- 「分かりました」と答えたのに、動作が始まらないことはありませんか?
- 結論!遂行機能は「考えたか」ではなく、目的ある行動の流れで見ます
- なぜそう見えるのか:前頭葉だけで説明できる障害ではありません
- よくある勘違い1:「指示が通らない」から遂行機能障害とは限りません
- よくある勘違い2:「手順を間違える」から失行とは限りません
- よくある勘違い3:「テストができた」から生活も安全とは限りません
- 評価ではここを分ける:同じ「止まる」を条件変更で読みます
- 臨床で使うならこう考える:評価結果で支援の形を変えます
- リハビリで設計すること:脳トレだけで終わらせず、本人の課題で戦略を使います
- 自宅や生活で気をつけること:危険度が高い課題から支援を決めます
- 変化を見るアウトカム:点数、課題、参加、安全を別々に追います
- 論文からどこまで言えるか:戦略訓練は有望でも、長期効果は確定していません
- ぱらゴリ的な見立て:失敗の形より、どの支援で流れが戻るかを見ます
- 最後にもう一度、要点を整理します
- 参考文献
「分かりました」と答えたのに、動作が始まらないことはありませんか?
「着替えてください」と伝えるとうなずくのに、衣服を前にしたまま止まる。調理では材料を出せても、次に何をするか分からなくなる。歩行練習では、廊下が空いていると歩けるのに、人を避けた直後から目的地を見失う。服薬では、薬を手元に置けても飲んだかどうかを確かめられない。
このような場面を「理解力が低い」「注意が悪い」「やる気がない」と一語でまとめると、介入の入口を誤る可能性があります。言葉を理解できないのか、行為そのものを組み立てにくいのか、途中の情報を保持できないのか、目標を立てて手順を選び、誤りを修正することが難しいのかを分ける必要があります。
結論から言うと、遂行機能障害は検査室の点数だけでは捉えきれません。「開始する」「計画して順序づける」「状況に合わせて切り替える」「結果を確かめて修正する」のどこで止まるかを、実際の生活課題で確認します。
この記事では、脳卒中後の遂行機能障害を失語症、失行、注意障害、記憶障害、運動麻痺と混同せず、評価から課題設計、家族への伝え方、アウトカムまでつなげます。
結論!遂行機能は「考えたか」ではなく、目的ある行動の流れで見ます
遂行機能は、目的に向かって行動を組み立て、状況に合わせて調整するための複数の働きの総称です。単一の能力ではありません。臨床では少なくとも次の五つに分けると、観察が具体的になります。
- 開始:必要な場面で行動を始める
- 目標設定:何を終えたいかを明確にする
- 計画と順序:必要な手順を選び、順番を保つ
- 抑制と切り替え:不要な反応を止め、条件の変化へ対応する
- 自己監視:結果を確認し、誤りに気づいて修正する
たとえば歯磨きを始められない人でも、歯ブラシを手渡すと始められるなら、行為の知識がすべて失われたとは限りません。開始のきっかけづくりや環境内の手掛かりが影響している可能性があります。一方、始められても歯磨き粉のふたを閉めず、すすぎを飛ばし、誤りを指摘しても同じ行動を続けるなら、順序、抑制、自己監視を分けて見る必要があります。
「できた・できない」ではなく、目標、開始、順序、切り替え、自己修正のどこで支援が必要だったかを記録します。

なぜそう見えるのか:前頭葉だけで説明できる障害ではありません
遂行機能という言葉から前頭葉を連想する人は多いと思います。前頭前野を含む前頭葉ネットワークは、目標維持、抑制、切り替え、自己監視に重要です。しかし、臨床では「前頭葉病変があるから遂行機能障害」「前頭葉病変がないから問題なし」とは決められません。
目的ある行動には、前頭前野だけでなく、頭頂葉、視床、大脳基底核、小脳、白質連絡路などを含む広いネットワークが関わります。さらに、言語、視空間認知、記憶、処理速度、注意、感情、疲労、睡眠、疼痛、薬剤の影響が重なると、外からは同じように「段取りが悪い」と見えることがあります。
脳卒中前からの認知機能、教育歴、仕事で使っていた技能、うつ症状、せん妄、感染、代謝異常も考慮が必要です。発症直後の一回の検査だけで長期像を固定しない理由がここにあります。
Milosevichらの2026年の縦断研究では、急性期に866人を評価し、そのうち105人を二年以上追跡しました。全体として認知障害の程度は六か月までに大きく変化し、その後も変化がみられましたが、遂行機能と注意には持続または遅れて変化する軌跡が確認されました。ただし、長期追跡に参加できた人数は急性期集団の一部です。個人の経過を一律に予測する研究ではありません。
病巣名だけで結論を出さず、どの生活課題で、どの条件のときに、どの実行過程が崩れるかを見ます。
よくある勘違い1:「指示が通らない」から遂行機能障害とは限りません
口頭指示のあとに動けない場合、まず聴力、覚醒、注意、失語症による聴理解、記憶保持、運動麻痺、感覚障害、痛みを確認します。短い言葉にする、実物を見せる、実演する、選択肢を減らすと反応が変わるかを比べます。
実演すると適切に動けるなら、長い言語情報の処理や保持が主な制約だった可能性があります。意味は理解していても、麻痺や運動失調で動けないこともあります。反対に、説明と実演を理解し、必要な運動能力もあるのに、目標を保てず手順が逸脱し、誤りに気づきにくい場合は、遂行機能の関与を詳しく評価します。
反応が遅いことと、理解していないことは同じではありません。十分な待ち時間を置き、指示の形式を変え、運動出力の制約を減らしてから解釈します。
よくある勘違い2:「手順を間違える」から失行とは限りません
失行は、麻痺、感覚障害、理解障害などだけでは説明できない、学習された目的ある行為の障害です。道具の持ち方が不適切、身振りの空間的な形が崩れる、身体部位を道具の代わりに使うといった誤りは、失行の評価につながります。
一方、遂行機能障害では、個々の動作要素は行えても、目標の保持、複数手順の選択、状況変更への対応、終了判断が崩れることがあります。コーヒーを入れる一つ一つの操作はできても、湯を沸かす前にカップへ粉を入れ忘れる、途中で別の作業へ移る、こぼしても修正しないという形です。
失行と遂行機能障害は併存する可能性があります。模倣、実物使用、単一手順、複数手順を比べ、動作要素の誤りと全体の管理の誤りを分けます。
よくある勘違い3:「テストができた」から生活も安全とは限りません
静かな部屋で、評価者が課題を一つずつ提示し、誤りのたびに次の指示を出す条件は、すでに環境が行動を整理しています。自宅では、テレビがつき、電話が鳴り、複数の物品が並び、時間制限があり、本人が自分で開始と終了を判断します。
Trail Making Test Part Bは、数字と文字を交互につなぐ課題で、切り替えや処理速度を含む遂行機能の一側面をみます。しかし、視覚探索、上肢運動、数字や文字の理解、視野障害、半側空間無視の影響も受けます。所要時間が長いという結果だけで遂行機能障害とは決めません。
MoCAや各種認知スクリーニングも、認知機能の入口を把握する材料です。総得点だけで、どの生活課題にどの支援が必要かまでは分かりません。Mancusoらの初回脳卒中325人を対象とした研究では、MMSEで基準未満だった人は35.3%でしたが、脳卒中特異的なOxford Cognitive Screenでは91.6%が少なくとも一領域で基準外でした。この差は、検査の構成によって拾われる障害像が変わることを示します。ただし、OCSで一領域が基準外だったことを、そのまま生活上の重度障害と解釈することはできません。
検査得点は診断の代わりではなく、生活課題で確かめる仮説をつくるために使います。
評価ではここを分ける:同じ「止まる」を条件変更で読みます
1.まず医学的に新しい変化ではないか確認します
急に会話がかみ合わなくなった、新しい麻痺や失語が出た、意識が変わった、今までできた手順が数時間から数日で崩れた場合は、遂行機能障害の訓練を始める前に医師へ共有します。再発、発作、感染、脱水、低血糖、薬剤、せん妄などの確認が必要なことがあります。
経過が緩やかでも、睡眠、気分、痛み、疲労、視聴覚、服薬状況を確認します。これらは遂行機能の検査成績と生活行動の両方へ影響し得ます。
2.一つの生活課題を、開始から終了まで観察します
課題は本人にとって意味があり、安全に観察できるものを選びます。更衣、歯磨き、飲み物の準備、スマートフォンで家族へ連絡する、歩行器を準備してトイレへ行くなどです。
評価者は、次の項目を順に記録します。
- 目標を自分の言葉で説明できるか
- 必要な物品を選べるか
- 合図なしで開始できるか
- 手順を保てるか
- 不要な行動を止められるか
- 条件が変わったときに切り替えられるか
- 危険や誤りに気づくか
- 修正方法を考えられるか
- 終了を判断できるか
できなかった項目だけでなく、どの支援で進めたかを残します。視線誘導、指差し、短い言語指示、写真手順、実演、物品配置、身体介助を分けます。
評価者が出した答えではなく、本人が目標へ戻るために必要だった最小の支援を探します。
3.合図の量を段階づけ、最小支援を探します
最初から答えを言うと、本人がどこまで自己調整できたか分かりません。安全が保てる範囲で、待つ、一般的な問いを出す、具体的な問いを出す、選択肢を示す、実演する、直接介助するという順に支援量を段階づけます。
たとえば「次は何をしますか」で進めるなら、目標の再確認が手掛かりになります。「歯ブラシを持ってください」まで具体化しないと進めないなら、より大きな外部構造が必要です。支援量を数えることで、介入前後の変化を比較しやすくなります。
4.単一課題と複数課題を比べます
一つの動作はできても、二つ以上の予定が重なると崩れることがあります。静かな場所と雑音がある場所、慣れた手順と一部変更した手順、時間制限なしとありを比べます。ただし、難易度を一度に複数変えると原因が読めません。
歩行では、直線を歩くだけでなく、目的地を選ぶ、物を避ける、止まる、再開する場面を観察します。ここで歩行が崩れても、遂行機能だけの影響とは限りません。バランス、視野、半側空間無視、二重課題、疲労、恐怖を同時に確認します。
5.本人の予測と実際の差を確認します
課題前に「どの程度一人でできそうか」「何分かかりそうか」「どこが難しそうか」を尋ね、終了後に実際の結果と比べます。誤りへの気づきが乏しい場合、単に説明不足ではなく自己監視の制約が考えられます。
ただし、病識が乏しいように見えても、失語症で説明できない、記憶できない、落ち込みを避けるために強く言い切っている可能性があります。本人の発言だけで決めず、行動と照合します。

臨床で使うならこう考える:評価結果で支援の形を変えます
| 観察された主な問題 | 条件変更で確かめること | 支援と課題設計の入口 |
|---|---|---|
| 行動が始まらない | 物品提示、時間の合図、目標の復唱で始まるか | 開始の合図を固定し、徐々に減らす |
| 手順が飛ぶ・重複する | 写真手順、チェックリスト、物品の並びで変わるか | 手順を外部化し、本人が確認する練習 |
| 別の行動へ逸れる | 刺激を減らす、目標カードを置くと戻れるか | 目標を一つにし、中断後の再開点を決める |
| 条件変更で固まる | 選択肢を二つにすると切り替えられるか | 変更を一つずつ加え、判断規則を練習する |
| 誤りに気づかない | 動画、結果照合、問いかけで気づけるか | 予測と結果を比べ、自己確認の手順を作る |
| 危険でも続ける | 危険標識、停止ルール、家族の合図で止まれるか | 機能課題より先に安全な代償を固定する |
同じチェックリストでも、使い方によって意味が違います。評価者が毎回指示して成功させるなら、外部支援による代償です。本人が自分でチェックリストを開き、進行を確認し、不要になった項目を減らせるなら、自己調整の範囲が広がった可能性があります。
成功回数だけでなく、誰が目標を立て、誰が誤りに気づき、どの程度の合図で修正できたかを記録します。
リハビリで設計すること:脳トレだけで終わらせず、本人の課題で戦略を使います
1.目標を具体的な生活行為にします
「遂行機能を上げる」では、本人もセラピストも練習の成功条件を共有できません。「朝、写真手順を使って服薬を確認する」「歩行器を準備し、家族を呼んでからトイレへ行く」「電子レンジで一品を安全に温める」のように、場面と終了条件を決めます。
課題が大きすぎる場合は、必要な能力を分けます。ただし、分解練習だけで終わらず、元の生活課題へ戻して使えるかを確かめます。
2.目標・計画・実行・振り返りを一つの流れにします
戦略訓練では、本人が目標を選び、計画を立て、実行し、結果を振り返る流れを繰り返します。セラピストはすぐ答えを示すのではなく、「目標は何ですか」「次に必要なものは何ですか」「結果は予想と同じでしたか」と問い、本人が戦略を見つける余地を残します。
練習するのは正解の手順だけではなく、止まったときに目標へ戻る方法です。
ただし、重度の失語症、記憶障害、注意障害がある場合、言語的な内省をそのまま求めるのは適切ではありません。写真、実物、選択肢、短い反復を使い、可能な反応形式へ変えます。
Skidmoreらの2015年の単盲検パイロットRCTでは、認知障害を伴う急性期脳卒中者30人を、通常の入院リハに10回の戦略訓練を加える群15人と、同量の傾聴対照群15人へ割り付けました。六か月までのFIM変化と一部の遂行機能指標で群差が報告されました。ただし、小規模試験であり、開始時の脳卒中重症度に群差がありました。この結果だけで全ての人へ同じ方法が有効とは言えません。
3.外部手掛かりは「負け」ではなく、安全と参加のための代償です
チェックリスト、タイマー、スマートフォン通知、写真手順、薬箱、物品配置、色分けは、遂行機能を外から支える方法です。これらを使って自宅生活の安全性や参加を支えることは重要です。
一方で、外部手掛かりを使って成功したことと、手掛かりなしで自己調整できるようになったことは分けます。代償を減らすことが常に目標ではありません。危険が大きい服薬、火気、金銭、屋外移動では、安定した代償を残すほうが適切な場合があります。
代償の価値は、見た目の自立ではなく、安全、再現性、本人と家族の負担で判断します。
4.難易度は一つずつ変えます
最初は慣れた場所、少ない物品、一つの目標、時間制限なしで始めます。安定したら、物品の位置を少し変える、途中に一回だけ中断を入れる、選択肢を増やす、別の場所で行うという順に条件を変えます。
雑音、二重課題、時間圧、未知の場所を同時に加えると、失敗の原因が読めません。成功率を上げることだけでなく、どの条件まで本人が戦略を使えるかを見ます。
5.振り返りは責める時間にしません
誤りを指摘し続けると、本人が課題を避けることがあります。振り返りでは、まず目標と結果を並べ、できた部分、支援が必要だった部分、次に変える一条件を確認します。動画を使う場合も、本人の同意を得て、恥をかかせる材料にしません。
予測と結果の差を見える化し、「次は開始前に手順を三つ確認する」のように具体的な戦略へ落とします。

自宅や生活で気をつけること:危険度が高い課題から支援を決めます
生活課題は、失敗したときの結果が違います。靴下を左右逆に履くことと、薬を二重に飲むこと、火を消し忘れること、道路へ出ることは同じ扱いにできません。
まず服薬、火気、入浴、金銭、外出、運転、緊急連絡を確認します。安全性が不明な間は、家族や専門職と支援方法を決めます。運転再開は、病院内の認知検査一つや本人の自信だけで判断せず、主治医と地域の制度に沿って評価します。
家族は、本人が止まるたびに全手順を代行しがちです。しかし、すべてを代行すると本人が使える能力と必要な支援量が分からなくなります。安全な課題では、決めた順序で待つ、問いかける、指差す、具体的に伝えるという支援階層を共有します。
反対に、危険な課題で自立を試す必要はありません。課題ごとに「一人で行う」「確認後に行う」「見守りで行う」「介助者が管理する」を分けます。
当事者へは「考える力がない」と説明せず、「目的を保ちながら順序を選び、途中で確かめるところに支援が必要です」と具体的に伝えます。本人ができる部分を明確にすることが、過剰な介助を減らす土台になります。
変化を見るアウトカム:点数、課題、参加、安全を別々に追います
アウトカムは一つの認知検査へ集約しません。
| 層 | 指標の例 | 読み方 |
|---|---|---|
| 遂行機能の構成要素 | TMT-B、Stroop、言語流暢性、施設で採用する認知評価 | 視覚、運動、言語、処理速度の影響を併記する |
| 生活課題の遂行 | EFPT、実際の更衣・調理・服薬・移動課題 | 合図の種類と回数、安全エラー、修正の有無を見る |
| 活動と参加 | FIM、IADL、COPM、本人が選んだ目標の達成度 | テスト成績だけでなく生活が広がったかを見る |
| 安全と負担 | 服薬エラー、火気、転倒、見守り時間、家族負担 | 代償を残した結果も価値として扱う |
Baumらが検証したExecutive Function Performance Testは、調理、電話、服薬管理、支払いという実生活課題で、開始、組織化、順序、安全判断、完了を構造化して評価します。軽度から中等度脳卒中73人と対照22人を対象とした妥当性研究で群差が示され、必要な支援量を考える材料になると報告されました。ただし、日本語環境や各施設での使用条件、課題の文化差を確認する必要があります。
検査得点が同じでも、合図が減った、安全エラーが減った、家族の見守り時間が短くなったという変化は別に記録します。
論文からどこまで言えるか:戦略訓練は有望でも、長期効果は確定していません
Middletonらは、亜急性期または慢性期の脳卒中者215人を調べました。少なくとも一つの認知領域に障害があった割合は、発症90日未満で76.3%、90日から二年で67.3%でした。遂行機能障害はそれぞれ39.5%と30.7%で、多くは軽度でした。さらに、遂行機能障害はIADLの制限と関連しました。これは横断的な関連を示す研究であり、遂行機能障害がIADL低下の唯一の原因だと証明したものではありません。
Laaksoらは、脳卒中者62人を発症三か月で詳細に評価し、39人の対照と比較しました。抑制、切り替え、開始、戦略形成、処理速度の検査は、mRSやIADLと関連しました。最長21年の登録追跡では、抑制の成績が早期の長期施設入所と関連しました。ただし、対象は大規模研究から抽出した小集団であり、検査成績だけで個人の生活場所を予測することはできません。
Hsuらの2025年の多施設RCTでは、遂行機能障害を伴う地域在住脳卒中者195人を、参加に焦点を当てた戦略訓練96人と注意対照99人に割り付け、12回から15回、八週間実施しました。介入直後には生産性と社会参加で群間差が報告されましたが、三か月追跡では持続しませんでした。
同じ試験の2026年報告では、TMT-Bは介入直後に小さな群間差を示しましたが、三か月後には差が明確ではありませんでした。ほかの認知指標や健康関連QOLにも群間差は示されませんでした。
研究から言えるのは、本人の目標に沿った戦略訓練が一部の遂行機能や参加へ短期的な変化をもたらす可能性がある一方、効果の大きさ、持続、誰に合うかはまだ十分に確定していない、という範囲です。
AHAとASAの2023年科学的声明も、脳卒中後認知障害には併存症の確認と多職種管理が必要で、高品質な介入試験が不足していると整理しています。脳トレ課題一つを全員へ当てはめるのではなく、評価した生活上の分岐に介入を合わせます。
ぱらゴリ的な見立て:失敗の形より、どの支援で流れが戻るかを見ます
臨床で見落としやすいのは、失敗の数を数えて終わることです。同じ三回の誤りでも、目標カードを見ると自分で修正できる人と、具体的な指示が毎回必要な人では、課題設計が変わります。
ぱらゴリ的には、まず困っている生活場面を一つ選びます。次に、開始、目標、順序、切り替え、自己監視へ分け、どこで止まったか仮説を立てます。物品数、指示形式、写真手順、時間制限、雑音を一つだけ変え、反応を確かめます。適切な難易度なら反復し、同じ課題で支援量と安全性を再評価します。
写真手順で成功したなら、それは有効な代償です。写真を自分で準備し、途中で照合し、未知の課題でも同じ戦略を選べるようになったなら、自己調整の変化として別に記録します。
「正しくできたか」だけでなく、「自分で目標へ戻れたか」「どの合図で修正できたか」まで見て、次の課題を設計します。
最後にもう一度、要点を整理します
- 遂行機能は、開始、目標設定、計画と順序、抑制と切り替え、自己監視に分けます
- 手順が止まっても、失語症、失行、注意障害、記憶障害、麻痺、痛みを先に区別します
- 病巣名や認知検査一つだけで、生活上の遂行機能障害を決めません
- 実生活課題を開始から終了まで観察し、必要だった合図の種類と回数を記録します
- 戦略訓練は、本人の目標、計画、実行、振り返りを一つの流れにします
- チェックリストや写真手順は、安全と参加を支える代償として価値があります
- 代償による成功と、合図なしで自己調整できた変化を分けます
- 服薬、火気、金銭、外出、運転は、失敗したときの危険を考えて支援量を決めます
- RCTは短期的な可能性を示しますが、長期効果と適応はまだ確定していません
- 点数、生活課題、参加、安全、家族負担を別々のアウトカムで追います
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