こんにちは、ぱらゴリです。
私の本業は理学療法士として急性期〜慢性期までの全ての期間で
脳卒中リハビリテーションをしております。
学生時代から、実習中は「全体を評価しなさい!」と口うるさく言われませんでした?
実際就職してから、全体を評価できている人なんてわずか一握りではないでしょうか。
局所ばかりをみてしまって、全体を評価するのはとても難しいことです。
しかし最後まで読んでいただけると、「全体をザックリ評価できる」ようになると思います。
今回のテーマは、全体を評価するにあたって有益な
筋膜って何?
筋膜について簡単に言いますと、「筋線維を包む膜で、全身を包むボディースーツ」みたいなものだと考えるとわかりやすいかも知れません。
少し詳しく知りたい場合は、こちらをどうぞ
筋膜を使った評価方法
筋膜を使って評価をする、というイメージがなかなかつきにくい方もいらっしゃるかと思います。
実は全身はヨットの帆のように、前と後ろで
「筋膜によって、ひっぱり合っている。」といわれています。
体幹が直立位になるようにしっかり引っ張っていられれば、身体は真っ直ぐでいられます。
筋膜による前後の張力が破綻すると直立位に保持することが困難となり、「円背」になったり「反り腰」になっている可能性がありますね。
では筋膜という考え方をどう評価・治療に落とし込めば良いのでしょうか。
筋膜ラインをこれから6つ紹介します。左右に2つづつ合計12個のラインが存在。
筋膜も筋肉と同じ発想で、「伸びる(伸張)」と「縮む(短縮)」の2つのパターンしか存在しません。つまり12個が伸張している短縮しているかの2つのパターンで評価すれば良いわけです。
だいぶ全身を評価するにあたって、入り込みやすい印象を受けませんか?
そして脳は運動を「上腕二頭筋が収縮した!」などと個別的に捉えていると考えるたちが提唱したのが「筋肉再現説」です。
しかし私は、
筋膜を介した「肘を曲げる」という行為に「上腕二頭筋や上腕筋、腕橈骨筋が含まれる」とざっくり「運動」という単位で捉えています。これを「運動再現説」といわれています。
こちらの説の方が正しいのではないかと考えています。なのでこの筋膜の「モーターユニット」という考え方を臨床では用いています。
筋膜ラインの種類
前置きが長くなりましたが、早速筋膜ラインについて説明をしていきます。
Superficial Front Line(SFL)
まずは表層の「Superficial Front Line」からです。
胸鎖乳突筋→胸骨筋→腹直筋→大腿直筋→膝蓋靭帯→前脛骨筋、長趾/長母趾伸筋
胸鎖乳突筋にはじまって、前脛骨筋まで首元表層〜すねの前までのラインですね。
SFLは、次に説明するSuperficial Back Lineと共同して体を前後で支えています。
このラインの作用は、膝の完全伸展の保持と頭頸部から骨盤を上方向に引き上げる働きを主として担っています。
ほんとに?と思う方!腹筋をペアでした時に前脛骨筋を足部に向かって引っ張ったり、逆に緩めたりしてみてください。腹筋が明らかにしやすくなったり、しにくくなったりしますヨ!( ̄▽ ̄)
Superficial Back Line(SBL)
次は表層後面のSuperficial Back Lineです。
帽状腱膜→脊柱起立筋→仙結節靭帯→ハムストリングス→腓腹筋→アキレス腱→足底腱膜
頭部の帽状腱膜から始まり背中を通って、アキレス腱、足底腱膜まで繋がるラインです。
先ほど記載した通り、SFLと共同して体幹を後面から支える働きを担っています。
主な働きとして、単独では体幹を後面から地面の方へ引っ張ることで体幹の伸展を保持しています。
座位で頸部を屈曲させると膝が伸展しにくくなったりしますよね。このラインが頸部からハムストリングスを引っ張っているからじゃないでしょうか?
そして足部の機能において、足底腱膜とアキレス腱がつながっている事も重要です。
ウィンドラス機構といい足底が伸張されると、下腿三頭筋の収縮力がUPすると考えられています。これは歩行時の立脚後期におけるPush Off(けり出し運動)にToe Lockerが重要であることの裏付けにもなるかと思います。
Deep Front Line(DFL)
次に体の奥の方を走るDeep Front Lineです。
側頭筋→咬筋→(前)舌骨上下筋群(中)斜角筋(後)椎前筋→横隔膜→腸腰筋・腰方形筋→股関節内転筋→後脛骨筋、長母趾・長趾屈筋
側頭筋から始まり、体の内側(臓器も巻き込みながら)股関節内側、脛骨の深部の後脛骨筋、足趾屈筋群までつながります。
この筋膜は体の軸を形成していると考えられています。特に「腸腰筋」といった体の中心を支える筋肉が含まれているのが特徴です。
そしてもう一つ、「嚥下に関与している」可能性がある点です。側頭筋で咀嚼し、舌骨上下筋群で嚥下に重要な舌骨の動きに関与していることが考えられます。
これを解釈すると、足部、下肢のポジショニングや筋の硬さは嚥下機能を邪魔する可能性がある!
逆に足部や下肢のポジショニングや筋を適切なアライメント、張力に持っていくことで嚥下を補助する可能性もあると言えます!
実際に長内転筋を下に引っ張りながら唾液嚥下をしてみてください!明らかに抵抗感を感じて飲み込みにくくなりますよ!
Lateral Line(LL)
次は体の横を支えるLateral Lineです。
頭板状筋/胸鎖乳突筋→内外肋間筋→腹斜筋の外側部→大臀筋(上部線維/中臀筋/大腿筋膜張筋)→腸頸靭帯→前腓骨頭靭帯→長腓骨筋・短腓骨筋
頭板状筋/胸鎖乳突筋から始まり身体の横を通って、長短腓骨筋までの筋膜です。
この筋膜ラインは、側方の身体の軸、支えとして機能しています。
膝OAの方では、このラインの機能不全またはこのラインの張力に頼って立位保持をしてしまっていると考えられています。
ということは、ラテラルラインを収縮させる方向へ誘導、訓練を行えば…、またこのライン上のどこが働いてないのか…。という訓練、評価に使うことも可能です。
Spiral Line(SL)
次はSpiral Lineです。
頭・頸板状筋→大・小菱形筋→前鋸筋→外腹斜筋→腹腱膜、白線→内腹斜筋→大腿筋膜張筋、腸脛靭帯→長腓骨筋→大腿二頭筋→仙結節靭帯→仙腰筋膜、脊柱起立筋
体を捻るように頸部後面から下肢を通り、らせん上に体を包み、頸部に返ってくるラインです。
あらゆる動作場面において、体の安定性を保つために使用していると考えられています。
Functional Line(FL)
次はFunctional Lineです。
前機能線
大胸筋下縁→腹直筋鞘の外側縁→長内転筋
後機能線
広背筋→胸背筋膜→仙骨筋膜→大臀筋→外側広筋→膝蓋靭帯
この筋膜は、姿勢にはあまり関与していないといわれています。
動作場面において、1側上肢と反対側の下肢の力の伝達に優れていると考えられています。
歩行時の腕振りの重要性がこの筋膜で説明できる部分があります。
立脚後期で腕を大きく振ることで、Functional Lineが引き延ばされ、床から足が離れると同時に縮みます。これにより下肢と腕が大きく振り出せる原理です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。姿勢・動作分析において「全身を評価する」ためのツールとして用いていただけたらと思います。
身体図式を作っていく上で重要な役割を持つ「筋紡錘」が筋膜上に存在していることを考えると、今回の内容をしっかり意識していく必要があるかと思います!
エラーなくして、学習はありません。どんどん使っていってくださいね。
コメント