【脳卒中リハビリ】足関節背屈は皮質脊髄路との関連性が強い!?

皮質脊髄路 前脛骨筋 姿勢制御

 

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ぱらゴリ
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こんにちは!ぱらゴリです! 今回の記事を執筆に至ったのは、 「あれ脳画像的には皮質脊髄路がガッツリ障害されているのに、背屈できる人おるぞ…」という素朴な臨床疑問を持ったからです。 あくまでもサンプルサイズが小さかったり特定の年齢層や性別に限定されている可能性があります。 これらの要因が結果にどのように影響を与えたかは不明ですので、完全に盲信していいかどうかには一部疑問が残りますが、私の疑問を解消してくれるような内容でしたので共有します。
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はじめに

前脛骨筋は主要な皮質脊髄神経支配を持つことが知られていますが、 確かに臨床的にも運動麻痺によって前脛骨筋の運動障害が出やすかったり、装具が必要な所以の一つとして皮質脊髄路の損傷による前脛骨筋の運動麻痺による問題が大きい、と考えられてきました。 しかし、 皆さんも経験があるかもしれませんが、 歩けるようになったり、ADLが拡大したら 「運動麻痺によってできなかったはずなのに足関節背屈できるやん・・・」 という現象。 もしかしたら、皮質脊髄路による支配だけではないのでは? という疑問を持ったので今回調べて見ました。  

下肢の筋肉って全てが皮質脊髄路から均等な興奮性の投射を受けているんか?

この研究では人間の下肢筋肉における皮質脊髄路の興奮性について調査しています。研究の目的は、さまざまな筋肉群にわたる神経系の活動パターンを理解することです。これは、運動機能の理解と神経筋疾患の治療法の開発に対する洞察を提供することを目的としています。 Eisner-Janowicz I, Chen B, Sangari S, Perez MA. Corticospinal excitability across lower limb muscles in humans. J Neurophysiol. 2023 Sep 1;130(3):788-797.
  結論ですが、 母趾外転筋と前脛骨筋は高い皮質興奮性を示した。 というものです。 つまり「皮質脊髄路支配の要素が大きい」ということですね・・・。 とりあえずこの皮質脊髄路支配の要素が大きい、と言われる所以について 内容を見ていきましょう。

対象と方法

対象者

16人の健康な個人で、平均年齢は35.5歳(標準偏差14.6歳)、そのうち11人が女性でした​​。 これらの被験者は、 下肢筋肉における皮質脊髄路の興奮性を調査するために選ばれ、彼らは実験手続きについての同意を与えていました。

研究の方法

  • 運動課題と測定: 被験者には複数の運動課題が与えられ、筋肉の活動を電気的に測定しました。これには、脳波(EEG)と筋電図(EMG)が使用され、皮質脊髄路の興奮性を評価します。
  • 被験者の姿勢: 被験者は快適なアームチェアに座り、股関節と膝が90度の角度になるように位置づけられました。
  • 筋電図の測定: 股直筋(rectus femoris)、大腿二頭筋(biceps femoris)、前脛骨筋(tibialis anterior)、ヒラメ筋(soleus)、母趾外転筋(abductor hallucis)の筋肉から、安静時のEMG活動が測定されました。
  • 測定方法: 二極表面電極(Ag-AgCl、直径10mm)が筋肉の腹部に配置され、EMG信号は増幅(増幅器のゲインは100、アイソレータのゲインは1)およびフィルタリング(30–2000 Hz)されました。
この研究方法により、下肢の各筋肉における皮質脊髄路の興奮性の測定が可能となり、人間の運動機能に関する重要な情報が得られました​​。  

結果

結果の概要

研究では、下肢筋肉の中で最大運動誘発電位(MEP-max)に顕著な違いが見られました。
具体的には、 母趾外転筋(abductor hallucis)のMEP-max(2.4 ± 1.3 mV)前脛骨筋(tibialis anterior:1.36 ± 0.85 mV)が、   大腿二頭筋(biceps femoris:0.11 ± 0.11 mV) 股直筋(rectus femoris:0.97 ± 0.69 mV) ヒラメ筋(soleus:0.63 ± 0.53 mV)   と比較して大きかったことが示されました​​。   結局よくわからない内容になっているかと思いますが、これを解釈すると… さまざまな脚の筋肉にわたる皮質脊髄興奮性の変動は、 皮質脊髄路からこれらの筋肉への投影に変動があることを実際に示唆していると推測できます。 この変動は、これらの筋肉の役割や機能の違い、解剖学的構成、さまざまな運動課題への関与の違いなど、多くの要因によるものである可能性があり、そこまでは今回の研究では解明できていません。 つまり、脚の筋肉への皮質脊髄出力の不均一な分布が研究で発見された、 これは皮質脊髄路の投影にばらつきがあるという解釈を裏付けるものになるということです。 下腿の筋肉の中でも皮質脊髄路の興奮性の表現には幅があることがわかります。   じゃあやっぱし、皮質脊髄路が損傷したら背屈できないやんか…ってなりますよね…。   でも臨床では、脳画像やその他所見をとってみても無理そうなのに背屈できる人、いるんですよね…。   じゃあこれってなんでよ?ってなりません?

足関節の機能はどうやら網様体脊髄路も関わってるんじゃね?って話

脳卒中患者における対側足関節筋力低下の回復と皮質脊髄路および皮質網様体路との関係   Jang SH, Cho MK. Relationship of Recovery of Contralesional Ankle Weakness With the Corticospinal and Corticoreticular Tracts in Stroke Patients. Am J Phys Med Rehabil. 2022 Jul 1;101(7):659-665.
この報告が今回の疑問のヒントになるのかもしれない、というものでしたので共有しますね。 結論をまとめると…
こんな感じになります。 慢性期において皮質網様体脊髄路と皮質脊髄路をDTI(拡散テンソル画像)にて描出した結果、 足関節背屈の運動機能の予後が良好であった群では、皮質網様体路の線維量が有意に増加していたという結果となった。 グループAとBでは明らかに脳血管障害の範囲も違うので、そりゃそうやろ…と思ってしまうような結果ではあるものの、 ここで重要なのは、 非損傷側の皮質脊髄路による影響もあるが、 「皮質網様体路」による影響も少なからず足関節背屈筋群は受けている、という可能性を示しています。 先に紹介した研究は、あくまで健常者を対象としているためそのまま脳卒中後遺症者に適応できるかは、疑問が残りますが、 少なくとも足関節背屈は皮質脊髄路が損傷しているんだから、無理だ!ということはできないんじゃないか?ということです。 しかし装具の役割は、足関節の背屈の代償だけではないため、 装具をみんな外せるぞー!といった話でもないのかなぁ、と思ったりするところですが、 介入の余地はある!と思うわけです。  

介入方法における工夫

個別にアプローチが必要な筋肉が下肢に存在するということ。

研究では、下肢筋肉群が皮質脊髄路だけでなく網様体脊髄路を含む神経からも制御を受けていることを示しています。 例えば、足の母趾外転筋や前脛骨筋などは高い皮質脊髄路の興奮性を示すため、 これらの筋肉を個別にターゲットにした特定の運動や介入が有効であるということです。 FMA下肢の運動機能をアウトカムとした研究では、
足関節背屈筋群を対象にNMESを30分、標準的なリハビリを追加して行うことで、急性期脳卒中者のFMA LEの点数が電気を追加しない群と比較して、有意に向上した。 You G, Liang H, Yan T. Functional electrical stimulation early after stroke improves lower limb motor function and ability NeuroRinehaacbtiivlitaietsioonf. d20a1ily4;l3iv5i(n3g).:381-9.
といったように、足関節背屈筋に対して個別の介入を行なっている。   しかし、そのほかの下肢筋群に関しては、皮質脊髄路以外の制御も多く受けている可能性があり個別でというよりもそれらの筋肉が活動するような「課題」を通して練習することが好ましいのかもしれません。 例えば下腿三頭筋に関してですが、カーフレイズを単純に行うよりは、 昇段練習やステップ練習を実際の機能レベルでの改善を図っていくには好ましい可能性があります。 以前からざっくばらんに経験則から言われていたことが改めてこういった視点からも、明らかになりつつある、ということですね。

こういったメカニズムが今後も解明されることで見えてくる可能性

  • 前脛骨筋の制御: 直接的に網様体脊髄路と背屈筋の関与について解釈するには限界がありますが、前脛骨筋が皮質脊髄路だけでなく、網様体脊髄路によっても制御されている可能性があります。 網様体脊髄路は主に姿勢や歩行などの基本的な運動制御に関わります。 そのため、前脛骨筋がこれらの基本的な運動や姿勢の維持において重要な役割を果たしている可能性があります。
  • リハビリへの応用: もし前脛骨筋が網様体脊髄路によっても制御されている場合、私たちはこれを考慮に入れた計画を立てる必要があります。 皮質脊髄路の損傷がある重度運動麻痺があるからといって、装具を常時つけて介入することは好ましくないかもしれませんし、ましてや皮質網様体路を積極的に使っていくような、姿勢や歩行を制御するようなプログラムを提供しないことは、可能性を潰してしまう危険性もあります。 つまり、基本的な姿勢や歩行能力の強化を目的とした運動プログラムもしっかりと組み込んでいく必要がある、ということです。
また、こういったことが急速に解明されていることで、理学療法の分野において新たな考え方をもたらす可能性がありますし、 現状維持でいいわけがないのです。 今後も一緒に頑張っていきましょう!!  
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