こんにちは、ぱらゴリです。
いきなりですが、「姿勢制御って感覚の重みづけを変化させて行っている」って知っていました?
例えば、暗闇の中を歩くときは視覚情報があまり使えないため、体性感覚や前庭感覚情報が優位になる場面となります。
また、不安定な平均台や狭い台の上では、前庭感覚情報が優位になる場面といわれています!
どういうことかなんとなくわかるかもしれませんが、これを具体的に説明していきたいと思います!
今回は、
解説していきたいと思います!
姿勢保持に必要な3つの感覚
まず姿勢保持に必要な3つの大事な感覚について説明していきます。
姿勢制御には知覚による制御が必要なんです。
その際に利用されている3つの感覚は、
- 視覚情報
- 体性感覚情報
- 前庭感覚情報
です。
私たちが姿勢を保持して動いていくためには、視覚・体性感覚・前庭感覚の3つを巧みに利用して姿勢制御を行なっているわけなんですね。
その中でも大事なのが、1つの感覚に過剰に依存するのではなく今の状況における場面や課題に応じて感覚情報に対する依存度(重みづけ)を変えることで、安定した立位バランスを保っているというわけです。
なぜ感覚情報が必要なのかについては、身体図式という考え方がとても大切になってきます。
立位において身体図式は
身体内部の状態あるいは環境との関係を常にモニターし、時々刻々と筋出力を調整していくために重要なもの(政二 慶:立位姿勢の制御機構.2011)
簡単にいうと、「自分の身体が今、どんな状態なのか」を言語化できないけど頭の中でスキーマとして作っているよ、ということです。
これを作り出すために必要な感覚が、視覚・体性感覚・前庭感覚なのでは?といわれています。
姿勢制御という便利な言葉
皆さん臨床でかなりよく使う「姿勢制御」という言葉。
- この方は姿勢制御ができていないから、座ることができない
- 姿勢制御がうまくできてないから、体幹の安定性が乏しい
- 皮質網様体脊髄路が損傷しているから姿勢制御ができないのではないか
などなど、色々な場面でよく聞かれる言葉です。(私見です笑)
ではこの姿勢制御という言葉、一体何をすることなんでしょう。
文字の通り姿勢を制御、コントロールするのは察しがつくかと思います。
では、
- どうやってコントロールするの?
- 姿勢って何が正しいの?
- 何を基準にコントロールするの?
- どういう場面でコントロールするの?
などなどあげだすとキリがないくらいに考えることって沢山ありませんか?
もしも、今までなんとなくで使っていたなら、色々使いやすい言葉こそ、意味を明確にする努力って必要なんじゃないかと思います!!(自戒を込めてます笑)
立位姿勢制御の考え方
立位姿勢を制御する際に、2つの側面から捉えていく考え方があります。(Shumway Cook A et al.2013)
それは
- 定位(身体と環境との関係を適切に保持すること)
- 平衡(安定性・バランスが保たれること)
この2つの考え方が姿勢制御においてはとても重要なんです。
姿勢を制御するということは、「固めてビルのように動かないようにすることではない!」です。(今日イチ大事なことです)
私たちは常に色々な環境にさらされて、色々な感覚が入力されます。
1秒前と全く同じ姿勢や環境にいるということは基本的にはあり得ません。
常に機能的に揺らぐことでバランスを保持していることを忘れないようにしましょう!
定位について
姿勢を定位する際に3つの姿勢を維持するために使われる戦略があります。
学生時代にもよく聞いたのではないでしょうか!
それは、
- 足関節戦略
- 股関節戦略
- ステッピング戦略
カッコつけたい時には、Ankle Strategy、Hip Strategy、Stepping Strategyというとなんか専門職っぽくてよくないですか?
注意:あまりいいイメージを持たれないのでやめましょう
足関節戦略は主に、足部を中心とした姿勢戦略で、股関節戦略は主に、股関節を中心とした姿勢戦略です。
足関節戦略は、主にFeedforwardの要素が強く、皮質網様体脊髄システムとの関連が強いと考えられています。
また、股関節戦略は、高齢者が多用する戦略で、感覚フィードバックの要素が大きく、前庭脊髄システムとの関連が強いと考えられています。
すると、この足関節戦略や股関節戦略をどうやって切り替えて使っているのでしょうか。
足関節戦略と股関節戦略の特徴
主に足関節戦略は安定した床面で働きやすく、
股関節戦略は、柔らかい床面、狭い支持基底面の際に働きやすいと考えられています。
つまり床面の状態によって切り替えて行なっているのが可能性の一つですね。
もう一つは、速度です。
動揺の速度に対する戦略の切り替えについてですが、
低速度はAnkle strategy、高速度はHip Strategyというわけではない。健常人は両方を交互に複雑に組み合わせて動揺に対応する。(Runge.1998)
とも言われており、動揺が大きいから、早いから股関節戦略としているわけではなく、通常は両方をうまく組み合わせながら行なっていることが考えられるわけですね。
ですから、見なければならないのは、
- 支持基底面はどうか(例えば足部が内反していて接地面積が少なかったら…?足部内在筋が使えていなくて支持面が作れてなかったら?など)
- 動揺の速度に関わらず、必要な戦略の選択ができているか
を必ず考えるようにしましょう。
また若年者と高齢者でも違いがあるようです。
若年者は、頭部の反応が遅く、体幹のしなりで衝撃を吸収し、
高齢者は、頭部、腰部、膝の順番に直線上に身体が動くようです。
つまり、高齢者は前庭感覚システムを優位に使ってコントロールしている可能性があり、その理由はもしかしたら視覚情報、体性感覚情報をうまく使えない状態になっていることにあるかもしれないと考えることができるのではないでしょうか。
では、なぜ視覚、体性感覚情報がうまく使えないと前庭感覚優位になるのでしょうか。
察しの良いみなさんならもう気づいているかもしれないですが、動くために必要な身体図式が作られるためには、視覚ー体性感覚ー前庭感覚が必要だとお話ししました。
この身体図式は、運動プログラムを生成する際にも使用されます。
この身体図式を作り出す上で、必要な感覚情報が場面によって変化するというのが今回の大きなテーマでもありました。
感覚の重みづけについて
健常者の立位での感覚の重みづけ(依存度)の割合はどうなっていると思いますか?
それは、
- 視覚ー10%
- 体性感覚ー70%
- 前庭感覚ー20%
だと考えられています。
例えば感覚障害や視野狭窄・視空間無視などがあればどうなりますか?
障害を受けていない前庭感覚を優位に使って姿勢制御を行おうとします。
つまり、環境に対してなんとか適応した姿勢状態を維持しようと頑張るんですね。
その結果、高齢者のように動揺が加わったときに頭部から動き出し、前庭感覚を使って定位と平衡を保とうと頑張るわけです。
ただし、この時に考えておいて欲しいのが、足関節戦略を使えているから良い、使えていないから悪いわけではないということです。
もしも立位保持を促した際に足関節戦略が使えない程の動揺の際に股関節戦略を使わずに、積極的にステッピング戦略を取る高齢者がいたとします。
これは、一つの観点からは安定性限界という支持基底面内で重心をコントロールする能力が低いと考えることもできるかもしれません。
しかしながら、ある場面においては、足関節戦略で制御できない際に、いっそのこと支持基底面の範囲を変化させてしまった方が良い場合もあります。例えば、後ろからぶつかられた時とかなんかまさにそうではないでしょうか。一生懸命今の支持基底面内で頑張って保持するより、支持基底面の範囲を変化させ、次の動きに対応できるようにしたほうがいくらか機能的な場面かと思います。
ですので、「ステッピング戦略を取るのはバランスが悪いからだ」「感覚情報がうまく使えていないからだ」と安直に考えるのではなく、文脈によってどう対処するのがベターなのかを考えるようにしましょう!!
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