【脳機能】皮質脊髄路とは?

脳機能

こんにちは、ぱらゴリです。

私は田舎の総合病院で脳卒中リハビリテーションを中心に行なっています。

「皮質脊髄路」って皆さん説明できますか?

「錐体路」「一次運動野」などいろんな言葉が単発で出てくるのではないでしょうか。しかし実際にどういう経路で、どんな神経が含まれ、どんな働きをしているのか!説明できますか?

学校で習ったけど臨床に出たら、忘れてしまったり、使わないからいいや、といったようになってませんか?

そこで今回のテーマは

皮質脊髄路はリハビリに必須の知識!

です。

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皮質脊髄路について

皮質脊髄路とは何か、それは「随意運動」を行うために筋肉へ指令を出す経路のことです。

こちらもご覧ください。

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昨今自分の周りだけかもしれませんが脳卒中と整形で大きくセラピストが分かれていませんか? 「整形だから神経システムは知らなくてもいいよね」という声を結構聞きます。 しかし思うんです。 筋肉を動かしているのは神経です。整形のスペシャリストを目指すなら当然!姿勢制御のシステムなんかは絶対に知っておいた方が得です!

教科書にはこう書いてあるんですよね。

皮質脊髄路の教科書をもっと要約してお伝えさせていただきます。

キーワードは「どこから始まるか」「どこを通るか」「3つの神経経路」です。

「何をしているか」=「随意運動の指令を出しています」この意味を理解できるようにしましょう。

皮質脊髄路はどこから始まるか?

皮質脊髄路は一次運動野から始まります。名前の通りです、「一」が入ってますよね。(「野」は解剖学的に盛り上がった部分を指します。)なので運動の「一番」始まりは「一次運動野」です!(こじつけ笑

その中でBetz細胞だー何だーかんだーと言いますが、臨床的には必要のない知識です。

随意運動一次運動野と覚えましょう。

あと実は補足運動野や運動前野、「一次体性感覚野」なども関与していますが、それはのちほど。

皮質脊髄路はどこを通るか

一次運動野方線冠内包後脚→中脳大脳脚→橋腹側→延髄錐体で交叉→脊髄側索→脊髄前角細胞(α運動神経細胞)

の順に「皮質」→「脊髄」へつながっていきます。だから皮質脊髄路なんですね。

皮質脊髄路

神経経路は概ね「スタート地点」(経由地点)「到着地点」で名前ができています!

実際に画像で見てみましょう!

皮質脊髄路の走行

図で赤い部分を走行しています。脳画像でも見れるように覚えておきましょう!

皮質脊髄路は3つの神経経路の総称

先ほど出てきました、1次体性感覚野、外側皮質脊髄路、前皮質脊髄路の3つをまとめて

「皮質脊髄路」と言います。

ただ皮質脊髄路に関与する経路はという問いになると・・・

このように高次運動野も重要な役割を持ちますが、それは今回はおいておきます。

外側皮質脊髄路は対側の四肢末梢、前皮質脊髄路は同側の体幹の随意運動を支配しています。

では体性感覚野は何をしているのでしょうか?

それは、随意運動で出た感覚を処理する働きです。

意味がわからないですよね。

では一つ例です。

ペンで文字を書くときって、一文字一文字ごとに感覚が発生します。では毎回それを大脳にまで入力しているのでしょうか。そんなことしてたら脳がパンクしちゃいますよね。

そこで皮質脊髄路はこれまでの経験をもとに、1文字目で発生する感覚以降は、取捨選択し大脳へ届けないように処理をしているんです。

こうすることで脳がパンクせず、スムーズにスラスラと文字を描き続けることができる

そして皮質脊髄路はこの感覚を処理する経路が大半を占めている!と言われています。

これを臨床応用すると、皮質脊髄路を賦活したい!場合は新しい感覚を入力しまくることが皮質脊髄路を使うことになるため必要な訓練です。

しかし今ある皮質脊髄路、例えば道具を使うなどに関しては出来るだけ、滑らかに運動するにあたっていらない感覚をできるだけ処理ができるようにしてあげる必要がありますよね。その場合はできるだけ、口頭指示や道具は慣れたものを使ったほうが良いかもしれないですよね。

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運動麻痺に対するリハビリテーション

ここが一番気になる部分かと思いますが、

運動麻痺に対するリハビリテーションの考え方についてです。

  1. 内側制御系といった姿勢制御の改善
  2. 外側制御系といった随意運動の改善

この2つが大切です。

姿勢制御の改善

外側皮質脊髄路は、延髄の錐体で交叉し対側の上下肢の遠位筋を主に制御します。

姿勢制御の経路と呼ばれる、内側制御系は主に同側(一部両側性)を支配するといわれています。

そのため、非麻痺側と呼ばれる側の体幹、四肢近位部は姿勢制御になんらかの障害を持っている場合が多いんです。

つまり、左麻痺であれば右側の体幹を中心とした姿勢制御ができていないということです。

左上肢を動かす際には、右の体幹はしっかりと支持していなければなりません。

そうしなければ、左上肢を上げた重さで身体が崩れてしまうためですね。

つまり、非麻痺側の安定性がなければ、麻痺側の上下肢の動きは制限を受けてしまうということです。

よくいらっしゃいますが、非麻痺側の上肢で柵をつかんで、一生懸命上肢を挙上される姿を見たことはないでしょうか?

あれは、おそらく残存している外側皮質脊髄路を使って、非麻痺側の遠位筋を姿勢制御に参加させている姿だと予測できます。

すると半球間抑制がかかり、より損傷側の一次運動野は抑制がかかってしまった結果、随意運動が行えなくなってしまうというループにハマってしまいます。

つまり非麻痺側の体幹、四肢近位がしっかりと支持(安定)として働いているか、をチェックしなければなりませんね。

随意運動の改善

そして随意運動の障害なのですから、随意運動の改善を図っていかなければなりません。

末梢の運動が中枢部の安定性につながる場合も、その逆もまた然り。

そして末梢の運動がうまく行えない、という状態は外側皮質脊髄路の働きが制限または損失している可能性があります。

制限される場合は、先ほど述べた非麻痺側の上下肢を過剰に使用している状態による過度な半球間抑制ですね。

脳血管障害後には、皮質脊髄路が全部または何%かの損傷が考えられます。

しかしながら、皮質脊髄路は85%が延髄交叉し、残り15%は通常興奮しないように「マスキング」されていると考えられています。

脳卒中後の回復には、アンマスキングといって、普段使用されていなかった神経線維が再び使用できるようになる可能性が考えられています。

【脳機能】脳卒中リハビリテーションとは?新人セラピスト必見!
私の本業は理学療法士として急性期〜慢性期までの全ての期間で脳卒中リハビリテーションをしております。 そもそも脳卒中リハビリテーションって何をすることなのか?という疑問を1年目から持ち続けていました。 「何したらいいのか?」「頭の中で何が起きているのか?」「なぜ歩けないのか?」などなど挙げればキリがないほど疑問は今でも毎日浮かんできます。そこで今回は脳卒中リハビリテーションについて簡単にざっくり画像で説明していきます。

つまり、積極的に麻痺側を使用することが必要なんですね。

上肢に関しては、電気刺激やロボティクスを用いて、早期から積極的に代償をできるだけ抑制しつつ随意運動を行なっていくことが求められています。

特に下肢に関しては「荷重刺激」が皮質脊髄路の興奮性を増大させるという報告もあり、積極的な荷重を伴う歩行訓練等を進めていきたいですね。

またイメージングも有効であると報告されており、リアルなイメージができることで実際に運動した時と同じ領域の脳活動が生じるといわれています。そのため重度麻痺であってもVRやミラー療法などを用いて積極的に脳を働かせるような働きかけが重要です。

まとめ

皮質脊髄路において経路を知ることはもちろん、働きについてしっかりと覚えておく必要があります。

近位が働くことで遠位が働きやすくなる場合もあれば、遠位が働いた結果、近位部が安定するという可能性もしっかりと考慮しなければなりません。

リハビリ職は「運動を変える」ことが仕事の一つでもあるため、運動のシステムについては必ず知っておくべきであると思います。

整形、脳卒中関係なくしっかりと覚えておくようにしましょう。

最後までありがとうございました。
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ぱられるゴリラ

コメント

  1. 臨床に迷うとこのサイトを見させて頂いています。いつもありがとうございます。

    麻痺側下肢に荷重刺激をする事で、皮質脊髄路の促通に繋がるとありますが、その仕組みについて教えて頂きたいです。また、文献などもあれば教えて頂きたいです。よろしくお願い致します。

  2. いつも閲覧いただきありがとうございます!

    ご質問に対しての回答ですが、
    上林清考先生の報告の「歩行時の体性感覚の影響」で調べていただけると出てくるかと思います。

    前脛骨筋は荷重をかけた歩行の条件で皮質脊髄路の興奮性を示す運動誘発電位の上昇が認められたようです。
    非荷重時の歩行運動では、優位な上昇を認めないとされています。

    立位、歩行時の荷重条件において前脛骨筋は長潜時反射の要素が強いとされていることから、前脛骨筋の筋活動時に運動誘発電位が上昇するということは、荷重下での歩行運動を行うことで皮質脊髄路の興奮性を増大させることができる可能性があります。

    もちろん随意運動が可能なケースにおいては、随意運動を行う(電気や振動刺激等の物療機器を併用して)ことがこのましいかと思います。
    ただ急性期ー回復期初期に1stステージの段階で皮質脊髄路の興奮性が増大した期間に積極的に皮質脊髄路を興奮させることが大切だと考えています。

    その際に限られた時間の中で、廃用症候群を予防しつつ、皮質脊髄路の興奮性を増大させるには荷重条件での歩行、電気刺激を併用できるなら行うことが好ましいと考えています。

    ご参考になれば幸いです。