV)が、
大腿二頭筋(biceps femoris:0.11 ± 0.11 mV)
股直筋(rectus femoris:0.97 ± 0.69 mV)
ヒラメ筋(soleus:0.63 ± 0.53 mV)
と比較して大きかったことが示されました。
結局よくわからない内容になっているかと思いますが、これを解釈すると…
さまざまな脚の筋肉にわたる皮質脊髄興奮性の変動は、
皮質脊髄路からこれらの筋肉への投影に変動があることを実際に示唆していると推測できます。
この変動は、これらの筋肉の役割や機能の違い、解剖学的構成、さまざまな運動課題への関与の違いなど、多くの要因によるものである可能性があり、そこまでは今回の研究では解明できていません。
つまり、脚の筋肉への皮質脊髄出力の不均一な分布が研究で発見された、
これは皮質脊髄路の投影にばらつきがあるという解釈を裏付けるものになるということです。
下腿の筋肉の中でも皮質脊髄路の興奮性の表現には幅があることがわかります。
じゃあやっぱし、皮質脊髄路が損傷したら背屈できないやんか…ってなりますよね…。
でも臨床では、脳画像やその他所見をとってみても無理そうなのに背屈できる人、いるんですよね…。
じゃあこれってなんでよ?ってなりません?
そのヒントは…
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