脳卒中後の中枢性疼痛:しびれ・灼ける痛みを筋緊張だけで決めない【若手PT・OT向け】

脳機能
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  1. 「しびれて痛い」を、痙縮や使いすぎだけで説明していませんか?
  2. 結論!「痛みの地図」と「感覚の地図」を重ねます
  3. なぜそう見えるのか:感覚が弱いのに、痛みは強くなることがあります
    1. 感覚低下と痛みは反対ではありません
    2. 痛みは発症直後だけに現れるとは限りません
  4. よくある勘違い1:「しびれがある=中枢性疼痛」ではありません
  5. よくある勘違い2:「筋緊張が高いから痛い」と一つにまとめません
  6. よくある勘違い3:「脳が原因なら身体評価は不要」ではありません
  7. 評価ではここを分ける:問診、感覚、組織、活動の四段階です
    1. 1.痛みの地図を本人と一緒に作ります
    2. 2.感覚検査は「低下」と「過敏」を同じ地図に記録します
    3. 3.筋・関節・皮膚・循環の所見を確認します
    4. 4.痛みが活動をどう変えているかを見ます
  8. 臨床で使うならこう考える:一つの所見ではなく、整合性を積み上げます
  9. リハビリで設計すること:刺激量と活動量を別々に調整します
    1. 痛いほど触れば慣れる、とは考えません
    2. 痛みをゼロにしてから動く、にも固定しません
    3. 薬物療法の効果と有害事象を課題中にも観察します
  10. 自宅や生活で気をつけること:感覚低下がある皮膚を守ります
  11. 変化を見るアウトカム:痛みの点数だけで終わらせません
  12. 論文からどこまで言えるか:治療効果は研究ごとに揺れています
    1. ラモトリギンの小規模クロスオーバーRCT
    2. プレガバリンの多施設RCTでは主要評価項目に群間差がありませんでした
    3. デュロキセチン試験は脳卒中だけの結果ではありません
    4. 系統的レビューでも、確実性の評価は一様ではありません
  13. ぱらゴリ的な見立て:痛みの名前より、再現条件を整理します
  14. 最後にもう一度、要点を整理します
  15. 参考文献

「しびれて痛い」を、痙縮や使いすぎだけで説明していませんか?

脳卒中後、「触られるだけで痛い」「冷たい物が焼けるように感じる」「手足の奥がずっと痛む」と訴える方がいます。動作で痛みが増えれば、肩関節や筋の問題を疑うのは自然です。筋緊張が高ければ、痙縮による痛みを考えることもあるでしょう。

しかし、脳卒中後の痛みには、筋・関節などの組織から生じる侵害受容性疼痛だけでなく、体性感覚を扱う中枢神経系の損傷に関連する中枢性脳卒中後疼痛があります。英語ではcentral post-stroke pain、CPSPと呼ばれます。

ここで難しいのは、痛みの言葉だけでは原因を決められないことです。灼ける、刺す、電気が走るといった表現は神経障害性疼痛を疑う材料になりますが、それだけで診断はできません。反対に「重い」「締めつけられる」と表現されても、中枢性疼痛を除外できません。

まず確認するのは、痛みのある場所と感覚異常のある場所が重なるか、その分布を説明できる脳病変があるか、別の痛みが併存していないかです。

この記事では、中枢性疼痛を筋骨格痛、痙縮に関連する痛み、末梢神経障害、複合性局所疼痛症候群などと分ける評価の順序を整理します。リハビリでは、痛みを我慢して反復するのでも、刺激をすべて避けるのでもなく、安全に活動へ戻るための条件を設計します。

結論!「痛みの地図」と「感覚の地図」を重ねます

中枢性脳卒中後疼痛を疑うときは、次の四つを順に確認します。

  1. 痛みの性質と分布:いつ始まり、どこに、どの刺激で、どのような痛みが出るか
  2. 体性感覚所見:同じ範囲に感覚低下、異常感覚、アロディニア、痛覚過敏があるか
  3. 病変との整合:脳卒中の病変が体性感覚系を損傷し、痛みの分布を神経解剖学的に説明できるか
  4. 他の原因:関節・筋・腱、末梢神経、皮膚、血管、浮腫、感染などでよりよく説明できないか

アロディニアとは、衣服が触れる、風が当たるなど、通常なら痛くない刺激で痛みが生じることです。痛覚過敏は、もともと痛い刺激に対する痛みが通常より強い状態です。異常感覚やしびれがあるだけでは、中枢性疼痛とは呼びません。痛みと体性感覚系の損傷を結びつける所見が必要です。

Finnerupらが示した神経障害性疼痛の診断確度では、病歴と痛みの分布が神経病変と整合する段階をpossible、診察で同じ範囲の感覚所見が加わる段階をprobable、画像などで説明可能な病変が確認される段階をdefiniteと整理します。ただし、definiteは「画像だけで因果関係が確定した」という意味ではありません。診察と鑑別を含む臨床判断が残ります。

痛み質問票の点数、視床病変、灼熱痛という一項目だけで中枢性疼痛を確定しません。

痛みの地図と感覚の地図を重ねる

なぜそう見えるのか:感覚が弱いのに、痛みは強くなることがあります

感覚低下と痛みは反対ではありません

「感覚が鈍いなら痛みも弱いはず」と考えたくなります。しかし中枢性疼痛では、温度、触覚、痛覚などの感覚低下と、アロディニアや自発痛が同じ領域に重なることがあります。

脳卒中によって脊髄視床路を含む侵害受容・温度感覚の経路が損傷すると、末梢からの入力が減るだけでなく、残存する神経回路の興奮性や抑制の均衡が変化すると考えられています。視床、脳幹、大脳白質、皮質を含む複数の部位が関与し得るため、「視床痛」という呼び方だけでは範囲が狭すぎます。

2025年のKaroamらの研究では、中枢性疼痛がある72人と疼痛のない脳卒中者123人の病変を比較しました。中枢性疼痛群の病変は、研究者が事前に定めた侵害受容経路の関心領域とより大きく重なっていました。病変部位は一か所に限られず、共通するネットワークとの関連が検討されています。

ただし、画像上でその経路に病変があれば全員に痛みが起こるわけではありません。病変、感覚所見、痛みの分布、時間経過を合わせて読みます。

痛みは発症直後だけに現れるとは限りません

Andersenらは、81歳未満の連続脳卒中入院患者267人を発症1週、1か月、6か月、12か月で前向きに追跡しました。6か月以上生存し、信頼できる応答が可能だった207人を解析し、中枢性疼痛は16人、8%に確認されました。

この16人のうち15人には温度、触覚、痛覚の低下があり、9人には冷刺激によるアロディニア、別の9人には触刺激によるアロディニアが報告されました。対象年齢と解析条件が限られるため、8%をすべての脳卒中者へそのまま当てはめることはできません。それでも、感覚低下と刺激誘発痛が重なり得ること、経過中に痛みが明らかになることを示す重要な前向き研究です。

痛みの発症は脳卒中直後の場合もあれば、数か月以上遅れる場合もあります。退院時に痛みがなかったことだけで、その後の中枢性疼痛を否定できません。

よくある勘違い1:「しびれがある=中枢性疼痛」ではありません

しびれは、感覚低下、異常感覚、ピリピリ感、重だるさ、麻痺による動かしにくさなど、異なる体験をまとめて表す言葉です。本人が「しびれる」と話したら、痛みがあるかを改めて確認します。

0から10の数値だけでなく、次を聞きます。

  • 何もしていなくても痛むか
  • 触れる、衣服がこする、冷風が当たると痛むか
  • 関節を動かす、荷重する、筋を伸ばすと痛むか
  • 痛みは皮膚表面、関節周囲、筋の深部、手足全体のどこか
  • 発作的か、持続的か、日内変動があるか
  • 睡眠、集中、歩行、更衣、上肢使用をどの程度妨げるか

痛みがなく、位置覚低下や触覚低下だけがある場合は感覚障害として評価します。感覚障害と中枢性疼痛は重なることがありますが、同じ病態ではありません。

よくある勘違い2:「筋緊張が高いから痛い」と一つにまとめません

痙縮は、伸張速度に依存して筋緊張が高まる運動障害です。痛みは痙縮の定義そのものではありません。速い他動運動で抵抗が強まること、一定の関節角度で筋が伸ばされて痛むこと、安静でも灼けるように痛むことは、別々に記録します。

たとえば肩を外旋したときだけ局所痛が出るなら、関節、腱板、筋、軟部組織の負荷を確認します。手指を速く伸ばすと抵抗と痛みが増えるなら、痙縮、筋短縮、皮膚や爪の問題を分けます。衣服が触れるだけで前腕全体に痛みが広がり、同じ範囲に冷覚低下があるなら、中枢性疼痛の可能性を検討します。

筋緊張、関節可動域、触診、動作、感覚検査を別々に行い、どの操作がどの痛みを再現したかを記録します。

よくある勘違い3:「脳が原因なら身体評価は不要」ではありません

中枢性疼痛が疑われても、筋骨格痛や末梢組織の問題は併存します。麻痺側上肢では肩関節痛、浮腫、腱や軟部組織への負荷が重なることがあります。下肢では足部変形、装具圧、変形性関節症、腰部由来の神経症状なども考えます。

さらに、複合性局所疼痛症候群では、疼痛に加えて浮腫、皮膚温や皮膚色の左右差、発汗変化、関節可動域低下などが組み合わさることがあります。末梢神経障害では、特定神経や神経根に沿う分布、筋力・反射所見、誘発姿勢が手がかりになります。

脳卒中後に起きた痛みを、すべて脳卒中病変だけで説明しないことが鑑別の出発点です。

中枢性疼痛と他の痛みを四つに分ける

評価ではここを分ける:問診、感覚、組織、活動の四段階です

1.痛みの地図を本人と一緒に作ります

身体図に、自発痛の範囲、触刺激で痛む範囲、冷刺激で痛む範囲、動作で痛む部位を色分けします。痛みが麻痺側全体に広いのか、手だけか、顔と上肢にまたがるのか、関節周囲に限局するのかを確認します。

言葉の表現が難しい場合は、表情、逃避反応、発汗、筋緊張の変化、動作の中断を観察します。ただし、行動だけで痛みの有無や強さを決めず、失語症や認知機能に合わせて図、指差し、二択などの回答方法を調整します。

開始時期も重要です。脳卒中発症日、痛みの初発日、悪化した出来事、装具変更、転倒、注射や点滴、活動量の変化を時系列に並べます。

2.感覚検査は「低下」と「過敏」を同じ地図に記録します

ベッドサイドでは、軽い触覚、鋭い刺激、冷温、振動覚、位置覚などを必要に応じて確認します。刺激は安全で再現可能な方法にそろえ、目を閉じた条件と開けた条件を分けます。

次の反応を区別します。

  • 検出低下:刺激が分からない、左右差がある
  • 異常感覚:刺激は分かるが、ピリピリ、電気が走るなど不快に感じる
  • アロディニア:通常は痛くない刺激を痛いと感じる
  • 痛覚過敏:痛い刺激をより強く感じる
  • 残感覚:刺激を止めても感覚が続く

非麻痺側は比較対象になりますが、年齢、糖尿病、末梢神経障害、過去の病変などの影響を受けます。非麻痺側を絶対的な正常値として扱わず、痛みのない近接部位や複数の領域も比べます。

冷温覚低下がある人へ、氷や高温の物体を直接当てる検査は皮膚損傷の危険があります。検査で痛みを再現することより、最小限の安全な刺激で分布と反応を確認することを優先します。

3.筋・関節・皮膚・循環の所見を確認します

痛む部位の腫脹、発赤、皮膚温、皮膚色、傷、爪、装具圧を観察します。関節可動域、動作方向、荷重、触診で痛みが再現されるかを確認します。筋をゆっくり伸ばした場合と速く伸ばした場合で、抵抗と痛みがどう変わるかも分けます。

局所の圧痛や特定動作で再現し、組織への負荷を減らすと変わるなら、筋骨格要因の順位が上がります。反対に、広い神経解剖学的分布、同じ範囲の感覚異常、軽い触刺激や温度刺激による痛みがそろえば、中枢性疼痛の可能性が高まります。二つが同時にある場合は、それぞれにアウトカムを設定します。

4.痛みが活動をどう変えているかを見ます

痛みの強さが同じでも、活動への影響は異なります。更衣で袖に触れることを避ける、上肢を視野に入れない、麻痺側へ荷重しない、睡眠不足で練習量が落ちるなど、痛みから生じる行動を観察します。

ここで、痛みによる回避と、運動麻痺、感覚低下、失行、恐怖、学習された非使用を一つにまとめません。動作を小さく分け、どの刺激、どの速度、どの接触面、どの予測で痛みと回避が変わるかを確かめます。

臨床で使うならこう考える:一つの所見ではなく、整合性を積み上げます

中枢性疼痛を疑う臨床推論は、次の流れで進めます。

段階 確認すること 次の判断
病歴 脳卒中後に始まった痛みか、分布は神経解剖学的に妥当か possibleの仮説を置く
診察 痛みの範囲に感覚低下や過敏があるか probableの可能性を検討する
画像・医学情報 体性感覚系を説明できる病変があるか 医師と診断確度を共有する
鑑別 筋骨格、末梢神経、皮膚、血管などで説明できないか 併存を含めて優先順位をつける
仮説検証 姿勢、接触、温度、課題条件を一つ変える どの痛みが変わったか再評価する

質問票ではDN4、painDETECTなどが神経障害性疼痛のスクリーニングに使われることがあります。しかし、点数は診断そのものではなく、失語症や認知機能、感覚検査の方法にも影響されます。Central Sensitization Inventoryも、中枢性脳卒中後疼痛を確定する検査ではありません。

診断名を当てるために検査を増やすのではなく、医師へ何を共有し、リハビリ課題のどの条件を変えるかが明確になる評価を選びます。

リハビリで設計すること:刺激量と活動量を別々に調整します

痛いほど触れば慣れる、とは考えません

触覚刺激への過敏があるとき、強い摩擦や冷刺激を反復すればよいとは限りません。痛みが長く残り、その後の更衣や上肢使用が減るなら、刺激設定が過大です。

まず、本人が予測できる刺激、痛みが急増しにくい素材、短い時間から始めます。視覚で刺激を確認する、本人が自分で触れる、接触面を広くする、速度を遅くするなど、反応を比較します。刺激後に痛みが何分続くか、次の活動を妨げるかも記録します。

刺激への耐性だけでなく、その刺激を含む更衣、整容、把持、荷重へ使えるかをアウトカムにします。

痛みをゼロにしてから動く、にも固定しません

完全に痛みがなくなるまで活動を止めると、廃用、体力低下、関節可動域低下、参加制限が重なる可能性があります。一方、強い痛みを無視して反復すると、活動回避や睡眠障害が増える場合があります。

課題は、痛みの許容範囲、終了後の残り方、翌日の影響を見ながら調整します。支持面、衣服素材、把持物の温度、課題時間、休憩、注意の向け方を一つずつ変えます。成功した条件で反復し、生活に近い素材と環境へ段階的に移します。

これは中枢性疼痛そのものを身体練習だけで治療できるという意味ではありません。疼痛治療は医師と連携し、PT・OTは安全な感覚評価、二次的な廃用の予防、活動と参加の再設計を担います。

薬物療法の効果と有害事象を課題中にも観察します

中枢性疼痛には抗うつ薬、抗てんかん薬などが検討されますが、選択と用量調整は医師が行います。PT・OTは、服薬前後の痛みだけでなく、眠気、めまい、ふらつき、集中、起立、歩行安全性、発疹などの変化を共有します。

薬で痛みが少し下がっても、眠気で活動が減れば生活上の利益は限定的です。反対に数値上の痛みが大きく変わらなくても、睡眠が安定し、更衣や歩行を再開できる場合があります。疼痛強度と生活への干渉を並べて確認します。

評価から課題設計と再評価へつなぐ

自宅や生活で気をつけること:感覚低下がある皮膚を守ります

温度感覚が低下し、冷刺激や熱刺激で痛みが出る方は、熱傷や低温熱傷を避ける工夫が必要です。湯たんぽ、電気毛布、カイロ、熱い入浴、氷の直接使用は、本人の感覚だけで安全を判断しないようにします。皮膚を目で確認し、家族や医療者と安全な温度管理を相談します。

衣服や寝具が触れて痛む場合は、縫い目、素材、圧迫、室温を記録します。すべての接触を避けるのではなく、生活上必要な接触をどの条件なら受け入れられるかを探します。

次の変化は通常の訓練を続けず、早めに医療者へ共有します。

  1. 急に始まった新しい痛みと、新たな麻痺、感覚変化、言語症状、強い頭痛
  2. 手足の急な腫れ、発赤、熱感、皮膚色の変化
  3. 傷、感染が疑われる所見、装具による皮膚損傷
  4. 胸痛、呼吸苦、冷汗などを伴う痛み
  5. 服薬後の強い眠気、ふらつき、意識状態の変化、発疹

急な悪化を「いつもの中枢性疼痛」と決めないことが安全管理になります。

変化を見るアウトカム:痛みの点数だけで終わらせません

アウトカムは、痛み、感覚、活動、参加の四層で設定します。

水準 アウトカム例 解釈で注意すること
痛み 安静時・動作時・接触時のNRS、最大痛、痛みの持続時間 平均値だけで発作痛を見落とさない
感覚 痛み地図、触覚・冷温覚、アロディニア範囲、残感覚 検査刺激と順序をそろえる
生活への干渉 Brief Pain Inventory、睡眠、更衣、整容、歩行中断 痛みの強さと別に追う
身体活動 上肢使用時間、立位・歩行時間、課題反復数 代償や回避の増加を確認する
参加 外出、家事、趣味、役割、個別目標の達成度 本人に意味のある活動へ結びつける

同じ0から10の痛みでも、衣服に腕を通せる、睡眠が途切れにくい、麻痺側上肢をテーブルへ置けるという変化には意味があります。反対に痛みが2点下がっても、活動範囲が狭くなっているなら課題設定を見直します。

評価条件はそろえます。薬を飲んだ時刻、室温、接触素材、活動後か安静後かを記録すると、変化の解釈がしやすくなります。

論文からどこまで言えるか:治療効果は研究ごとに揺れています

ラモトリギンの小規模クロスオーバーRCT

Vestergaardらは、中枢性疼痛がある30人を対象に、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を行いました。8週間ずつの治療期間を比較し、intention-to-treat解析の27人では、試験用量200mg時の痛み中央値が5、プラセボ時が7で、p値は0.01でした。反応者は12人、44%でした。軽い発疹が2人に生じ、1人は中止しています。

小規模なクロスオーバー研究であり、この数値からすべての人へ同じ反応を予測できません。用量は試験条件であり、自己判断で使用する根拠ではありません。

プレガバリンの多施設RCTでは主要評価項目に群間差がありませんでした

Kimらは219人を、プレガバリン群110人とプラセボ群109人に割り付け、13週間比較しました。平均疼痛スコアは両群で低下しましたが、最終時点の調整群間差はマイナス0.2、95%信頼区間マイナス0.7から0.4、p値0.578で、主要評価項目に明確な群間差はありませんでした。

一方、睡眠、不安尺度、臨床家による全般的変化には群間差が報告されました。有害事象による中止はプレガバリン群9人、8.2%、プラセボ群4人、3.7%でした。痛みの平均値だけでなく、睡眠や有害事象を同時に見る必要性が分かります。

デュロキセチン試験は脳卒中だけの結果ではありません

Vrankenらは、脳卒中または脊髄病変による中枢性神経障害性疼痛48人を、デュロキセチンとプラセボへ割り付け、8週間比較しました。主要評価の平均疼痛強度はp値0.056で明確な群間差に達しませんでしたが、動的アロディニアと冷アロディニアには群間差が報告されました。

対象には脊髄病変が含まれるため、中枢性脳卒中後疼痛だけの効果として一般化できません。どの痛み特性をアウトカムにするかで結果が異なる点にも注意が必要です。

系統的レビューでも、確実性の評価は一様ではありません

Mullaらの2015年の系統的レビューは8件のRCT、459人を含み、研究された治療の効果推定に対する確実性を低い、または非常に低いと評価しました。

Tamasauskasらの2025年の系統的レビューとメタ解析は42研究、1451人を含みました。メタ解析に組み入れられた研究では薬物療法に小さいプール効果が示された一方、身体的介入では明確なプール効果が示されませんでした。介入、研究デザイン、対象、評価時点の異質性が大きく、すべての治療を同じ確実性で支持する結果ではありません。

現時点の研究から、単一の薬や身体刺激を全員の標準解として示すことはできません。診断の妥当性、症状特性、睡眠、気分、活動、有害事象を合わせ、医師を含む多職種で経過を確認します。

ぱらゴリ的な見立て:痛みの名前より、再現条件を整理します

臨床で見落としやすいのは、「中枢性疼痛らしい」という印象で止まり、何を変えると活動が成立するかを検証しないことです。

ぱらゴリ的には、次の順で整理します。

  1. 自発痛、接触痛、温度刺激痛、動作時痛を別々に地図へ書く
  2. 痛みと感覚低下・過敏が重なる範囲を確認する
  3. 筋骨格、痙縮、末梢神経、皮膚・循環の仮説を並べる
  4. 姿勢、素材、接触速度、荷重量を一つ変えて痛みを再現する
  5. 医師へ病変、痛み特性、感覚所見、生活への干渉を共有する
  6. 痛みが急増しにくい条件で、本人に必要な活動を設定する
  7. 疼痛強度、残痛時間、活動、睡眠、有害事象を再評価する

たとえば、更衣で前腕が痛む人に対し、肩関節可動域だけを反復しても、袖の接触によるアロディニアが主因なら課題は成立しません。逆に、触覚過敏があっても、実際の痛みが肩外旋時の局所痛で再現されるなら、筋骨格要因を別に扱う必要があります。

原因候補を分け、優先順位をつけ、条件を一つ変え、同じ活動で再評価することが臨床推論です。

最後にもう一度、要点を整理します

  1. 中枢性脳卒中後疼痛は、体性感覚系の脳病変に関連する神経障害性疼痛です。
  2. 灼ける、刺すという言葉や、視床病変だけでは診断できません。
  3. 痛みの範囲と、感覚低下・アロディニア・痛覚過敏の範囲を重ねます。
  4. 筋骨格痛、痙縮に関連する痛み、末梢神経障害、複合性局所疼痛症候群などの併存を確認します。
  5. PT・OTは診断や処方を単独で行わず、安全な評価、活動条件の調整、廃用予防、多職種への共有を担います。
  6. アウトカムは痛みの点数だけでなく、睡眠、活動、参加、有害事象まで追います。

脳卒中後の痛みを一つの言葉でまとめず、原因候補を分けて評価すると、医療者へ伝える情報と、リハビリで変える条件が具体的になります。

参考文献

  1. Andersen G, Vestergaard K, Ingeman-Nielsen M, Jensen TS. Incidence of central post-stroke pain. Pain. 1995;61(2):187-193. PMID: 7659428. DOI: 10.1016/0304-3959(94)00144-4
  2. Finnerup NB, Haroutounian S, Kamerman P, et al. Neuropathic pain: an updated grading system for research and clinical practice. Pain. 2016;157(8):1599-1606. PMID: 27115670. DOI: 10.1097/j.pain.0000000000000492
  3. Karoam HA, Bruss J, Champoux K, et al. Neuroanatomy and lesion networks of central poststroke pain. Pain. 2025;166(9):e303-e313. PMID: 40839673. DOI: 10.1097/j.pain.0000000000003618
  4. Vestergaard K, Andersen G, Gottrup H, Kristensen BT, Jensen TS. Lamotrigine for central poststroke pain: a randomized controlled trial. Neurology. 2001;56(2):184-190. PMID: 11160953. DOI: 10.1212/WNL.56.2.184
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  7. Mulla SM, Wang L, Khokhar R, et al. Management of Central Poststroke Pain: Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Stroke. 2015;46(10):2853-2860. PMID: 26359361. DOI: 10.1161/STROKEAHA.115.010259
  8. Tamasauskas A, Silva-Passadouro B, Fallon N, et al. Management of Central Poststroke Pain: Systematic Review and Meta-analysis. J Pain. 2025;26:104666. PMID: 39260808. DOI: 10.1016/j.jpain.2024.104666
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