こんにちは、ぱらゴリです。
私は理学療法士として急性期〜慢性期までの全ての期間で
脳卒中リハビリテーションをしております。
大脳と基底核はループ構造を持っています。意味合いについてみなさんどこまで知っていますか?
自身の Twitterでも簡単に説明していますが、アクセルとブレーキとして重要な役割をになっていそうです。
そこで今回は
です。
大脳基底核の種類
大脳基底核の種類をみなさん覚えていますか?
- 線条体
- 淡蒼球
- 視床下核
- 黒質
の4つの神経核から構成されます。
大脳と基底核の連絡
大脳基底核は
- 入力核(線条体)
- 出力核
- 内在核
にニューロン連絡の観点から分類されます。
ではどの様な入出力経路を持っているのでしょうか。
ー大脳基底核の記事と内部リンクを貼るー
大脳基底核の入出力経路
2つの入出力経路をもつと考えられており、
- 大脳皮質ー基底核ループ
- 基底核ー脳幹系
の入力ー出力経路が存在していると考えられています。
1の大脳皮質ー基底核ループは、
・運動ループ
・眼球運動ループ
・前頭前野ループ
・辺縁系ループ
の4つループを持っています
2の基底核ー脳幹系は、
・歩行運動系
・筋緊張抑制系
・筋緊張促通系
の3つ経路を持っていると考えられています。
大脳皮質ー基底核ループ
大脳皮質から大脳基底核に送られた情報を大脳基底核の内部で処理をします。
そして、大脳基底核は出力核から視床に処理した情報を伝え、視床はその後大脳皮質へ投射しループ構造を形成します。
ではその処理過程はどのようなプロセスを辿っているのでしょうか。
運動ループ:体性感覚野→VL、VA→一次運動野、運動前野、補足運動野
眼球運動ループ:頭頂葉後部線維、前頭眼野→VA、MD→前頭眼野、補足眼野
認知ループ:頭頂葉後部線維、側頭連合野→MD、VA→前頭前野、運動前野
辺縁系ループ:側頭連合野、海馬体→MD、VA→帯状回前部、前頭葉眼窩皮質
大脳→基底核→視床→大脳という過程で処理されるわけです。
運動ループ
顔面・四肢および体幹の筋群を制御します。
一部は脳幹に下降し、脳幹内の運動パターンを介し運動の調整に関与します。
橋脚被蓋野(PPN)への投射は筋緊張や歩行運動の調整に関与すると考えられています。
眼球運動ループ
衝動性眼球運動(サッケード)を制御するループで、前頭眼野と頭頂葉後部線維から始まります。前頭眼野の情報は中脳上丘に投射し衝動性共同眼球運動の働きをしています。
また、頭頂葉後部線維は眼球運動の速度と方向などの視覚情報を処理する働きをしており、
認知ループ
認知と行動の実行に関与するループで、
前頭前野は主として思考・推論や目標に対する行動などに関与します。
しかし認知ループはそれだけではなく、動作を組み立てる役割のある運動前野への連絡も持っているのです。
辺縁系ループ
行動の動機付けや情動に関わり、
視床のMD核は辺縁系回路の中でも特に重要な役割を持ちます。
大脳基底核を介する辺縁系ループは、多くの神経行動学的疾患や、精神疾患の発症にかかわります。
この経路の経由する場所として、腹側被蓋野があり、この部位の障害により統合失調症やその他の精神疾患、薬物中毒などが発症することも知られているそうです。
大脳皮質と基底核の関係性
- ハイパー直接路
- 直接路
- 間接路
が主な働きになります。
ハイパー直接路
ハイパー直接路は、大脳皮質が興奮し、直接視床下核へ興奮性の入力をします。
結果として、淡蒼球内節・黒質網様部が興奮し、大脳基底核の持つブレーキ機能を高める働きがあります。
つまり「指示があるまではじめは何もするなよ!」と大脳皮質や脳幹の活動を抑制するわけです。
直接路
直接路は、大脳皮質が興奮し、線条体が持つ抑制性の働きが強くなります。
その結果、大脳基底核の興奮性の役割を持つ淡蒼球内節・黒質網様部を抑制します。
それは大脳基底核が持つブレーキとしての機能を減弱させる働きをし、大脳基底核による抑制が弱まります。
つまり、大脳へ「その運動やってもいいぞ!」と許可を出す形になります。
間接路
間接路は、大脳基底核が興奮し、線条体が持つ抑制性の働きが強くなります。
しかし、間接路が働いた際には淡蒼球外節へ抑制性の働きをかけます。
すると、視床下核のもつ興奮性の働きが強くなり、抑制性の働きを持つ淡蒼球内節・黒質網様部を興奮させることでブレーキとしての機能を強めます。
つまり、大脳へ「今は運動してはいけないよ!」とブレーキをかける形になります。
本来の基底核の役割はここになるわけですよね!
大脳皮質ー基底核と運動について
大脳皮質ー基底核ループと運動プログラム・姿勢制御は密接な関わりを持ちます。
大脳皮質の運動野は被殻や小脳内側部の間に「運動ループ」を、
前頭前野は尾状核や小脳外側部との間に「認知ループ」を構成しています。
これらのループの存在により、状況に即した運動のプログラムが生成されることになります。
運動を行う際には、運動ループ・認知ループを介してまず
「姿勢と巧緻運動に関する運動プログラムの生成」が行われます。
「姿勢制御に関するプログラム」は皮質ー網様体投射と網様体脊髄路を介し姿勢制御を行います。
「巧緻運動に関するプログラム」は外側皮質脊髄路を介して随意運動を行います。
3つのプロセス
その際には3つのプロセスが必要になると考えられます。
- 運動プログラムの生成
- 姿勢制御プログラムの実行
- 随意運動の実行
です。
まず、運動プログラムを生成している段階ではハイパー間接路により大脳皮質・脳幹にブレーキをかけておきます。
姿勢制御の実行
そして作られたプログラムのうち、姿勢制御プログラムをまず実行させますが、
その際には直接路により脱抑制が行われ、皮質ー網様体投射と網様体脊髄路系が駆動。
巧緻動作に先行した姿勢制御が可能となります。姿勢制御は、体幹・上下肢のアライメントや筋緊張が設定されます。つまり、基底核の脱抑制は大脳皮質からの興奮性を高め、姿勢が制御されるというわけです。
巧緻運動プログラムの実行
その後一時運動野への基底核からの脱抑制により、巧緻運動プログラム(随意運動プログラム)が外側皮質脊髄路を介して脊髄へと伝達、巧緻運動が実行されることになります。
そしてプログラムが持つ目的を達成した後、間接路が最後に運動を終了させることになります。
ハイパー直接路と間接路は、直接路が起こした運動の開始と終了を明確にしてくれる働きがあり、時間的な順序を持って制御しているといえます。
ちょっとマニアック
しかし、どの運動も行なって良いわけではないですよね。
運動には、「必要な運動」と「不必要な運動」が存在しており、
ハイパー直接路・間接路は淡蒼球内節・黒質網様部の広い範囲を興奮させ出力先である視床を広範囲に渡って抑制します。
直接路は被殻や淡蒼球内節・黒質網様部のうち必要な運動に関連している領域を抑制し、結果として視床の必要な範囲を脱抑制することで必要な運動のみを引き起こしていることになります。
その際前もって間接路によって視床は抑制されているため、必要でない部分は抑制されており「不必要な運動」は抑制させることとなります。
その際、基底核は「時間的制御」と「空間的制御」によって協調的な活動を調整しているといえます。
運動で考えてみると、一時運動野や補足運動野、運動前野に下肢・上肢・口腔、顔面を再現する部位が存在しますよね。
同様に大脳基底核にも運動プログラムに対応するため、動かす部位が細分化されている可能性があると思います。
つまり被殻や淡蒼球内外節、視床の運動核には身体部位局在がある可能性があるというわけです。
被殻・淡蒼球においても前から下肢・上肢・顔面と順番に身体部位局在が配列されています。
おそらく、神経は「最短ルートを通る」様に存在しているため大脳皮質と同じ配列になっているのかもしれないですね。
まとめ
大脳皮質と基底核はとても重要な関係性があります。
脳出血で一番多く見られる被殻出血に対して対応するには、必要かと思うので何度も読み返して理解していただきたい内容になっています!
コメント
必要な運動と不必要な運動のところですが、移乗時に頭にベットの上の物を取ろうと浮かぶと、それを取ろうとするといった不必要な運動が起きることもありますか?
起こる可能性もありますが、
基底核系の問題だけではない可能性があります。
視床出血で外側部中心(VL、VPL、VPM、LP)の出血の方で、
運動学習や姿勢制御に関して考えていった場合に
大脳基底核ループの障害は運動ループのみでしょうか。
また運動学習のためにこのループに着目してアプローチしていった方がいい!
というものがあれば、お聞きしたいです。
小脳ループも同時に傷害されている可能性を考慮する必要があります。
すなわち、運動プログラムを生成する段階、Feedback共に難しくなる可能性があり、運動学習、動作の面ともに難しくなる可能性があります。
動作の反復とどうしても随意的な要素を用いて、ADLは行う必要があるかもしれません。
歩行に関しては、テント下レベルを用いた歩行訓練を積極的に行う必要もあります。
この部位がやられたら、こんなアプローチというものはないため、お答えしにくいところです。
ご了承ください。
参考文献を読んでいたのですが理解がとても追いつかず苦労していました。ですがこのサイトを見つけて基底核ループや脱抑制の説明がようやく理解できました。伝わりやすいよう工夫されており助かりました。