こんにちは、ぱらゴリです。
私は理学療法士として急性期〜慢性期までの全ての期間で
脳卒中リハビリテーションをしております。
脳卒中になると、「立てない」「歩けない」といった身体機能の低下に対して私たちは介入をすることが多いですよね。
ところで、私たちが「立っている」「歩いている」ってなぜわかるのでしょうか。
また、立てないという現象一つをとっても「傾いてしまう」「膝が折れる」「足がついている感じがしない」など症状に個別性があります。そしてその世界を理解することで、どんな訓練を行うべきなのか見えてくるのではないでしょうか。
そこで今回は
というテーマです。
楔前部って何?
まず楔前部(英名:Precuneus)とは、
- 頭頂葉内側の脳回の一つ
- 前大脳動脈からの血管支配を受ける
部位のことを表します。「前部」というくらいなので、その真後ろには「楔部」がちゃんと存在します。
そして、頭頂後頭溝と頭頂下溝で囲まれた領域で、上頭頂小葉の7野のうちの内側部とも考えられています。
この部位は、
「空間にある対象物(例えば、建物や部屋)などの位置関係の認識」をしてくれている部分になります。
そして楔前部には「感覚情報を基にした、身体マップが存在している」
と考えられており、
特に「下肢ー体幹」に関するニューロンが多く存在し複数の体制感覚が組み合わさったパターンでなければ応答しない関節の組み合わせニューロンや関節・皮膚組み合わせのニューロンが存在しています。
楔前部の役割
「楔前部」は一体何をやっているのでしょうか。
感覚の統合ですね。
特に視覚と下肢ー体幹の空間における相対的な位置関係の認識について重要な役割を果たしています。
具体的には
- 自分の位置に関する情報→姿勢定位障害
- 方角に関する情報→道順障害
です。
自分の位置に関する情報とは
楔前部が処理している、「自分の位置に関する情報」は、
具体的には「立っている際に下肢と体幹が真っ直ぐかどうか」の情報のことをいいます。
立っている、歩いているとわかるのは視覚や体性感覚情報によるとなんとなくわかりますが、
「まっすぐ」立っているか、歩いているかについてはこの「楔前部」が視覚情報と立位などの抗重力姿勢をとった際に入力される体性感覚をもとに認識していると考えても良さそうですね。
楔前部が前大脳動脈の脳血管障害により損傷すると、「まっすぐ立ったり、歩いたりできなくなる」可能性があるということを覚えておきましょう。
支持性が低下しているから立てない、歩けなくなるわけではないということですね。
方角に対する情報とは
方角に対する情報とは、自分がいる位置を認識しているからこそ存在する情報になります。
すなわち前述した、自分の位置に関する情報とトレードオフの関係性を持っていると考えても良さそうです。
そして、場合によっては「道順障害」という形で、建物や風景の同定は可能ですが、
- 自分が今どこにいるのか分からなくなる
- 目的地までどのように行けばいいのか分からなくなる
といった症状が出現したりします。
まとめ
空間における位置情報の認識、特に下肢と体幹の認識に重要な部分であることがわかりましたね。
では、どう介入したら良いのか…が一番悩むところになりますが、
大事なのは、
- 視覚情報の中枢ではない
- 感覚入力の中枢ではない
という点です。あくまで、「統合し処理する段階」にErrorおこり、立てない、歩けないといった症状が出現しているというわけですよね。
それが、視覚と体性感覚情報のミスマッチによって起こっているわけです。
つまり、「視覚と体性感覚情報の統合を助ける」ことが介入方法になるわけです。
一つのアイデアとして、両側の手をとってまっすぐセラピストに向かって起立を促すことで、
感覚情報と視覚情報のマッチングの補助になったりすることもあります。
脳卒中後の立てない、歩けないという方に対して、しっかりとした知識をもとに適切な介入を行えるようになるためにも今回の知識は重要かと思います。
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